「島ネタCHOSA班」2017年11月23日[No.1700]号
11月2日付の「うちなーものづくり今昔」で、エレキ仕立ての三線が登場していましたよね。どんなものか興味があるので、発明者さんも含め、詳しく紹介してください!
(那覇市 エレキ照屋さん)
エレキ仕立ての三線!?
エレキと三線。意外な組み合わせではありますが、何だか格好よさそうな印象も。うんうん、さっそく見に行ってみましょうね〜。
独学で工夫し開発
というわけで、調査員は浦添市西原の「天久三線工房」へ。この工房の主が、エレキ三線を発明した天久博俊さん。
工房内には、天久さんが制作した三線がズラリと並びます。その数は、なんと約50種にも及ぶそう。
「研究用にいろいろ作りました。一つ一つ、全部違っていますよ」と笑う天久さん。
一見したところ、一般的な三線と変わらないようにも見えますが、よく見ると──。チーガー(胴)の部分に、ツマミが取り付けられています。ツマミの数はまちまちですが、多いものでは5つも。天久さん、これは?
「それはミキサー。複数あるツマミはそれぞれ、チーガーの内側と外側に取り付けた小型のマイク、ボーカル用のマイク、CD・スマホからの外部音源などに対応していて、アンプに出力する音量を自由に調節できます」
おおっ! でも、コードが見当たりませんが、どうやってアンプに音を伝えるのですか?
「有線で伝えることもできますが、ワイヤレスで飛ばすこともできます」
うーん、なかなかハイテク! ここで、天久さんにエレキ三線による演奏を披露してもらうことにしました。歌も歌われるとのことで、ボーカル用のマイクを取り出した天久さん。
驚いたことには、マイクを棹(さお)に取り付けられるようなっています!
今回の演奏には、伴奏用にCDに録音した音楽を使用しましたが、タブレットやスマホ内蔵の音楽プレーヤーなども利用できるとのことで、スマホも棹に固定できるようになっているとか。その結果、たった1人で演奏しているにもかかわらず、バンドのような厚みのある音を実現。すばらしい!
それにしても天久さん、三線もすごい腕前。聞けば、祖父の形見の三線を独学で覚え、琉球民謡伝統協会新人賞を獲得し、師範まで登りつめたそう。 一方、天久さんが発明したエレキ三線も沖縄県優良県産品に選ばれました。「三線もそうだし、エレキ三線の制作もまったくの独学。だからこそ自由に工夫できてよかったんじゃないかな」と話します。
お年寄りを元気にしたい
実は、天久さんがエレキ三線を開発した背景には、デイサービスでの三線ボランティアの経験があるといいます。
「もともと福祉関係の仕事をしていて、20年ほど前に三線を始めて慰問もやるようになったんですが、1人でマイクスタンドを持ち込んでセッティングするのが大変だった。それで、1人でもステージがやりやすいようにとエレキ三線の開発に着手し、気が付いたらのめりこんでいました(笑)」
三線一本だと寂しいので、外部音源やボーカルマイクの音声を取り込めるようにとミキサーの数を増やしていきましたが、チーガーの中にコンパクトに収めるのに最も苦労したそうです。
「今は音もワイヤレスで飛ばせるので、演奏しながら自由に動き回り、お年寄りの側に行って、マイクを使って一緒に歌ってもらうこともできるようになりました。カラオケと違って、生演奏は相手が歌う速度に合わせることができるのが利点。認知症対策の音楽療法としても可能性があると思います」
エレキ三線の開発の裏には、そんな思いがあったのですね。天久さんの演奏するエレキ三線の音に、ますます温かいものを感じた調査員でした。
天久三線工房
☎098(874)1344