「島ネタCHOSA班」2018年07月12日[No.1733]号
直射日光が容赦なく降り注ぐ沖縄の夏。クバ笠(がさ)が大活躍の季節ですが、畑用・海用で形が違うと聞きました。興味があるので詳しく調べてください!
(那覇市 ローリング石嶺さん)
クバ笠、用途によって形が違う!?
クバ笠、農作業や海釣りで愛用している人、多いですよね。でも、形がいろいろあるというのは初耳です。
地域によっても異なる
というわけで、調査員は県内でも数少ないクバ笠職人・金城忍さんのもとを訪ねました。金城さんは、22歳の時に母方の家業であったクバ笠工房を継ぎ、20年以上にわたりクバ笠づくりに取り組んでいます。
さっそくですが、金城さんは何種類ぐらいのクバ笠を作っているんですか?
「県内各地で使われていたクバ笠の形を受け継いでいるのは本島型、久米島型、八重山型、与那国型。本島型にはハルサー用、ウミンチュ用があります」と金城さん。
地域によって形が違うんですね。さらに畑用、海用があるとは驚きです。金城さんは、伝統的な形を受け継いだ上記5種類に加え、ひと回り小さい子ども用・お土産用のクバ笠も製作。全7種類のクバ笠を製作しているそう。
では、それぞれの特徴を解説してもらいましょう。まずは、本島型です。
「これは、先代の工房で作っていたものを引き継いでいます。畑用は首里、海用は糸満で使われていた形です」
見比べてみると、畑用のほうが笠の高さが低く、形が大きいですね。
「ハルサー用は、日光をできるだけ遮るように浅く広い笠。対して、ウミンチュ用は風で飛ばされないように形は小さく、深くかぶれるように笠が高くつくられています」
なるほど、合理的です!
先人の知恵を後世に
続いて、久米島型。「知り合いのおじいさんがかぶっていたものを再現しました。ハルサー用ですが、たけひごが3本と簡素化されているのが特徴ですね」
一方、八重山型はたけひごが12本。こちらは、浅く広い形が印象的です。
これらとは形が大きく異なるのが、与那国型。他のものに比べると高さがだいぶ高く、かつ笠の頂点が平たく台形になっています。「この形は、サムレー(侍)がかぶっていた笠が原型だといわれています。琉舞でもこの形の笠が使われていて、サムレーが結っていたカンプー(まげ)が収まるようにデザインされているといわれています」
竹ひごの数も18本とダントツ。頂点を平たくするのも難しく、編み上げるのに他のクバ笠に対して約2倍近く時間がかかるそう。
「クバ笠は収穫したクバを乾燥させて使います。気候によっても異なりますが、乾燥には1カ月〜1カ月半かかりますね」
クバ笠づくりには、忍耐づよさも必要なんですね。
「クバ笠には、先人の知恵が詰まっています。キャップのように蒸れず、さらに水をはじくので雨除(よ)けの機能もあるんです」まさに沖縄にぴったりの帽子ですね!
クバ笠の継承には、意外な苦労も。「じつは、クバ笠についてはなかなか情報がないんです。戦争で文献や資料が失われてしまったんですね」と残念そうな表情を浮かべる金城さん。クバ笠職人もほとんど姿を消す中、「地域の方々や、与那国型では琉舞の先生に話を聞いたりして、復元しました」と話します。
金城さんの製作したクバ笠は、国際通りなどに店舗を構える「kubagasaya(くば笠屋)」で販売。観光客はもちろん、地元客が買い求めるケースも多く、インターネットで県外の農協や釣り人からの注文もあるそう。
沖縄の財産ともいえるクバ笠、ぜひとも後世に伝えていきたいですね。