「島ネタCHOSA班」2017年02月02日[No.1658]号
「オニササ」「オニポー」「オニコロ」って知っていますか? 鶏のササミフライ、ポーク、コロッケの揚げ物におにぎりを載せて伸ばした軽食で、石垣島のとある総菜店の発祥だそうです。誕生秘話が知りたいです。石垣島まで出張取材できませんか。
(宜野湾市 B級グルメガチオニさん)
勝手にセルフから、「オニササ」!?
離島編第二弾は石垣島取材決行! 調査員は、「オニコロ」などの発祥のお店とされる知念商会を訪ねました。地元客や観光客でごった返す店内に、種類豊富な弁当と総菜、おにぎり、日用雑貨も並べられています。
今しもお客さんが「オニササ」を買っていきます! ショーケースから勝手に取り出したおにぎり、鶏のササミフライをビニール袋に入れて、レジで会計を済ませると、なんとフライにおにぎりを載せて伸ばしています。これで出来上がり! いわばセルフサービスシステムなんですね。
お客さんの手助け
「オニササ・オニポー・オニコロは偶然の産物ですよ」。答えて下さったのは、社長の知念功さん(66)と常務の秀子さん(64)。
秀子さんによると、1981年5月、次男が生後3カ月のころに夫婦2人でお店を開いたそう。保育料を払うのももったいなくて、首も座らない赤ちゃんを抱っこして総菜を作りレジに立ち、合間に母乳を与えていたそうです。店内は、いつも昼食を買いに来たお客さんでいっぱい。
「それまでは、お客さんにおにぎりと総菜を別々にビニール袋に入れて渡していました。ある日、お客さんの一人が『あ、いいよ。自分でビニール袋に入れるから』と言って下さり、おにぎりと総菜を同じビニール袋に入れたのです」
お客さんが始めた”勝手にセルフサービス“が原点だったのですね。
「そうなんです。350万円の借入金を元手に始めたお店です。もう、必死でした。そんな私たちの姿を見かねてくれたのでしょう。『ビニール袋に入れるぐらいは』と、お客さんが手助けしてくれたのです」
当時、お客さんが来店するそばから売れ続ける揚げ物を天ぷら鍋一つで賄い、こまめにご飯を炊いては握り、熱々のおにぎりを提供していたと、功さんはいいます。
高校生がネーミング
なぜ、揚げ物に載せたおにぎりを伸ばすスタイルに? せっかく握ったおにぎりがもったいない気もします。
「おにぎりと揚げ物を一つのビニール袋に入れずに、別々に召し上がるお客さんもいますよ。圧倒的に多いのは、一つのビニール袋に入れる派。私共がおにぎりを手で伸ばしてくださ〜い! と言っているわけではないのです」
誕生秘話は、"勝手にセルフ"を始めたお客さんの手にあったのですね。ネーミングも面白いですね。
「八重山農林高校の生徒さんたちが呼び名をつけていたようです。さらに同校の郷土芸能部が、ある大会で優秀な成績を収め、那覇のテレビ局が取材に来たとき、パワーの源を尋ねたキャスターの質問に、『オニササ!オニポー!オニコロ!』と答えたことから広まったと思います」と、功さん。
現在、ササミフライは専用のフライヤーを用いているそう。
揚げる、売れる、揚げるの繰り返しで、こまめに調理しているのが見て取れます。秘伝のレシピで売れ筋の「おにぎりジューシー」も、温かいうちにふりかけを掛けないと味がしみないため、熱いうちに握って即、店頭に並べています。
知念さん夫婦が今、なによりうれしいのは、島外で就職した人たちが家族や子どもを連れて帰省した折に、「この味が懐かしいよ」と立ち寄ってくれること。
"勝手にセルフ"から生まれたオニササスタイルは、島の人々が作り出した優しさの形なのだと実感した調査員でした。