「表紙」2023年01月19日[No.1967]号
障がい者アートをもっと身近に
2022年2月に設立されたドアレスアートオキナワは、県内の障がい者アーティストの発掘と社会的自 立支援のサポートをする団体だ。「ドアレス」とはドアのない自由な世界へ羽ばたいてほしい、という願 いが込められた造語。所属するアーティストを障がい者アーティストではなく、「ドアレスアーティスト」 として一流に押し上げることを目的としている。理事兼事務局長の呉屋マリヤさんと、理事であり自身も ドアレスアーティストである宮城恵輔さんに話を聞いた。
現在、ドアレスアートオキナ ワには老若男女、約 20 人のドアレ スアーティストが所属。抱えて いる障がいの種類も異なれば、 作品のかたちも絵画・造形・ハ ンドメードなどさまざまだ。
昨年2月の設立後、はじめ に取り組んだのは、工事現場の 壁面に絵を掲示する「一銀通り アートワーク」だった。代表理 事である高倉幸一さんが那覇 市内に新規ホテルを開業する にあたり、工事現場の壁面にド アレスアーティストの作品を掲 示したのだ。工事警備員か ら「絵があるとやっぱり違うよ ね」という感想もあったとのこ と。
アートを通した自立支援
初の展示販売会はデパート リウボウの特設スペースで行っ た。偶然立ち寄った来場者に、 ドアレスアートオキナワの活動 と、ドアレスアーティストを 知ってもらう機会となった。同 時に、アーティスト一人一人のモ チベーションにもつながったと いう。
20 代の頃の事故で両手に障 がいを負ったドアレスアーティスト・宮城恵輔さんはタッチペ ンを口にくわえ、タブレットで 絵を描く。油彩画のような独 特なタッチは、絵の具を扱えな い宮城さんにとって憧れである 油彩画のような絵をイメージ している。
実際、展示販売会でも「こ れ、本物の絵の具じゃない の?」という来場者の声が多数 あったそうだ。
宮城さんの目標はアーティ ストとして生計を立てるこ と。「有名なアーティストになっ て生計が立てられるように なったら、他のいろんな障がい 者にも夢を与えられると思っ ています。だから多くの人に絵 を見てもらえて、ほめてもらえ るのがうれしいですね」と語る。
作品を展示・販売する場が あれば、在宅アーティストにな れる可能性がある。そのため、 ドアレスアートオキナワでは、 展示販売会を含むさまざまな イベントを行っている。
「その売上自体が彼らの直 接的な活動費やモチベーション にもつながる。そのサイクルを もっと強化していけば、アート を通した自立支援にもなる」 と呉屋さんは力を込める。
他にないものを生み出す力
昨年、ドアレスアートオキナ ワでは、展示販売会を2回とシ ンポジウムなどを開催した。
ドアレスアートの活動に関 して、呉屋さんは次のように語 る。
「アーティストさんたちの作 品が売れて、本人が喜んでいる 様子とか、継続して応援してく れるお客さま方の声をいただ くとやりがいを感じる」
ドアレスアーティストの中に は、自分の作品が展示されたこ とや作品が売れるということ に感動し、涙を流す人もいると いう。ドアレスアートの経験を 通して、アーティスト自身に とっても貴重な成功体験とな るのだ。
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呉屋さんと宮城さんに、ドア レスアートの可能性について聞 いてみると、次のような答えが 返ってきた。
「アートにかける才能ってい 障がい者アートをもっと身近に うのは、沖縄はすごく多彩。こ れは健常者のみならず障がい 者にも言えます。企業さんに認 知してもらったり、多くの人に 知ってもらうことでドアレス アーティストたちが少しずつ歩 み始めているのも実感していま す」(呉屋さん)
「今の時代って良くも悪くも 個性的でありたいというか、他 の人が持っていないものを持っ ていることがカッコよかったり する感覚ってあるじゃないです か。そういうものを生み出せる のがドアレスアートだと僕は 思っています」(宮城さん)
現在、本島北部で開催中の やんばるアートフェスにも参加 しているドアレスアートオキナ ワ。今後の活動に期待したい。
(元澤 一樹)
「やんばるアートフェス2022-2023 シマを繋ぎ シマに響く」
日時:~4月9日(日)11:00~17:00
入場無料
※メイン会場・大宜味村立旧塩屋小学校を含む複数会場は、金土日祝のみ開館
ドアレスアートオキナワ
写真・村山 望