「島ネタCHOSA班」2013年12月19日[No.1498]号
首里城の池、龍潭に足を運ぶたびに見かける、アヒルに似た不思議な鳥。外見が独特で正体が気になっています。この鳥について調べてください!
(那覇市 R・Nさん)
私の名前は「バリケン」です!!
龍潭の鳥の正体については、実は調査員も気になっていました。
何はともあれ、まずは現場の首里城へ。龍潭のほとりに赴くと、早速見つけました!池の周りで仲間と日なたぼっこしていたり、ひなたちと散歩していたり…。人をまったく恐れず、観光客にも「かわいい!」と人気ですが、「この鳥は、アヒル?何の種類だろうねえ」という声もちらほら。
鳥たちはちょうどアヒルぐらいの大きさで、体形も似ていますが、目の周りが赤く、体の模様も白だったり、白と黒のまだら模様だったりと独特です。
首里城公園管理センターに問い合わせると、この鳥は「バリケン」という名前だそう。しかしながら、公園で世話をしているのではなく、いつの間にか住み着いていたとの話。さらに、ある場所に、バリケンについて詳しい方がいると教えてもらい、調査員は引き続き沖縄市へと向かいました。
実は古株の家畜
その場所は、沖縄こどもの国の動物園。飼育係の大宜見こずえさんに話を聞きます。
「バリケンは、中南米原産の家畜ですが、沖縄には中国から古く15世紀頃に導入されたようです。首里城だけなく、ちょっとした池とか、県内のいろいろな場所にもいますよ。こどもの国の池でも見かけますね」
なるほど、家畜だからあんなに人なつっこいのですね。
「沖縄では、かんのんアヒルとも呼ばれ、呼吸器系の病気に効くということで食べられていたそうです。バリケンは飛べるので移動ができ、首里城などにいるのは、逃げ出して野生化したものでしょう。
普通は1、2羽でいることが多いのですが、龍潭には集団でいるので、居心地がいいのでしょうね」
なぜ龍潭はそんなに住み心地がよいのでしょう?
「人が近くにいるため餌が豊富で、隠れる場所も多く安全ということでしょう。おそらく金城ダムあたりまで行き来しているのではないでしょうか」
沖縄から日本へも
中国から沖縄に来たバリケンは、日本へも渡っていったそう。インターネットで調べたところ、全国300件以上の目撃情報を集めたバリケン情報サイト「バリコレ」を発見。サイトを運営する和歌山県立自然博物館の揖善継(かじ・よしつぐ)さんに電話をしてみました。
「バリケンのサイトを作ったのは、私の前任者のところにメールで問い合わせがあり、情報を集め始めたのがきっかけ。バリケンは見た目も大きく、普段イメージしている野生の鳥の姿と異なるので、『不思議な鳥を見た!』とファンになる方が多いようです。月に2、3回は写真が送られてきますよ。いわゆる『ブサカワ』的な魅力も人気の秘密みたいですね」
目撃情報を見ると、北は秋田まで分布していますね。
「一度住み始めると定着する傾向があるようです。観光牧場などで飼われているケースもありますね。
沖縄だと首里城や金城ダムのほか、大宜味村の海岸、うるま市、離島などでの目撃例が寄せられています」
沖縄から全国に広がったバリケンの輪。食用として持ち込まれたものが、逃げ出したりして各地で野生化しているのが実情のようです。
繁殖の数が限られているため、今のところ生態系に影響を与える可能性は少ないそうですが、もともとは家畜のバリケン。愛玩半分で飼い、持て余して放したりするのは考えもの。バリケンが迷惑者になることなく、周囲の環境とバランスのとれた関係を続けてほしいと願う調査員でした。
*バリケン情報サイト「バリコレ」
http://www.shizenhaku.wakayama-c.ed.jp/qa2-baricol.html