「表紙」2013年07月04日[No.1474]号
円になって縁を育む
数人でテーブルを囲み、ボードやこま、カードを並べて行うボードゲーム。「人生ゲーム」が有名だ。近年コンピューターでボードやこまなどを使用せずにできるソフトもあるが、ボードゲームサークル「響(ひびき)」ではあえてアナログ式にこだわっている。「相手と面と向かって話をしながら駆け引きをすることや、情報を共有することで関係も深まります」と主宰者の名嘉秀和さん(30)は話す。年齢や職種も異なるメンバーで8人、和気あいあいと楽しんでいる。
笑顔集まる空間
もともとボードゲームが好きだった名嘉さんは、仕事で沖縄を離れ兵庫県へ移り住むことになった。その際、知り合いの紹介で参加したボードゲームサークルが楽しくて、沖縄でも作りたいと考えた。少しずつ集めたボードゲームは約180個。Uターン後に参加者を呼びかけ、2009年に「響」を結成した。
メンバーは登録制ではないため、常連は20人程。これまでの参加者は約200人。名嘉さんがインターネットのサイトから情報を発信する。
月に1回オープンな会(初心者でも参加できる)を開き、親しい仲間同士では月3〜4回行っている。多くは北谷町にあるクリエイターズレジデンスで土日祝日の13時〜19時まで楽しむ。
メンバーの中には学生もいる。玉城大志さん(24)は大学生でボードゲーム歴は半年。「初めはルールを覚えるのに必死で勝ち負けどころじゃありませんでした。みんなが説明しながら進行してくれて、分からないことも聞きながらやっていました」と振り返る。
物を大事にして遊ぶ
撮影時には大きなスーツケースや手さげバッグを持って集まったメンバー。
一番数多くゲームを集めている仲宗根茂さん(42)は、ボードゲーム歴20年のベテランだ。約350個のボードゲームをそろえている。普段メンバーはサークルに参加する際、数種類のゲームを持ち込み、選んで遊ぶ。お互いにどれを選ぶかを考えるのも楽しみの一つだ。
ドイツ製、日本製ともにゲームの値段は、約2千円〜5千円。雑貨屋で販売されている場合もあるが、メンバーは主にネットで購入しているという。
それぞれが持ち込んだボードゲームを見せてもらった。どれも傷はおろか、カードはゆがみもなく使っている形跡が見られない。買った時期を忘れている仲宗根さんのゲームもきれいなままだ。
「好きなゲームですからね。みんな大事に使うんですよ。食事しながら遊んだりしないですし。それにボードゲームは、プラスチック製ではなく、木などで繊細に作られているものが多いんです。長持ちするし、デザイン性も優れているので、ボードゲームを知らない人でもインテリアに使うこともあるそうですよ」と名嘉さんは説明する。
ストーリーに夢中
ボードゲームはそれぞれに設定がありストーリーを楽しめる。「エルフェンランド」というゲームでは、「エルフ」というファンタジーに出てくる妖精をモチーフにしている。エルフが大人になるための試練として各地を旅するストーリーだ。一番に全て回り終えたら勝ち。
「ドミニオン」は、ヨーロッパの一人の領主の物語だ。カードを使い、領土を増やしていく。お金を蓄えて領土を得る必要があるため、駆け引きも重要だ。
仲宗根さんは「相手の顔やしぐさを見ながら、『この人は何を考えているんだろう』と次の手を予測するのが楽しいですね。やめられないし、これからも上達していきたい」と意気込みを話す。
取材終了後、「あのゲームやろうぜ」と少年のように盛り上がるメンバー。ボードを広げ、カードを配るとワクワクした表情で会話が始まる。かけがえのない大切な時間を過ごしている。
普天間光/写真・伊波一志
2009年に結成。名嘉さんが仕事で兵庫県に行った際に参加したボードゲームサークルを、Uターン後県内でも作りたいと考えたことがきっかけだ。参加者は約200人で、その中で常連のメンバーは約20人。月1で活動(不定期)。
場所は主に北谷町北谷にあるクリエイターズレジデンス。事前に名嘉さんがインターネットのサイトで呼びかけて行う。