「表紙」2013年08月22日[No.1481]号
一曲に魂込めて
キレのある素早い手の動きと、2ステップで左右に移動する足。ジャズダンスや空手、カンフーなどの要素を織り交ぜた独自の「沖縄パラパラ」でムーブメントを起こそうと情熱を注ぐ「神風麗舞(かみかぜれいぶ)」の「★泰斗(たいと)」(31)と「★りゅうちん」(23)。沖縄をパラパラの聖地にしたいと、毎月1回、那覇市内のクラブでイベントをサポート。パラパラを踊るために体を鍛え、イベント前には一日4〜5時間練習に励む。「どんな環境でも真剣に踊ります」と一曲一曲に魂を込める。
沖縄をパラパラの聖地に
「パラパラ」は、1980年代後半に日本で誕生したダンス。バブル時代、ユーロビートなどのダンスミュージックに合わせ、ディスコのお立ち台で女性たちが踊っていた姿が有名だ。曲のジャンルに合わせて「トラパラ」や「テクパラ」などに分かれ、地域ごとに振りが異なるという。
泰斗=WEBデザイナー=は20歳のころ、1歳年上の姉の影響でパラパラを始めた。その魅力にはまり、2005年、当時の相方・尚輝と神風麗舞を結成した。CDや雑誌などの付録のパラパラ教則DVDをお手本に、家で練習。夜はクラブで踊った。動画投稿サイトにアップしたオリジナル振り付けのトラパラがきっかけで、東京のレコード会社が製作する市販DVDに出演。少しずつその名が知られるようになったが、08年に尚輝が脱退してしまった。
りゅうちん=会社員=は、17歳のころ付き合っていた彼女がパラパラを踊っていた。「当時、興味はありませんでしたが、彼女と別れた後、自然にパラパラが好きになり、1年ほど家でDVDを見ながら1000曲覚えました」と話す。パラパラのサークルに入ったが、メンバーの集まりが悪く、自然消滅した。
見る人魅了する踊りを
そんな中、パラパラのギャルサークルの間で、「りゅうちんって、めっちゃうまいよ〜」と話題になっていた。一人で黙々と踊る姿を見た泰斗。「りゅうちんの一生懸命なパラパラとその熱意に感銘を受け、こいつと二人で神風麗舞をやっていきたいと思いました」
「パラパラを知らない人も魅了するパラパラダンサーを目指そう」と二人で誓い、08年、テクパラチーム・神風麗舞として再スタートした。昼はそれぞれ仕事に励み、夜練習。サンプルDVDを共有し、普段は個人で踊る。イベントなど本番の1週間前から1日4〜5時間踊るという。カッコよく踊るために、筋トレも欠かさない。
現在はオリジナル教則DVDの製作や振り付け講習会の開催、結婚式の余興も行う。那覇市牧志のクラブ「Fantasy Space Okinawa」で月1回開かれる「パラ際都フィーバー」ではダンサーも務める。「沖縄をパラパラの聖地にしたい」と、多彩な活動に取り組む。
混ざり合う与党と野党
また、WEBデザイナーの泰斗は、自作動画のクオリティーを上げるため必死にパソコンの勉強をした。「今の仕事に就けたのもパラパラが原点。一つのことを長く続けていれば芽が出ると思いましたし、パラパラで恥をかいても、そんな人生が楽しいと思えます。パラパラを愛しています」と熱く語る。踊りすぎで肩甲骨を痛めたほどで、「病院で『動きすぎ』と注意されました」と笑う。
「テクパラにも『与党』と『野党』があるんですよ」と説明するりゅうちん。教則DVDの振り付けに忠実に踊るりゅうちんは「与党」。基本を崩す泰斗は「野党」。二人の個性が混ざり合い、一本一本の指先にまで神経を注いだ神風麗舞の迫力ある踊りが生まれる。
りゅうちんの抱負は、「見る人を魅了できるような踊りをし、パラパラを広げていくこと」。一方、「40歳まで踊る」と公言する泰斗。「最後はパラパラの万博を沖縄でやりたいんです」と瞳を輝かせる。沖縄がパラパラの聖地になる日を夢見て、自分たちの踊りを追求する二人。10年後が楽しみだ。
豊浜由紀子/写真・桜井哲也
指先にまで神経を注いで踊る=那覇市天久の琉球新報社
「★泰斗」と「★りゅうちん」のパラパラチーム。那覇市牧志の沖映通りにある「Fantasy Space Okinawa」(http://locoplace.jp/t000273660)で毎月1回開かれる県内唯一のパラパライベント「パラ際都フィーバー」でダンサーとして盛り上げている。沖縄でパラパラ人口を増やそうと、情熱を注ぐ。公式ホームページは、http://kamikazerave.com/