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[No.1721]

  • (金)

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「表紙」2018年04月19日[No.1721]号

新しくて懐かしいレモンケーキ きのストアー

ぬくもりある味 届けたい

 沖縄のソウルフードの一つ、レモンケーキ。「シーミーやお盆の時に仏壇に供える、どちらかといえば地味なお菓子」という印象を持っている読者も多いはずだ。だが、宜野座村の「きのストアー」のレモンケーキはひと味違う。古くて新しい、新しいのにどこか懐かしい──。そんなレモンケーキをリポートする。

 「これがレモンケーキ!?」

 きのストアーのレモンケーキを見た人は、誰もが驚きの声を上げるに違いない。「インスタ映え」という言葉にふさわしい、キュートな見た目に心を奪われてしまう。

 「法事菓子というイメージのあるレモンケーキに、日の目を見せてあげたかったんです」。このレモンケーキの生みの親、牧野さくらさん(44)は、こう話す。

マチヤグヮーの空気感

 きのストアーは分かりやすい場所にあるとはいえない。宜野座村のサトウキビ畑が広がる風景の中、路地を進んで、ようやくたどり着く。

 それにもかかわらず、店には客足が絶えない。ご近所さんはもちろん、土曜日ともなれば、中南部から車でやってくるお客さんも多い。

 ツーリングの休憩スポットとしても名が知られているようで、取材の日には宜野湾市内から若きサイクリスト・渡久地臣直さん(20)と長嶺翔太さん(20)が訪れた。「糖分を補給し、疲れた体を癒やすのに最適ですよ」と渡久地さんは日に焼けた顔でおいしそうに同店のお菓子を頬張る。

 お店を訪れた客は、必ずといっていいほど、さくらさんの夫・洋介さん(44)と会話を楽しんでいく。

 キッチンでお菓子を焼き上げるさくらさんに対して、洋介さんは接客の担当。「わざわざこの場所を探して来てもらったんだから、買っていただくだけで終わらせたくないんです。店にたどり着くまでの物語を聞くのが面白い」と人懐っこい笑顔を見せる。

 この感じ、何かに似ている。そう、昔ながらの沖縄のマチヤグヮーだ。インテリアこそモダンだが、きのストアーには、どこか昔懐かしい空気が流れている。

「人間っぽさ」大切に

 新しいけれど、どこか懐かしい。それは、レモンケーキにも共通している。

 さくらさんは千葉、洋介さんは東京の出身。ともに日本大学芸術学部を卒業し、さくらさんは広告代理店、洋介さんはイタリア料理店に勤めたが、激務に追われる毎日に疲弊。状況を打破しようと2人で弁当屋を創業するも、結局休む間もなく働くことに。

 そして「今度こそ生活を変えよう」と、2005年にさくらさんの父の故郷、沖縄に移住。12年10月に店をオープンした。店には、レモンケーキの他にも、たくさんの手作りのお菓子が並ぶ。

 「お菓子作りで大切にしているのは、『人間っぽさ』を残すこと。ぬくもりを感じてもらいたいですね」とさくらさんはお菓子作りに込める思いを語る。

 取材の終わりに、レモンケーキをいただいた。ふわふわのスポンジ生地を口に含むと、卵の風味とレモンクリームの爽やかな香りが広がる。その味わいに、子どもの頃の懐かしい風景がよみがえるのを感じた。 

(日平勝也)



kino store(きのストアー)
宜野座村宜野座443
☎098(968)6036
営業時間=木曜・金曜・土曜の10〜17時(売り切れ次第終了)

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きのストアー
きのストアー
レモンケーキに、期間限定で季節に合わせた絵をあしらうことも。取材を行った4月の上旬には、愛らしいイースターバニーを描いたレモンケーキが登場しました(現在は終了)
きのストアー
自宅の軒先を拡張して店舗に。周囲には、宜野座村ののどかな風景が広がる
きのストアー
宜野湾市から自転車で訪れた渡久地臣直さん(右)と長嶺翔太さん。庭でお菓子を頬張りリフレッシュ
きのストアー
(右から時計回りに)キャロットケーキ(200円)、たんかんマフィン(200円)、レモンケーキ(150円)、ストロベリーマフィン(200円)、ジャーマンケーキ(220円)。いずれも沖縄の素材を生かしている。さくらさんが「宜野座価格」というリーズナブルな価格もうれしい
きのストアー
牧野さくらさん(左)・洋介さん夫妻
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