沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1593]

  • (日)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2015年10月29日[No.1593]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 31

ゆいゆいシスターズ 島うた少女 テン
山川 まゆみさん 宮城 マナミさん

島うたで皆を笑顔に

 琉球民謡歌手の山川まゆみさん(39)は、かつての幼児番組「ひらけポンキッキ」の挿入曲「ユイユイ」の歌い手として知られる。当時、まゆみさんは16歳。曲が大ヒットして、琉球民謡界のアイドルとなった。あれから23年、今や3人の娘の母である。壮絶な医療事故に見舞われながらも民謡教室を主宰し民謡少女グループを率いる。そのメンバーの1人、長女のマナミさん(16)はまゆみさんがデビューした年齢で「ゆいゆいシスターズ」に参加。次女宮城汐花(きよか)さん、三女のはるのさんも「お母さんのようになりたい」と三線のけいこに励んでいる。



三線、島うた、かけがえない宝物

 1992年、全国ネットの子ども向けテレビ番組から、まゆみさんが歌う琉球民謡「ユイユイ」が盛んに放映された。沖縄の祖国復帰20年の節目として、知名定男さん、上原直彦さんの黄金コンビがこの曲を作った。

 歌い手に名前が挙がったのが、郷土舞台劇の地方(じかた)の一人者である上江洲由孝さん(74)の門下で、当時16歳の山川まゆみさんだった。テレビCMで見たまゆみさんを知名さんが推してくれたという。

 「高校1年生だと知られたのはレコーディングを終えてから。知名先生も、高校生と知っていたら依頼しなかったでしょう。この曲をいただいて、山川まゆみは今もあるのだと思う」と師匠や先達(せんだつ)への感謝の念は絶えない。

 人気絶頂の高校在学中、上江洲由孝さんの門下生4人の「ゆいゆいシスターズ」が結成され、アルバムを立て続けに発表し、各地の催事にひっきりなしに声がかかった。



島うたが救ってくれた

 高校卒業3カ月前、まゆみさんは県立芸術大学への進学を思い立ち、猛勉強の末に入学し古典音楽の分野に籍を置いた。動機は衝動的だったと語るが、民謡のステージ活動に明け暮れる一方で、古典音楽の奥深さに触れたいというまゆみさんの向上心をうかがわせる。そして卒業式の1週間前に長女のマナミさんを出産するや、産後3カ月でゆいゆいシスターズの舞台に復帰したという。

 母、妻、民謡歌手という女性として華やかな時期を迎えるこの時期、芸能活動の中断を余儀なくさせる医療事故がまゆみさんを襲う。三女を帝王切開で出産した後、体内に異物を残したまま縫合され、さらに胆石症が追い打ちをかけうつ症状を発症したという。「はるのの出産後は育児ができなかった。彼女が3歳になるまでの記憶がない」と、極限の状況を語る。その後の2年間、まゆみさんは全く表舞台に立つことなく、うつうつとした療養の日々を過ごしていた。

 その出来事から立ち直るきっかけとなったのは、「師範免許を取りなさい」という、師匠の励ましであった。師範免許を取る目的があり、まゆみさんは少しずつ舞台に出て歌った。いつの間にか体は楽になっていた。

原石を輝かせる

 「島うたを歌い始めたころから上江洲由孝先生のように、多くの門下生を抱える教室を開くのが夢でした」

 師範となり、今や40人の門下生のいる教室から第2の少女民謡グループも生まれた。きっかけは、大手テレビ局の取材中のハプニングに、子どもたちが平然と日ごろの練習の成果を発揮したことだった。その実力の高さに周囲が感心し、まゆみさんは師匠として原石のような子どもたちを輝かせていないことを気づかされる。「自分は上江洲由孝師匠に輝かせてもらった。子どもたちを輝かせてこそ師匠なのだ」と、まゆみさん。

 その中には、「お母さんみたいになりたい。三線を教えてください」と、小学2年生当時に三つ指をついたマナミさんが「ゆいゆいシスターズ」のメンバーとして参加している。16歳のマナミさんは母がデビューした年齢でゆいゆいシスターズを引き継ぐ。

 マナミさんは、県立南風原高校の郷土芸能コースで琉球舞踊を学び、地方、笛も習得するほどで学校が楽しいといい、三線も最高賞を取るほどに上達した。「舞台に立ちお客さまが楽しそうにしているとわたしも楽しい。三線で歌うことは、もう生きがいみたいなもの」とマナミさん。三線のけいこ、CM出演に生き生きとした表情で取り組む子どもたち。まゆみさんは師匠として原石を輝かせている。

(伊芸久子)



プロフィール

やまかわ まゆみ
1976年那覇市生まれ。県立芸術大学卒業。6歳で三線を始め、中学1年生のときに上江洲由孝さんに師事する。1992年フジテレビ「ひらけポンキッキ」で放映された「ユイユイ」の民謡少女歌手として人気を博した。2011年島うた少女グループ「島うた少女 テン」をプロデュース。今年「ゆいゆいシスターズ」でCDアルバムを発売。琉球民謡音楽協会師範

みやぎ まなみ
1992年与那原町生まれ。県立南風原高校郷土芸能コース2年生。小学2年に三線を始め、中学生から「島うた少女 テン」に参加しリーダーの1人として活躍。今年「ゆいゆいシスターズ」に参加

山川まゆみ 民謡研究所
与那原町与那原2998-186
☎098-945-5250

けいこ日
幼児〜小学生 月・木 16時〜18時
中学生〜大人 月・木 19時〜21時

  島うた少女 テン
けいこ日 火・金 17時〜19時
随時生徒募集(見学可)



このエントリーをはてなブックマークに追加



ゆいゆいシスターズ
「ゆいゆいシスターズ」3代目として山川まゆみさん(写真左)と共に活動する長女の宮城マナミさん。三線を手に取るとまゆみさんと自然に調子を合わせて歌い出した。三線を弾き歌うことが何より楽しいと話す=与那原町の山川まゆみ民謡研究所 
写真・喜瀬守昭(サザンウエイブ)

ゆいゆいシスターズ
小学生から高校生までの島うたを歌う少女グループ「島うた少女 テン」。「テン」には、三線の響き、沖縄民謡の原点、発展する少女たちの意味を込めている。上原直彦さんが命名した
ゆいゆいシスターズ
県立芸大卒業時のまゆみさん。長女のマナミさんを出産したばかりのころ
ゆいゆいシスターズ
1992年の初代「ゆいゆいシスターズ」から、17年ぶりに再結成。メンバーは山川まゆみさん、昨年のミス沖縄の上原唯さん、宮城マナミさん。今年4月にCD「ゆいま〜る」も発売
ゆいゆいシスターズ
「ユイユイ」を歌った16歳のまゆみさん。童顔、弾けるような歌声で魅力が全開。一番忙しかったと語る
>> [No.1593]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>