沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1582]

  • (金)

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「表紙」2015年8月13日[No.1582]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 20

スムージー専門店 はぃびぃ スムージースタンド
玉城 明美さん 玉城 万美さん

地域に根ざす店を目指して

 南城市佐敷兼久、サトウキビ畑が見え隠れするのどかな風景の中に建つ一軒家「はぃびぃ スムージースタンド」。2013年4月、玉城万美さん(24)が開いたスムージー専門店だ。冷たくした生の野菜や果物をミキサーにかけ、ジュースにして味わうスムージー。青果類に含まれる酵素をそのまま摂取できるため、体によい飲み物として人気が高い。「皆が健康で和気あいあいと集い、生きている実感を味わえるお店が目標です」と話す万美さん。店を開いたきっかけには、健康への意識が高かった母・玉城明美さんの影響があるという。



沖縄時間が流れる場所

 玉城万美さんが営むスムージー専門店の名は「はぃびぃ スムージースタンド」。「はぃびぃ」という印象的な響きは、ハイビスカスから取ったもの。「根が強く、伸び伸びと広がっていく花の姿をイメージしました」と万美さんは店名の由来を語る。

 「最初は自分の考えでスムージーを作っていたので、お客さんの口に合う味を作れませんでした」と、万美さんはオープン当時を振り返る。「地域の人々と交わり、話をすることで、その人に合うスムージーを作れるようになったんです」

 地域の人々が「これを試してみて」とスムージーの材料を持ってくることも多く、桑の葉など昔から伝わる薬草を紹介されることもある。顧客の8割は地元の人々。店がユンタクの場になることもしばしばで、今ではすっかり、名前の通り地域に根ざした店に成長した。



健康への思い受け継ぐ

 万美さんがスムージーの専門店をオープンした背景には、母・明美さん(57)の影響がある。

 南城市佐敷手登根で生まれ育った明美さんは、19歳で夫の信正さん(66)と結婚。4人の子どもを育てながら、京都のかまぼこ屋で修行した夫と「佐敷かまぼこ 玉城屋(たまきや)」を立ち上げ、後に総菜店、コンビニエンスストアを経営。睡眠時間2〜3時間という過酷な日々が続いたが、「『子どもたちの土台になろう』と夫と約束して頑張ったんです」と話す。

 栄養も睡眠も不足しがちな生活だったが、そのことが逆に明美さんに健康のありがたさを意識させた。子どもたちの健康には人一倍気を遣い、どんなに忙しい時でも必ず3食を作って食べさせ、学校に行かせるように心がけていたという。

 明美さんの子どもたちへの口癖は「素直が一番」と「健康でいなさい」。母が苦労する姿を目の前で見てきた末っ子の万美さんは、母の言葉を素直に聞く子に育ち、いつの間にか自分自身も健康を第一に考えるようになった。

 21歳の時、母の知人が開いた講習会に参加し、ローフードマイスターの資格を取得。ローフードとは、過熱することで食材から失われる酵素を体内に取り入れるため、生のものを摂取するという食事法。「健康は、今後の沖縄に絶対に必要。資格を持っているだけではもったいない」との思いから、万美さんはローフードの知識を生かせるスムージーの店を開くことを決意し、わずか3カ月の準備期間でオープンにこぎつけた。

「皆で楽しく」が目標

 開店後しばらくは家族がサポートしていたが、現在は、平日に万美さんが一人でキッチンに立ち、週末に明美さんが手伝う営業スタイル。

 「私はのんびりした性格で、母はせっかち。だからこそバランスがとれてうまく回っているのかな」と万美さんは笑う。

 性格は違う2人だが、母の健康への思い、地域への思いは娘にも受け継がれている。

 「私の座右の銘は『生きて働くコミュニティー』。一人暮らしのおじいちゃん、おばあちゃんにも来てもらって、一緒にユンタクして、皆が楽しく生きている実感が得られる場所を作るのが目標」という万美さんの言葉に、明美さんが「店には沖縄のゆったりした時間が流れています。ユンタクしながら、励ましあったり、悩みを分かち合ったりしてほしい。昔の沖縄がそうだったように」と続ける。

 明美さんは、今年の4月から知念小学校で特別支援学級のヘルパーを始めた。それぞれの道を歩み出した母と娘だが、地域を思う熱い気持ちは2人の心に変わらず流れ続けている。

(日平勝也)



プロフィール

たましろ・あけみ
1958年、旧佐敷町(現南城市)生まれ。19歳で結婚後、夫の玉城信正(のぶまさ)さんと「佐敷かまぼこ 玉城屋(たまきや)」を開き、続いて総菜店、コンビニエンスストアを経営。2015年4月から、平日は知念小学校の特別支援学級のヘルパーとして勤務し、週末に「はぃびぃ スムージースタンド」をサポート。健康情報の収集・普及にも熱心で、自身ココナッツマイスターの資格をもつ

たましろ・まみ
1990年、旧佐敷町(現南城市)生まれ。母・明美さんの影響で健康を意識するようになり、2012年10月に生の食材を用いた調理法であるローフードマイスターの資格を取得。2013年4月、「はぃびぃ スムージースタンド」を立ち上げ、代表を務める

はぃびぃ スムージースタンド
南城市佐敷兼久146-1
☎ 080-4283-1221
営業時間=7時〜17時 定休日=水曜



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はぃびぃ スムージースタンド
「はぃびぃ スムージースタンド」店内で、スムージーの材料を手にする玉城万美さん(左)と母・玉城明美さん。店内には、島バナナなど、地域の人々から仕入れた地元産の果物や野菜が並ぶ=南城市佐敷兼久
写真・村山 望
はぃびぃ スムージースタンド
店をオープンした2013年ごろの万美さん(左)と明美さん。リンゴを手にポーズ
はぃびぃ スムージースタンド
「はぃびぃ スムージースタンド」は、白く塗られた一軒家。ユニークな外見に興味を持ち訪れる人も多いそう
はぃびぃ スムージースタンド
取材中にふらっと店に立ち寄りスムージーを飲んでいった万美さんのおいっ子、平良彪磨(ひゅうま)君(6)。店には、子どもからシニアまで、地域の人々が気軽に出入りする
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