「島ネタCHOSA班」2014年05月22日[No.1519]号
魚のセリに興味があるのですが、僕は「セリ権」というものを持っていないので一度も見たことがありません。代わりにどんな様子かリポートをお願いします。 (浦添市 30代・カタカシ兄貴)
魚のセリ見てみたい!
そうですよね、海に囲まれている沖縄といえど、実際に水揚げやセリの様子を見たことがある人は少ないですよね。それでは調査員が代わりにリポートをしてさしあげましょう!
30年以上続く定置網
セリに参加するために必要な「セリ権」は、飲食店や鮮魚店のバイヤーが持っているそうです。今回、同行させていただくのは、宜野湾ゆいマルシェ内にある「鮮魚と魚の唐揚げ 琉球」のオーナー料理人、渡久地隆道(りゅうどう)さん(27)。なんと20代前半の頃、まだ日本食の進出がほとんどなかったミャンマーで創作寿司(すし)屋を開業・成功させたやり手の好青年です。
渡久地さんと向かったのは、読谷村の都屋漁港。読谷村漁業協同組合が主催する「海人(うみんちゅ)体験」で迫力ある漁の様子を間近に見られるということなので、乗船させてもらいました。港から2・5㌔㍍ほど離れたところに設置されている仕掛けを目指して午前7時、出航です。
読谷で30年以上続く伝統漁法は定置網漁。360㍍×60㍍で水深40㍍の県内最大の仕掛けです。捕れる鮮魚はミジュンやグルクマー、ガーラ、シジャー、カマサーなどの近海魚。そして驚くなかれ、美ら海水族館のあの大きなジンベイザメはこの読谷定置網に入っていたものだったんです! 当日出くわした漁師さんは、おそらく一人残らず一緒に記念撮影をしたことでしょう。
「今日はピーク時の30%くらいかなぁ」と渡久地さん。自然を相手にしているだけに漁獲量に変動があります。僕らは海や命への畏怖の念を忘れてはいけませんね(でも本当は迫力満点の写真がほしかった!)
男の駆け引き十数秒
セリは午前10時ぴったりにスタート。その日水揚げされた鮮魚が木箱に入れられて並び、重量が記載されます。市場によって方法は異なりますが、都屋漁港ではシンプルに1㌕単位の値段を淡々と発していくスタイル。
例えば、200円台でセリが進んでいる時に「50」と言えば250円。その時点で「300」と言えば300円台で進んでいきます。目安ですが、3秒も間が空けば落札、といった具合でした。60回の値付けに掛かった時間はわずか13分!1回あたり13秒。一瞬の見極めと掛け声で決まるそのスピード感たるや、男がほれるカッコ良さ。
渡久地さん、セリで駆け引きはあるんですか?
「駆け引きというより、僕は地元のお客さんを相手に商売をしているので、なるべく安く落札する必要があります。なのでホテルなどの大きいところのバイヤーと競いそうになると、潔く引いたりすることはあります」
魚を選ぶポイントは?
「スーパーなどで魚を選ぶ時にも使えると思うんですけど、まずは目が濁らずに透き通っているか。そしてエラの裏が鮮やかな色をしているか。腹のハリが良ければこれも新鮮な証しです」
◇ ◇
セリを終え、宜野湾市大山の渡久地さんの店へ。漁師の努力、バイヤーの目利きによって運び込まれた鮮魚が海鮮丼となってお店で提供されます。魚をそのまま購入することも可能です。その日に捕れた近海魚を中心に10種類も丼に乗って700円。セリの様子を思い浮かべながら食すと、おいしいさ倍増でした!