「表紙」2020年12月3日[No.1856]号
見る人を笑顔にする小さなヤギたち
ぷっぷー。音の出るおもちゃを使い、合図を送ると十数匹のヤギ「ミニボア」たちがとことこと小屋から出てきた。小型のミニボアは生まれてすぐにも見えるが、全て生後2〜5カ月。一般的に飼育される品種のヤギだと同時期のサイズはさらに大きいが、愛玩用のミニボアは成長しても最大20㌔程度だ。品種改良のきっかけや魅力について仲西萠男さんに話を聞いた。
うるま市石川山城にある「ミニボア太陽牧場」。飼い主の仲西さんは、ここで愛情を注ぎながらミニボアたちを育てている。
元気いっぱいのミニボアは、目を離せば遠くまで駆けて行く。履いている靴のひもを外すなどいたずらもするが、性格は基本的におだやか。犬や猫のように自ら人に近寄り甘える姿を見れば自然と笑みがこぼれてくる。
5年かけて小型化
肉用ヤギの飼育もしている仲西さん。自身の畜舎には複数の品種がいる。愛玩用の小さなヤギを生み出そうと思い立ったきっかけはボア(ボーアとも)種というヤギの顔立ちが好きだと感じたことがきっかけだったそうだ。
「ボアは他のヤギと比べて顔がハンサム。目は優しいんですよ。耳も大きく垂れていてかわいい。これを小さく飼いやすいように品種改良してみようと思いつきました」
しかしボア種は体重が90〜130㌕にも及ぶ大型のヤギ。これを小さくする方法として、比較的小型であるトカラヤギという日本在来種のヤギを掛け合わせることにした。両品種の交配を始めたのは5年前。当初は周囲のヤギ飼育家たちから「ボア種を小さくするのは難しいよ」との助言も受けたが、きっと多くの人が好きになるヤギを生み出すことができる、という気持ちで取り組みを続けた。
趣味だったというゴルフもほとんど行かなくなり、ミニボアの育種に熱中した仲西さん。現在のミニボアたちは抱くのも可能なほどの大きさとなり、小型犬用のリボンや服でおしゃれをすることもできるようになった。
外で駆け回るミニボアたちを見守る仲西さんはとても和やかな表情だ。「このヤギたちの世話をしていると癒やされるし、毎朝起きるのが楽しいよ」と目を細める。
将来はもっと身近に
ミニボアは飼育も比較的簡単だという。
雨風をしのぎ、安心して休める小屋を設置できれば、一般家庭でも家族としてミニボアを迎えられると仲西さんは話す。餌は新鮮なクワの葉などが好物だが、農協で販売しているヤギ用の飼料も利用できる。
ミニボア太陽牧場では今後、一般への提供も視野に飼育するヤギの頭数を増やす予定だ。高齢者や障がいのある人たちとも安心して接することができるので、福祉施設などからも問い合わせが相次いでいるという。育種に関しては、琉球大学名誉教授の砂川勝徳さんの協力も得ながら取り組んでいる。将来は、県内各地でミニボアを目にする日が来るかもしれない。
毎週日曜日には、牧場近くのホテル「アンサ沖縄リゾート」の敷地内でミニボアの放牧も行われている。一般の方も見学可能なので、ミニボアたちに会いに行ってほしい。小さなヤギたちが芝生の上を駆け、うたた寝する様子を見れば、そのかわいらしさに夢中になるだろう。
(津波 典泰)
<ミニボアの見学場所>アンサ沖縄リゾート
うるま市石川山城1468
☎︎098-963-0123
無料駐車場あり
毎週日曜、晴れの日の日中のみ
※見学のみ。ふれあい体験などは行っておりません