「表紙」2017年05月04日[No.1671]号
仕事も育児も互いにフォロー
西向幸三さん(45)と伊藝梓さん(35)は、夫婦で同じラジオ局に勤務し、それぞれ看板番組のパーソナリティーを務める夫婦。西向さんは「ゴールデンアワー」、伊藝さんは「ハッピーアイランド」を担当し、家庭では子育ても分担しながら多忙な毎日を送る。「同じ会社で、やりにくいということはありません。むしろ、どんな状況でどういうふうに仕事をしているか分かるので、お互いにフォローし合えるのが強み」と2人は口をそろえる。
気持ち察して支え合う
FM沖縄の番組「ゴールデンアワー」で、糸数美樹さんと繰り広げる軽快で自由なトークが絶大な支持を集める西向幸三さん。
妻の伊藝梓さんは、同局の番組「ハッピーアイランド」の水曜から金曜のパーソナリティーとして、リスナーからの投稿をあたたかく優しい声で読み上げる。
共にFM沖縄の顔ともいえる人気番組で活躍する2人。しかし、夫婦で同じラジオ局に勤めていて、やりにくいと思うことはないのだろうか?
そんな記者の疑問に、2人は共に「助かることのほうが多い」と答える。
「それぞれ別の番組で忙しくしているので、職場で顔を合わせることはほとんどないです(笑)。ただ、お互いにどういうふうに仕事をしているかは分かるので、忙しい時には自然とフォローし合えますね」と西向さん。
伊藝さんも「『頑張ってるな』というのは、本人が言わなくても分かる。仕事が一段落して、おいしいものを食べに行きたくなる周期も同じなので、夫に誘われたら打ち上げ気分で『やったー』って喜んで出かけています」と続ける。同じ職場、同じ職種であることが、夫婦にとってはプラスに働いているようだ。
出会いもラジオ局
2人が出会ったのも、やはりラジオ局だった。2004年、FM沖縄に入社した伊藝さんは、職場の先輩として西向さんに出会った。
「夫は10歳上の先輩だったし、仕事には厳しかった。最初はこわかったんですが(笑)、すごくかわいがってもらって、『こわいけど本当はいい人なんじゃないか』って……」
そう話す伊藝さんに、「彼女は『まじめな子』という印象でした。学生時代、なぎなた部に所属していたので、上下関係にキッチリしていて、言葉づかいも丁寧でしたね」と西向さんも応える。
出会って1年後の05年に2人は結婚。「上司からは、『お前と結婚させるために彼女を入社させたんじゃない』と冗談まじりに言われました」と西向さんは笑う。
子どもの誕生が転機に
結婚して2年後、夫婦は男の子を授かる。2人にとって、それは思いがけない転機となった。
「僕は複雑な家庭で育ったので、ずっと子どもを持つことがイメージできなかった」と西向さんは振り返る。
「彼女と出会って人を愛する喜びを知ったけれど、不安も大きかった。でも、長男が生まれてすぐ、首もまだすわっていないのに、自然に抱くことができたんです。その時、世界が変わりました」
西向さんの心に「結婚してくれてありがとう、子どもを産んでくれてありがとう」という感謝の思いが湧き起こった。それからは伊藝さんが「私より子どもが好き」というくらい子煩悩な父親となり、育児にも積極的に参加。子育てを苦に思ったこともないという。
「私の側も、それまでは夫に教えてもらうばかりだったのが、子どもを一緒に育てることで、はじめて同じスタートラインに立てたという思いがあった。私と一緒に手探りしてくれたという実感がありましたね」と伊藝さんも頬を緩める。
長男の幸大(こうだい)くん(9)に続き、次男の幸土(こうと)くん(6)も誕生。2人の子どもの世話も家事も、どちらか手の空いているほうが行う。
時にはけんかもするが、翌日に持ち越すことはなく、お互い「これ以上はNG」というラインも把握している。
お互いを支え合いながら、子どもと過ごす家族の時間が、ラジオでの2人の元気な声を支えているのだろう。
(日平勝也)
円満の秘訣は?
西向 幸三さん: 1人の人間としてきちんと認めてあげること。彼女は彼女なので、「ああしなさい、こうしなさい」とは言わないように心がけています。伊藝 梓さん: 間合いを「察する」こと。何でもかんでも同じ歩幅である必要はないので、お互いを尊重し、間合いを大切にしてやっていきたいですね。
プロフィール
にしむかい・こうぞう: 1972年生まれ、宜野湾市出身。1999年、FM沖縄に入社。「ゴールデンアワー」を担当し、プロデューサーおよびディレクター、DJを兼務。第51回ギャラクシー賞ラジオ部門DJ・パーソナリティー賞受賞● ゴールデンアワー/月曜〜金曜 14時〜15時50分
いげい・あずさ: 1981年生まれ、西原町出身。2004年、FM沖縄に入社。現在、「ハッピーアイランド」の水曜から金曜のパーソナリティーを担当している
● ハッピーアイランド/月曜〜金曜 11時30分〜13時55分
(月曜・火曜のパーソナリティーは多喜ひろみさんが担当)
写真・村山 望