「島ネタCHOSA班」2019年07月18日[No.1785]号
沖縄市にある郷土博物館では、職員の方々が土器を作っているそうです。どんな土器をどうやって作っているんでしょう。その目的は? いろいろと気になるので、ぜひ調べてみてください。
(沖縄市 一番街原人)
作って学べる沖縄の土器!?
土器ですか。教科書で見た縄文土器をすぐに思い浮かべてしまった調査員ですが、実際はどういうものなんでしょう。現代でも作ることができるのでしょうか。早速、沖縄市立郷土博物館へ行ってみましょう!
当時の作り方を再現
「うちでは来館者向けの学習プログラムとして土器作りを行っています。作る土器はどれも沖縄県内で出土したものを元にしているのですが、最後の焼きの工程まで土器作りを体験できるのは県内だと当館だけですよ」
沖縄市立郷土博物館に着くと、学芸員の川副裕一郎さんが土器作りについて説明してくれました。郷土博物館では、研究者の比嘉賀盛さんの指導のもと学芸員の皆さんが土器作りを学んでおり、子どもから大人まで来場者を対象にした土器作り体験も提供しています。
再現するのは、主に縄文時代の貝塚から出土される土器。川副さんによると、土器を実際に作るという作業は、当時の人々の生活を知る上でとても重要な手段となるそう。体験学習のプログラムでも、材料の土の配合、成形や装飾の方法、屋外での野焼きなど、3500〜3000年前の環境を想定して土器作りを行っており、当時の人類の生活をイメージできるようになっています。それだけでなく土器を使って実際に、おかゆなどの調理もしているのだとか。土の配合や、成形、野焼きの条件が良かった土器であれば、鍋・食器としてきちんと機能するそうです。郷土博物館で比嘉さんが作成したものの中には、20年以上使用されている土器もあるといいます(!)。
荻堂式土器を作ってみた
さらにいろいろ質問しようとすると川副さんが「僕がいろいろ話すより、実際に作ってみた方が感じることが多いですよ」と実際に土器を作ることを提案してくれました。
今回作るのは、「荻堂式土器」というタイプの縄文土器。北中城村の荻堂貝塚などから出土しており、飲み口と側面にある突起と周囲の文様が特徴です。クチャ(本島中南部で見られる泥岩)と川砂、そして適度に水分を配合した粘土を手びねりで成形していくのですが…。うーん、砂が混じった粘土は硬く、成形が難しい。調査員が苦戦していると「博物館では、テーブルなどまっすぐな面を持つ台で作業していますが、昔の人は膝に抱えるような体勢で作っていたはずですよ」と補足します。作業台などが無かった時代は土器の形を整えるのはさらに困難だったかもしれません。
ある程度成形できた土器は、貝殻やユウナ(オオハマボウ)の木片を使い表面を滑らかにしていきます。これらの道具も当時の生活環境を推測し使っているとのこと。ユウナの木片は水にぬらすと粘り気を出すので、土器をなでつけるのに使いやすいと感じました。
荻堂式土器の特徴である突起を付け終えたら、その周辺に叉状(さじょう)工具と呼ばれる竹製の道具で模様を付けていきます。ただ穴を開けているだけにも見えますが、強弱をつけて模様がつけられており、「ここにも何か意味があったのでしょう」と川副さんは話します。
そうして何とかできあがった調査員の荻堂式土器。実際に貝塚から出土したものと比べてみると、側面が分厚くてかっこよくありません…。しかし、実際の荻堂式土器がかなりの技術・工夫を持って作られていた、ということはリアルに体験できた気がします。
沖縄市立郷土博物館では、太古の人々の暮らしに思いをはせながら、土器を作る講座や展示を開催予定です。皆さんも土器作りを体験してみませんか!