「島ネタCHOSA班」2019年03月21日[No.1769]号
私の住む名護市の博物館は今年で開館から35年になるそうです。しかし建て替えのため、3月いっぱいで一旦閉館になってしまうのだとか。あのレトロな雰囲気の博物館が無くなってしまうのは寂しいので、名護博物館35年の歩みをぜひ調べてほしいです。
(名護市 ★てっちゃん★さん)
名護博物館 35年を振り返る!?
昔の民具ややんばるの生き物の剝製を間近で見ることができる「オープン展示」で有名な名護博物館。1984年3月に開館した施設は、名護市の名所であり、地域に住む方には親しみのある場所ですよね。味わいある展示が見られなくなってしまうのは確かに寂しいです。調査員はさっそく名護博物館に行ってきました。
市民が作った博物館
今回お話を聞いたのは、名護博物館の職員、伊良波凡子さんと村田尚史さん、そして博物館初代館長を務めた島袋正敏さんの3人。島袋さんは博物館開館前の1971年から名護市の教育委員会の一員として施設の企画や資料収集にも携わっていたそうです。
名護博物館の開館は、沖縄の本土復帰や海洋博覧会などを経て、地域が目まぐるしく変化していた時代。島袋さんは「昔の人々の暮らしの記録や資料が散逸してしまう危機感がありました」と話します。そこで、博物館の展示には、昔の暮らしややんばるの自然に現在を生きる人が「つながり」を感じられるような工夫を多く施したそうです。
常設展示の資料収集や展示作りは、大勢の市民が参加し進められました。島袋さんが特に印象に残っているのは、展示作りに協力してくれた地域の小学生たちのこと。「教室では問題児とされていた子どもたちが、博物館作りでは生き生きと活躍していました。なので、オープン時のテープカットはその子たちに頼んだんですよ」と島袋さんは話します。開館時に配られた冊子には、市民が関わってできた名護博物館であることを示すため「ぶりでぃ」(群手、「みんなの手」の意味)というタイトルがつけられました。この「ぶりでぃ」という言葉は、その後も名護博物館のあり方を表すキャッチフレーズとなっています。
見どころはここ!
今月いっぱいで現在の常設展示が終了してしまう名護博物館。建て替え前に訪れたい、という読者もいると思います。3人に博物館の隠れた見どころを教えてもらいました。
「1階展示室の壁に注目してください」と村田さん。言われてみると、展示物後ろの壁はカラフルな色彩のグラデーションで塗られています。島袋さんによると、やんばるの季節や花々を表現してこの色になったということですが、このような色合いで壁を塗装している博物館は全国的にも例を見ないそう。当初は関係者も驚きの配色だったようですが、展示物や照明とは見事に調和しています。伊良波さんも「35年も前に作られたものですが、この壁のおかげで展示がすごく写真映えするんです」と話します。
展示用の設備や、来場者が休憩することのできるベンチなどには、やんばるの木材を使用。博物館の関係者が山に入り、切り出してきたものもあると言います。また、展示されている剝製類は、生きている時の様子がわかるようにポーズをつけて展示することにこだわっています。展示の配置もリアルなので、過去には館内に野良猫が侵入し、鳥の剝製を盗んでしまう事件もあったとか(!)
一つ一つの展示品に関わった人のエピソードが垣間見える名護博物館。現在、伊良波さんや村田さんは新博物館の企画にも取り組んでいます。市民が参加して作られる博物館のコンセプトは、リニューアル後もきっと引き継がれることでしょう。ですがその前に、現在の博物館の様子もぜひ目に留めておいてください。
名護博物館
名護市東江1-8-11
☎︎ 0980(53)1342
開館時間 10時〜18時
休館日 月・火曜、祝日(3月21日)
施設のリニューアルのため、現在の常設展示室は3月いっぱいで公開終了となります。今月中は常設展示室を無料で開放しています