「表紙」2020年05月21日[No.1828]号
問われるネットとの“距離”
コロナウイルス感染拡大という、私たちがこれまで経験したことない状況の中で、スマホやネットは、私たちの生活にさまざまな影響を及ぼしています。「モバイルプリンス」の名前で、子どもからシニアまで幅広い年代にスマホ・ネットの活用法を伝える活動を行っている島袋コウさんに、ビデオ通話でインタビュー。今この時代だからこそあらためて意識したいスマホやネットとの付き合い方についてアドバイスをもらいました。
―コロナウイルス感染拡大という状況の中で、スマホやネットは、いい面でも悪い面でも大きな影響を社会に及ぼしていますよね。
いい面としては、おうちの中にいても情報を得ることができ、人とコミュニケーションを取れるところ。外出を自粛していても孤独感を味わうことなく、いろんな人と交流できる。あるいは仕事も、職種によっては出社しているのとほとんど変わらないような状況で進められるという人もいると思います。
逆に悪い面は、まずいろんな情報が出てくる中でフェイクニュースがある。例えばトイレットペーパーがなくなったといううわさが広まることで、トイレットペーパーがなくなると信じていなかった人も買わざるを得なくなることによって品切れ状態が続くとか。また新型コロナにはこれが効くらしい―例えばお湯を飲みましょう、とか―根拠不明の情報が出回る。
ほかにはステイホームせず外にいる人をバッシングしたり、あるいは陽性者の個人情報をSNSに載せたり。いわゆるネットリンチです。個人を叩くというのもすごく出てきました。
でも、個人をバッシングする権利は私たちにはないですからね。あくまで「人のふり見てわがふり直せ」で、自分はやらないということにしないと。それで人を非難しだすと止まらなくなりますから。
SNS疲れ
―SNSの情報に過剰に反応して疲れてしまうということもあります。
ネガティブな情報も多いじゃないですか。だからどうしても、人の心の部分で疲れるということは出てきますよね。
例えば外出して映画を見に行くとか、おいしいご飯を食べに行くとか、普段は気がまぎれていたこともできなくって、そうしたストレスがSNSのネガティブな情報と結びつくと、誰かをバッシングしたくなったり、「こういう身勝手な行動を取っている人がいるからこういう状況が続くんだ」となったりする。
そういう場合は、思い切ってSNSアプリを撤去してしばらく見ない。人と人との距離を取ろう、というのと同じく、ネットやSNSなどの情報ともある程度距離を取るというのも大事じゃないかなと思います。
―感染防止の目的で、スマホのGPSで個人の位置情報を収集という試みも行われています。
グーグルやアップルもいま共通でプラットフォームを作っていて、「あなたは陽性反応が出た人と濃厚接触していましたよ」と教える機能を付けようと進めています。
ただ、私たちの行動履歴など、いろいろな情報を無条件で手放しで渡してしまうと、今後いろいろな使われ方をして、個人の権利を制限する動きになってもおかしくないのかな、と。運用する側が適切にデータを扱うのかという部分をコロナ感染拡大が収まった後も注意深く見ていく必要があると思います。
今こそ情報を咀嚼(そしゃく)して
―最後に読者へのメッセージをお願いします。
2020年という新しい年代になって、世の中が大きく変わらないといけないということになりました。ピンチな状況だと思いますが、今あらためて、自分のことや社会のことを考えるきっかけにはなると思います。
僕が言うのはおかしいのかもしれないんですけど、ものすごい速さでSNSで流れてくるいろいろな情報の中に、「自分がこれからどうしていけばいいのか」という情報は意外とない。逆にスマホやネットと距離を取って、ゆっくり、じっくり本を読むなど、自分で情報を咀嚼すること、つまり、しっかりかんで味わって体に取り込むことが大事だと思います。
(聞き手・日平勝也)
『しくじりから学ぶ13歳からのスマホルール』
島袋コウ/モバイルプリンス・著、
小谷茶・イラスト
(旬報社、1,540円・税込)
琉球新報の子ども向け新聞「りゅうPON!」の連載記事を加筆修正して単行本化し、今年2月に刊行。「期せずして今の状況と重なる内容も多い。ジュニア向けに書いていますが、大人が読んでもいろいろな気づきがあると思います」とモバイルプリンスさん