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[No.1597]

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「表紙」2015年11月26日[No.1597]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 35

「二胡」専門店 二胡姫
代表 上地 美樹(みき)さん
店長・講師 上地 エリサさん

二胡をアジアの架け橋に

 バイオリンに似た優しく柔らかい音色で知られる中国伝統の弦楽器「二胡(にこ)」。2000年代、女子十二楽坊の活躍で広く知られるようになり、以来、県内でも愛好者が増えているという。その静かなブームを支える拠点が、那覇市首里平良町に事務所を構える専門店「二胡姫(にこひめ)」だ。母の上地美樹さん(54)が代表を務め、娘の上地エリサさん(29)が店長とメーン講師を担う。「苦しい時にも、二胡の音色に癒やされてきました」とほほ笑む美樹さん。娘、エリサさんと共に二胡愛好者をサポートし、またアジア友好の架け橋になることを夢見ている。



優しい音色に魅せられて

 2015年11月現在、インターネットで「二胡」と検索すると、ほぼ最上位にヒットする「二胡姫」。母・美樹さんが娘のエリサさん、息子のフウマさんと協力し、2007年に設立した二胡専門店だ。那覇市首里平良町のマンションの一室に事務所を構え、教室でレッスンを行う一方、ネットショップ運営を通し、広く全国にその名を知られている。

 代表を務める美樹さんが経営面を担い、店長とメーン講師を務める娘のエリサさんが店の顔として活躍。「私は常識的な性格で、娘は芸術家肌。性格は違いますが、だからこそうまくいっているのかもしれませんね」と美樹さんは笑う。



時宜にかなった出合い

 那覇市出身の美樹さんは、音楽が大好きな少女だった。「歌手を目指し、沖縄キリスト教短期大学の英文科に在学中、県内大学によるフォークソング大会で優勝したこともありました」と頬をゆるめる。

 卒業後は、民族音楽研究家・クラシック音楽家のジョージ・ショウさんが立ち上げた「音楽院・首里」で勤務。やがて美樹さんとショウさんは結ばれ、25歳で結婚。エリサさんが誕生した。

 エリサさんは、娘の誕生を喜んだ父・ショウさんにより、2歳のころから豊かな音楽教育を受ける。ショウさんが那覇市泊に設立した「愛音(あいね)音楽幼児園」で、3歳からバイオリン、ピアノ、英語を始め、いろいろな教育法を通して音楽の基礎を身につけた。

 弦楽器が大好きで、小学校高学年でレッスンをバイオリン一本に絞ったエリサさん。だが、あまりまじめな生徒ではなかった、と苦笑いする。正統派のクラシックの勉強には興味がなく、父の影響もあり、ロマ(ジプシー)音楽やバリ島のケチャなどの民族音楽に興味を示していたそうだ。

 二胡と出合ったのは、日本史や中国史に夢中になった中学生の時。あるドキュメンタリー番組に使われていた優しい二胡の響きに魅せられた。「この音は何だろうと2、3年間ずっと探していたのですが、高校2年の時、たまたま行ったコンサートで二胡の演奏があったんです。やっとつながった、という思いがありましたね」

 タイミングよく、そのころ女子十二楽坊の登場により二胡ブームが到来。同時に、三線などの楽器を扱うネットショップを営む親戚から、母・美樹さんがその二胡部門を譲り受けるという出来事もあった。エリサさんは、アジアの国際関係論を学ぶため米国に留学した時も二胡を携え、留学生仲間のアジア人にも教わりつつ、母と一緒に二胡を学んでいった。

国境を越える響き

 米国から帰国後、エリサさんは母と共に「二胡姫」の店長として運営にも携わる一方、台湾に足繁く通ってレッスンを受けた。腱鞘炎(けんしょうえん)になるほど二胡に打ち込み、やがて演奏家・講師としての活動を開始。台湾の二胡検定でも、異例の飛び級での受験が認められるほどの技術を身につけた。さらに県内最大規模の演奏会を定期的に主催するなど、二胡の普及に精力的に取り組んでいる。

 県内の二胡人口は、現在350名程度と広がりを見せる。全国的にも、二胡は静かなブームになっている、と2人は言う。母は「皆さんの二胡ライフを楽しくサポートしたいです。病気をした人が、その音色に癒やされて二胡を始めることもありますよ」と話し、娘は「いろいろな世代の人にこの楽器に触れてほしい。また、中国で親しまれている二胡という楽器を通して、台湾や中国の人たちと交流を深められたらと思っています。二胡が台湾や中国など、アジアとの架け橋になれればいいですね」と夢を語る。

 母娘が届ける二胡の音色が国境を越えて鳴り響き、アジアの人々をつなぐ力となることに期待したい。

(日平勝也)



プロフィール

うえち・みき
1961年生まれ。25歳の時、民族音楽研究家・クラシック音楽家のジョージ・ショウさんと結婚し、娘のエリサさんを出産。2007年、娘、息子と共に那覇市首里平良町に二胡専門店「二胡姫」の運営母体である「オフィス楽(らく)」を設立し、代表に就任。経営面で店舗運営を支えている

うえち・えりさ
1986年生まれ。音楽家の父、ジョージ・ショウさんのもと、幼いころから民族楽器やクラシック音楽に親しむ。現在は台湾へ通い本場の二胡を学びつつ、二胡姫の店長、教室メーン講師として活躍中。ウエルカルチャースクール、石垣島など各地でも二胡の講師を務める。沖縄アジア国際音楽祭に出演するなど、演奏の場も広がっており、アルベルト城間やしゃかりのレコーディングにも参加している

二胡姫
那覇市首里平良町2丁目12 暁ビル202
☎098(885)3685
www.nikohime.com



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「二胡」専門店 二胡姫
豊富な品ぞろえを誇り、県内外から二胡愛好者が訪れる専門店「二胡姫」にて、二胡を手にする上地美樹さん(左)と娘の上地エリサさん=那覇市首里平良町 
写真・村山 望

「二胡」専門店 二胡姫
バイオリンを弾く5歳ごろのエリサさん。弦楽器が大好きな子どもだった
「二胡」専門店 二胡姫
母娘で参加している二胡サークル「サークル姫」での演奏風景
「二胡」専門店 二胡姫
二胡姫主催・第6回二胡発表会(2013年)でジャズのプレーヤーと共演するエリサさん
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