「表紙」2019年07月25日[No.1786]号
誰もが楽しめるせりふに頼らない舞台劇
ここ数年の間に、耳にする機会が増えてきた「ノンバーバル」という舞台劇のジャンル。直訳すると「言葉を用いない」とか「非言語」という意味だが、どんな特徴があるのだろうか。2018年の初演以降、観客と共に進化を続けているノンバーバルパフォーマンス「Kajimaya」(カジマヤー)の出演者に、見どころや演じる楽しさを教えてもらった。
「日本語がわからない外国人、子どもたち、またおじいちゃん・おばあちゃんでも楽しめるのがノンバーバルです」と語るのは、出演し演技指導も行う島袋寛之さん。
「言葉に頼らず、動き・表情・演出効果(照明・音響・衣装など)で表現するのがノンバーバルの舞台だと思っています」
島袋さんは歌や舞踊、そして小さなころ笑って見ていたザ・ドリフターズなどのコントも含まれると考えているという。
近年増えてきた外国人観光客も楽しめるエンターテインメントとして、「せりふに頼らないストーリー性のある舞台劇」が求められるようになったことも背景にあるようだ。
「せりふがなくても伝わる表現にしながら、ストーリー性を失いたくない。そのバランスが難しいですね」と島袋さんは語る。
海外で通用するショーを
十数年前に琉球舞踊主体の海外公演に参加した島袋さんは、観客席のスタンディングオベーションを見て感激。
「せりふが多い芝居は、海外ではここまで盛り上がらないはず。何を強みにしようかと考えた時、『TEE!TEE!TEE!』という舞台のオーディションに合格し、新しい経験ができました」
『TEE! TEE!TEE!』は2014年に著名演出家・宮本亜門さんが手掛け、ノンバーバルの手法で沖縄文化を描いた舞台。「役者でも海外で通用する作品に携われる」と自信と可能性を感じた島袋さんは、16年に空手を取り入れたノンバーバルショー「ミットマン」を制作。それがきっかけで「カジマヤー」に関わるようになった。
「舞台では、今この瞬間をどう生きるのかを表現します。コミュニケーションを取りながら心の流れを演じるので、言葉があってもなくても同じ感覚です」
初演から2年目の「カジマヤー」は回を重ねるごとに良くなっていると実感し、県民はもちろん外国人や聴覚に障がいを持つ人々へと客層が広がっているそうだ。
「いろんな人に演劇を好きになってもらいたいですね」と笑顔を見せる島袋さんは、舞台に立つ度に発見をし感覚を磨いている。
老若男女に伝わる物語
会話が少ないノンバーバルの舞台は、出演者のチームワークが出来栄えの決め手といえる。
フリースタイルバスケットボールのパフォーマーで、「カジマヤー」ではMC役を務めるDICEさんは、「勉強して少しずつ成長したと思います。楽しい舞台ですよ! 過去公演を修正し、8月は進化した内容をお届けしますので、お楽しみに!」と自信たっぷりに話す。
カマドおばーを演じる紅一点の棚原奏さんは、「ベテランさんとの共演で最初は緊張しましたが、アイデアを出し合って舞台を作り、今では家族のよう。チームワークの塊ともいえるメンバーで、ノンバーバルの面白さを伝えます」とほほ笑む。
普段は単独活動の粒マスタード安次嶺さんは、集団パフォーマンスはこの舞台が初。
「ノンバーバルは老若男女に伝わる物語。耳に障がいを持つ方たちが団体で見てくれて、楽しかったと言われた時は泣きそうになりました。いい舞台をやっている、頑張ろうと思えたんです!」と話す安次嶺さんは、見る側が「救われた」と楽しんでもらえる喜びを胸に、活動を続ける。
アクロバット集団「チョンダラーズ」メンバーの1人、比嘉健雄さんは「アクション系のパフォーマンスが多く、最年長なのでけがをしないのが目標です!」と意気込み、「やりたい事が詰まった舞台で、観客を驚かせるのが僕の任務。幅広い世代が楽しめる舞台は県内では少ないので、家族で見てください!」と語った。
おじーとおばーの人生を振り返る「カジマヤー」。ぜひ家族で一緒に鑑賞してほしい。
(饒波貴子)
〜ミュージックタウン音市場オリジナルノンバーバルパフォーマンスショー〜
8月31日(土)15時開演
会場:ミュージックタウン音市場(沖縄市上地)
前売り一般2000円/小学生以下1000円(2歳以下無料)
※沖縄市民割り引きチケットは、音市場のみの販売 問い合わせ:ミュージックタウン音市場
☎098-932-1949