「表紙」2023年09月14日[No.2001]号
技術とアイデアを 喜んでもらえることがやりがい
読谷村長浜の自宅で、着物をリメイクした衣類を仕立てている知花タカ子さん。洋裁 歴60年以上の職人だ。看板も出ていない工房だが、高い技術と古い素材同士を組み合わ せるデザインが好評で、知人や近隣の人々を中心に愛用者が増えてきている。職人とし ての半生と、はつらつと仕事に取り組む姿を紹介する。
「このワンピースは、私が 20 代の頃に、 90 代だった親 戚のおばあさんからも らった芭蕉布をリメイクし たもの。沖縄戦の戦禍を 逃れた、貴重な戦前の芭 蕉布です」
知花タカ子さんの工房 を訪れると、手がけたワン ピースを身に着けて披露 してくれた(写真参照)。 芭蕉布とクンジー(紺地、 濃く藍染めした布地)を 組み合わせた一着。色合い の異なる生地を大胆に配 置しながらも、全体は上 品な雰囲気にまとめられ ている。クンジーも元は自 身の母親の着物であり、 思い入れが強いものだ。
和装・琉装が日常的で なくなった現在、思い入れ のある着物が押入れに 眠っている、という人は少 なくない。知花さんのお客 さんの多くは、古い着物に 新しい命を吹き込もう と、持ち込みでリメイクを 依頼するそうだ。
20歳で洋裁の道
昭和 17 年生まれ、本部 町並里出身の知花さん。 きょうだいが多かったた め、「嫁に行く時、ハンカチ 一枚持たせてもらえなかっ た」とかつての暮らしを振 り返る。このような家庭 環境で育ったので、手に職 をつけたいという意識が 強かったそうだ。
アルバイトをしてためた お金で、那覇市内の洋裁 学校に通った後、縫い子と して働き始めたのは 20 歳 の時。沖縄市の「モード洋 裁店」に就職し、3人の子 どもを育てながら約 40 年 勤めた。洋裁学校の卒業 式で、当時の校長が語っ た「技術は使えば使うほ ど宝になる」という言葉を 励みに仕事を続けてきた と教えてくれた。
リメイクに力を入れ始 めたのは、自宅で細々と仕 事を受けるようになった 約 15 年前からだ。
アイデアは細部にも
洋服のデザインで重要 なのは「襟と袖のつき方」 だと言う知花さん。テレビ を見ていても「襟や袖はど んななってるかね〜?」と 出演者の服装ばかり気に なるのだとか。自身の仕事 では、一着を作るまでに何 度か仮縫いし、統 一感が出るように 形状を検討して いる。
「完成した服を 見たお客さんが 『このアイデアは どこから出てく るの?』と喜んで くれるのがうれしいです」
そう仕事のやりがいを 話してくれた。お客さんの 好みや普段の服装を聞い たり、コーディネートを提 案する時間も、服作りに 欠かせない要素として大 事にしている。何度か工房 に足を運んで、知花さん と話し合いながら完成さ せる、というイメージで オーダーしてほしい。時間 をかけることで、自分だけ の一枚を手に入れることが できるはずだ。
(津波 典泰)
知花タカ子さんの工房
読谷村長浜174(自宅)
※長浜公民館近く、鳳バス「長浜公民館西」バス停後ろの家屋
※訪問やオーダーは時間に余裕を持ってお願いします
写真・津波典泰