「表紙」2019年01月31日[No.1762]号
2本の苗からの挑戦
大宜味村喜如嘉の集落の中にある小さなコーヒー農園でコーヒーを栽培しているKIZAHA COFFEE(キザハコーヒー)の山本大五郎さん。一人で栽培から焙煎(ばいせん)までを行っている。知人から譲り受けた2本のコーヒーの苗をきっかけに、苗を増やし、約5年前に喜如嘉の畑に定植。少量ながら収穫ができるようになった。コーヒーの花が咲くように願いながらコーヒー栽培に奮闘する。
山と海に囲まれた大宜味村喜如嘉。自然豊かなこの地域で一人コーヒー作りに取り組むのがKIZAHA COFFEE(キザハコーヒー)の山本大五郎さんだ。
赤道を挟んで南北の緯度25度以内の「コーヒーベルト」と呼ばれる地域が、コーヒー栽培に適している地帯といわれる。その北限に位置する沖縄県では、収穫量は少ないが、これまでもコーヒー栽培が行われてきた。
アグー豚を育てていた山本さんがコーヒー栽培を始めたのは十数年以上前にさかのぼる。きっかけは知人にもらった2本のコーヒーの苗だ。コーヒーが好きだったということもあり「自分で育てたコーヒーが味わえたら」と趣味のつもりで自宅の庭にその苗を植えた。そのうちに苗が育ち、花が咲き、果実が実り始め、その種からまた苗を増やしていった。
「発芽して双葉が出てくるのがかわいくて、苗を増やそうと思った」と山本さんは振り返る。2~3年かけて苗を増やし、約5年前に喜如嘉の畑に植え付けを始めた。
約400本の木を栽培
「コーヒーの苗は借りられる畑に植えている」と山本さんが言う通り、栽培面積を徐々に増やしていき、現在は約400本のコーヒーの木を3カ所の畑に分けて栽培している。総面積は、約1000坪に上る。
コーヒーの実は収穫できるまでに、約5年かかる。それまでは、育つかどうかも分からなかった。台風も大敵だ。畑に定植して5年が経った今、安定した供給はまだできていないが、少量ながらコーヒーを収穫できるようになった。喜如嘉の静かな森の中にある山本さんのコーヒー畑は、川などからも近く、湿度も高い。「コーヒーはすごく水分を要求するので、意外と環境が適している」と話す。
実店舗は持たず、イベントなどで出店を行っている山本さん。自身で栽培したコーヒーのほか、途上国の生産者の自立を支援するために公正に取り引きされた「フェアトレード」のコーヒー豆を使用し、自家焙煎したコーヒー豆をハンドドリップで入れて提供している。
今年の開花 心待ちに
山本さんが育てるコーヒーは、通常3~6月に開花、12月ぐらいから実が熟し始める。収穫時期は12月から次の開花前の3月ごろまで続く。ほぼ毎日様子を見ながら、完熟した実を手摘みで収穫している。昨年は取りきれないぐらい実がなったというが、今年は少ないという。「昨年と比べると収穫は1割程度かもしれないと絶望の淵だったが、実が熟し、緑から赤に色づくと思ったよりも確認できた」と安堵(あんど)した様子だ。
今年、多くの花が咲き、実になり、来年には収穫量が増えればと期待する山本さん。自らの育てるコーヒーを沖縄の特産品にしたいという気負いはない。ただ、しっかり管理して育て、仕事として続けられるようにコーヒー畑が残ってくれればと期待を込める。
コーヒーの白い花が咲き誇ることを夢見ながら、今日も地道に栽培を続ける。
(坂本永通子)
電話:090-7475-5266
https://kizaha.exblog.jp/
※農園見学不可
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出店情報
①第3回ハチウクシー展(今帰仁村)2月8日(金)~11日(月)
②繁多川豆取祭in喜如嘉(大宜味村)3月2日(土)
③沖縄コーヒーフェスティバル(宜野座村)3月9日(土)・10日(日)
④香祭(カバーサイ)(名護市)3月24日(日)