「表紙」2020年05月06日[No.1826]号
伝統の畳文化 守りたい
日本の伝統文化「畳」。現代では海外文化の影響などで住宅事情も様変わりし、畳の需要も減少傾向にある。そんな中、古き良き畳文化を新しい形でアピールしているのが「たかえす畳店」の店主、高江洲周作さん。オリジナルの畳グッズの開発やSNS(会員制交流サイト)などの発信を通して、畳の良さを伝えている。
伝統の畳の他、オリジナルの「命名畳」や、洋間にもマッチするデザイン性に富んだ畳を製作し、畳の可能性を広げている「たかえす畳店」。店主の高江洲さんが宮古島から那覇に出店した畳店だ。
実家は宮古島市平良にある創業1967年の老舗「高江洲たたみ店」。「漠然と県外に行きたいという思いがあった」という高江洲さんは、高校卒業後、福岡県にある畳訓練校に入学した。約4年間、畳職人の下で修行しながら、訓練校に通い腕を磨いた。25歳で畳製作1級技能士の資格を取得し、職人として仕事ができるようになると、畳作りの楽しさに目覚めた。
結婚を機に28歳で故郷の宮古島に戻り、父の経営する畳店を手伝い始めた。新婚旅行中には、ネットで見つけた大阪のおしゃれな畳屋に見学に行き、SNSなどでの発信方法を学んだ。
兄と考えた「命名畳」
ある夜、高江洲さんの心にスイッチが入った。「実家に行くと、父が『仕事がない』と漏らした。初めて弱気な父を見た」と振り返る。それから、家業のために奮起。のぼりを立てたり、SNSで発信したり、店内のディスプレーを工夫したりして、家業のPR活動に励んだ。そのうち宮古島の新聞やテレビ局などにも取り上げられるようになり、注文やネットからの問い合わせも増加した。
オリジナル商品「命名畳」も開発した。「実家の床の間に兄の長男の『命名紙』が貼られていたのがヒントになった」と振り返る。試行錯誤の末、特殊プリンターで畳への印刷に成功。商品化にこぎつけた。販売を開始すると人気を呼び、ヒット商品に。県優良県産品にも登録された。アーティストや県外の畳店とのコラボレーション商品も誕生し、バリエーションも増えた。
2014年、父と兄に家業を任せ、故郷の宮古島を出て、那覇市小禄で独立。2017年には豊見城市に工場を増設するまでになった。
畳の魅力を発信
「畳の魅力は自然を身近に感じることができること。和室は、風景画が描かれたふすま、かすかに光が入る障子、そして草である畳があり、自然の中にいるような空間が演出されている。夏は涼しい、冬は暖かい、ほこりがたたないのもいいところ」と語る。
最近では、縁(へり)のない「琉球畳」の人気も高いという。その他にも、洋間に置く「置き畳」、多彩な畳の縁など、現代の生活に合わせたスタイルを提供している。
「琉球畳をはじめとして、畳や和室の良さが見直されている。畳は最高の敷物だと思っている。一部屋だけでも畳のある和室を残していきたい」と頼もしい。県外の畳職人との交流やセミナー参加など、向上心は尽きない。後世に残すため、畳の新しい可能性を追求し続ける。
(坂本永通子)
※この記事は4月2日に取材したものです