「表紙」2020年12月24日[No.1859]号
物語を通して「しまくとぅば」普及
紙芝居作家「さどやん」として活動する佐渡山安博さん。小学校や図書館、イベントなどで自作の紙芝居を披露する他、動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」を活用し動画も発信している。佐渡山さんは2010年から紙芝居の口演活動を開始。沖縄の言葉や文化を楽しく伝えている。
「『さどやんのおはなしかい』始まりまーす」。12月中旬、拍子木の音とともに明るい声が書店内の会場に響く。しまくとぅばを織り交ぜて進むユーモアたっぷりの物語やクイズなどに会場に集まった子どもも大人も大いに盛り上がった。
テーマはすべて沖縄
オリジナルの紙芝居を携えてさまざまな場所で披露している「さどやん」こと佐渡山安博さん。活動のきっかけは長女の通う小学校での読み聞かせに参加したことだった。面白絵本を読むと、子どもたちに大ウケ。物語を伝える楽しさを知った。「人が書いた本がウケてこんなにうれしかったら、自分の作品だったらどれだけうれしいのだろうと思い、紙芝居の創作を始めた」と振り返る。
最初の作品は組踊「銘苅子」を題材にした「めかるっちの大冒険」。5年がかりで4部作を作り上げ、2010年から街頭紙芝居スタイルでの活動をスタートした。作品の数は絵本なども含めて約40点に及ぶ。しまくとぅばや文化を学ぶものや、市町村を舞台にした冒険シリーズ、歴史や風習をベースにした物語、怪談シリーズなど、すべて沖縄がテーマだ。
これまで県内の公園や小学校、幼稚園・保育園、書店、イベントなどで作品を披露してきた。「沖縄はネタの宝庫。いかに沖縄ネタを物語に織り交ぜ楽しく見せるか」にこだわって制作している。
通常の紙芝居と違うのは、言葉も絵に描きこまれていること。「しまくとぅばは、ビジュアル化しないと言葉を知らない人には伝わらない」。主人公の感情に合わせてポップに書かれた言葉を目で見ることで印象に残そうと工夫する。伝え方は「何でもあり」がさどやん流だ。
消滅の危機が指摘されているしまくとぅば(琉球諸語)を「もう一回はやらせたい」という佐渡山さん。「口演が終わると、子どもたちが「にふぇーでーびる(ありがとう)」など、覚えたての言葉を使っている様子を見るのがやりがいにつながる」と話す。
県外や海外でも紙芝居を披露する機会に恵まれた。2017年にはペルー在住の県系人紙芝居作家との交流を機にペルーに招待され、紙芝居を口演。同年には「世界のウチナーンチュの日」の関連企画として県内でも共演を果たした。2018年には「第7回ニッポン全国街頭紙芝居大会 IN ぬまづ」に出演。国内外の紙芝居師と交流を深めた。
沖縄の面白さ県外にも
さまざまな交流を通して「沖縄の文化や言葉をより多くの人に見てもらいたい」という思いも強くなっていった。紙芝居作品の他に、手軽に紙芝居形式の読み聞かせができるように工夫されたリングノート式絵本も自主制作。昨年から県立図書館に紙芝居作品とともに寄贈している。
「紙芝居はデジタルとも相性が良い」という佐渡山さんは、動画投稿サイト「You Tube」も活用。「イントネーションなど読み聞かせする人の参考になるように」との思いから、自らが作品を読み聞かせする動画を配信している。さっそく県外の紙芝居師が活用してくれたという。
「とにかく沖縄を楽しんでほしい。物語さえあればどんな形でも伝えられるので、できるスキルはフル活用して発信していきたい」。佐渡山さんは、沖縄芝居の紙芝居化、漫画化など新たな構想も練っているといい、作品の幅もさらに広がりそうだ。今後も紙芝居というエンターテインメントを通して沖縄の文化を伝え続ける。
(坂本永通子)
沖縄の紙芝居屋「さどやん」
ホームページ
https://www.kamishibai.okinawa/