「表紙」2011年12月08日[No.1393]号
中学で部活動をはじめてから現在までの40年間ソフトテニス一筋。4人の子どもを育てながら、県大会優勝、国体選手にも選ばれるなど、輝かしい足跡をたどってきた普天間富士子さん。地元小中学校の監督などを経て、現在は小学生の県選抜チームを指導、沖縄県ソフトテニス連盟の事務局次長兼普及部長として、競技の普及にも力を尽くしている。
感謝に始まり感謝で終わる
普天間さんがテニスをはじめた40年前、まだソフトテニスという言葉はなく、「軟式庭球」と呼ばれていた。高校、大学と部活動に打ち込み、結婚してからは、4人の子どもに恵まれ、家事や育児に追われる毎日を送っていた。専業主婦としての日々のなかでも、テニスへの情熱を失うことはなかったという。
子どもが手を離れるのと同時期に現役復帰を果たし、35歳を過ぎた頃には指導者の道へ。監督として中城中学校のソフトテニス部を指導、当時部員も少なく、技術的にも未熟だったチームをわずか数年で県大会でもつねに上位に食い込む強豪校へと育て上げた。
現在は沖縄県ソフトテニス連盟事務局次長と普及部長を兼任。連盟の支援を受けて県選抜選手のレベル向上に尽力している。
「沖縄のソフトテニスのレベルは全国的に見ればまだまだ。もっと多くの指導者の協力を仰ぎ、多くの子どもたちがテニスを体験できる環境を作るためには、個人でコーチをするだけでは足りないと思ったんです」と、一部の学校や地域だけでなく、広い視野で沖縄ソフトテニス界の未来を見つめている。
普及活動や広報活動なども重要な役目だが、やはりわたしの役割としてもっとも大切なのは自ら現場に出て指導を行うことだ。小学生男女県選抜チームの総合監督として、選手にも積極的に声をかける。
選抜チームの選手は男女合わせて約30人。普天間さんはそのすべての子たちの名前と特徴を頭に叩きこんでいる。
強化練習には参加できないが、県外での大会で合流する石垣島在住の選手たちもしっかりと記憶していて、ひとりひとりの名前を呼びながら、的確なアドバイスを与える。
「技術的なことはもちろんですが、精神的な強さをとくに重視しています。目標を高く持ち、それに向かって自信と冷静さを持って取り組めるガージューな選手を育てたいですね」と語る普天間さんの指導には、「感謝」の二文字が欠かせない。
「テニスができることに、五体満足に産み育ててくれている両親に、支えてくれる仲間たちに、互いに向上し合えるライバルに、頑張ってこられた自分自身に―すべてに感謝する気持ちがなによりも大事です。感謝にはじまり感謝に終わる。選手たちひとりひとりに伝えたいことです」
沖縄を代表する選抜チームは11月末に大分県で開催された第16回九州小学生選手権大会に出場、男女ともにベスト16と健闘した。12月10日、11日には西日本大会も控え、普天間さんの指導にもますます力が入る。
「九州大会では、強化合宿や練習の成果を感じることができましたが、一方で、ここぞというところで弱さが出てしまうなど、課題も見えてきました。どんな状況でも自分の一〇〇%のテニスで挑めるよう、さらに精神力を鍛えていきたいと思います」
普天間さんの夢は、ただ単純に目の前の勝利を追うだけでなく、沖縄のソフトテニスを全国レベルにまで押し上げること。また、ソフトテニス愛好者をさらにふやすこと、その目標に向かってひた走る監督もまた、「ガージュー」といえそうだ。
普天間伊織/写真・照屋俊
全国で決勝リーグに進みたい
沖縄県ソフトテニス連盟
県大会でベスト5に入った選手たちで形成された名実ともに県内トップレベルの選手たち。北部から南部、離島まで様々な地域から集まり、強化合宿などで絆を深めている。