「表紙」2022年05月19日[No.1932]号
今に生かす インドの伝統医学
2016年4月から、レキオ紙面でインドの伝統医学「アーユルヴェーダ」を分かりやすく紹介するコラムを執筆してきた根間洋子さん。連載6周目を迎えた今年、連載をベースにした書籍『暮らしにいかすアーユルヴェーダ』を出版。すぐに始められ、自然治癒力が高まるシンプルな実践法を多数紹介し、ともすれば難しくとらえられがちなアーユルヴェーダのイメージを覆す親しみやすい一冊にまとめた。執筆の原動力は「大切な人にずっと元気でいてほしい」という思い。「この本が、何かが変わるきっかけになれば」と願いを込める。
アーユルヴェーダとは、5000年の昔から伝えられてきたインドの伝統医学。こう聞くと、現代の私たちは敷居が高く難解なもの、という漠然としたイメージを抱きがちだが、根間さんの本を開くと、印象がガラリと変わるはずだ。
『暮らしにいかすアーユルヴェーダ』に書かれている実践法は、シンプルで、すぐに自分自身で実行できることばかり。たとえば「白湯飲み健康法」。いつも飲んでいるコーヒーやお茶の代わりに、コップ一杯のお湯をゆっくり飲むだけで、冷えや便通の改善などさまざまな効果が期待できるという。
ほかにも、食事は適量を心がける、規則正しく適切な睡眠を取ることを勧めるなど、身近で理にかなった実践法の数々を紹介する。
「こんなことで体が変わるのかというシンプルなことでも、ずっと続けていくと体が治ってきますよ」と根間さんは話す。
40代で訪れた転機
子どもの頃からインドに憧れてきたという根間さんがアーユルヴェーダを学び始めたのは40代。
「健康診断で子宮筋腫が見つかり、どうしたらいいか分からなかった」。その時に出会ったのが、後に師となるアーユルヴェーダ医師のクリシュナ U.K.博士だ。
「クリシュナ先生のカウンセリングで、夜遅くまで仕事をするなど、知らず知らずのうちにやっていた悪い生活習慣を指摘されました」
20代~30代で仕事と育児に夢中で取り組み、体を顧みなかったという根間さん。「40代になり、体がついていけなくなっていたんですね。その時点で気が付いてよかったです」と振り返る。
仕事の無理がたたり、肩こり、腰痛、頭痛などにも悩まされていたが、ヨガとアーユルヴェーダを実践することで改善。子宮筋腫も手術をせずにすみ、「50代の今、20代~30代のころよりも体の調子がいいです」と笑う。
大切な人に伝えたい
身をもってアーユルヴェーダの力を実感した根間さん。クリシュナ博士を師として学ぶ傍ら、2009年から県内でアーユルヴェーダの講座を開始。14年には那覇市に「アシュヴィニ・アーユルヴェーダスクール」を開校、16年からはレキオでコラムを執筆するなど、普及に取り組んでいる。
本の出版に至った原動力は 「大切な友人や家族にずっと元気でいてほしい」という思い。「30代で大学時代からの大切な友人を2人亡くし、何かできることがなかったのかなと思ったんですね」。友人や家族と一緒に、楽しく元気に人生を過ごしたい、という気持ちから、アーユルヴェーダの健康法を分かりやすく解説し、周囲の人々にプレゼントできる一冊にまとめようと思ったという。
出版にあたっては、レキオ連載のコラムをベースにしつつ、約1年半の時間をかけて内容を大幅に追加。アーユルヴェーダの考え方、生活法、食事法、生薬について、頭痛・鼻炎・腰痛など症状別の対処法、レシピも掲載し、実用的でバランスのよい内容にまとめた。
見開きで一テーマが完結するスタイルにこだわり、どのページからでも読み始められ、読者がこれならやれると思ったことから実践できるよう工夫した。
「長寿県沖縄を取り戻すにも、アーユルヴェーダを普及させたい。この本が、何かが変わるきっかけになれば」と根間さんは自著の出版に願いを込める。
取材時に印象的だったのは、 生き生きと語る根間さんのとびきりの笑顔。アーユルヴェーダが人を幸せにする力があることを実感させられた。
(日平 勝也)
『暮らしにいかすアーユルヴェーダ』ねま ようこ・著
(新星出版/税込1870円)
県内各書店で販売中
出版記念トークショー
6月19日(日)15時~ジュンク堂書店那覇店