「島ネタCHOSA班」2020年01月23日[No.1811]号
豊見城市内に「古代小麦」で作ったパンを売っているお店があるそうです。古代小麦ってどんな小麦なんでしょうか。
(那覇市 パン好きパンダさん)
「古代小麦」から作ったパン!?
古代小麦って、どんな味がするのか気になりますね。さっそく調査開始です!
9千年前の姿残す
調査員が訪れたのは、豊見城市役所そばの「シンプルパン」。代表の西村美保さん、誠さん夫妻が出迎えてくれました。
同店のこだわりは、食品添加物を一切使わず、完全無添加のパンを手作りしていること。天然酵母で焼き、原則的に卵・乳製品、油脂類は使いません。
季節やその日の状況によっても変わりますが、お店には10種類前後のパンが並び、そのうちの約半数が古代小麦を使ったものだそう。
「古代小麦って何ですか〜?」と質問する調査員に、「まずは『スペルト小麦』と呼ばれる古代小麦100㌫のカンパーニュ(丸型の田舎風パン)を食べてみてください」と誠さん。
差し出されたパンを口に含むと―。豊かな香りがふわりと漂い、しっかりした歯ごたえが感じられるパン生地をかめばかむほど奥行きのある味わいが広がっていきます。
「古代小麦は、人類の手によって品種改良が行われる前の姿を残した麦の原種です」と誠さん。いくつかの品種がありますが、代表的な品種であるスペルト小麦は、なんと約9千年前の姿を残しているといいます。
美保さんが古代小麦の魅力に目覚めたきっかけは、スペルト小麦のビスケットのレシピを試してみたこと。「力強い独特の風味と香りに驚きました」と話します。ちなみに、この「喜びのビスケット」はシンプルパンの定番商品になっています。
スペルト小麦には良質なタンパク質、必須アミノ酸など体にとって有益な栄養素が豊富に含まれているそうですが、特筆すべきは、小麦アレルギーがほとんど出ないといわれていること。発症者の症例には個人差もあり、医学的な立証は難しいようですが、ヨーロッパでの過去30年間の経験値では、小麦アレルギーがある人の85〜90㌫は発症しないのだとか。これは朗報ですね。反面、収穫率が低く製粉効率が悪いため、普通小麦の4〜5倍と価格が高くなってしまうのがデメリットです。
県内で栽培の試みも
現在、同店ではドイツ産スペルト小麦を使用していますが、ゆくゆくは県産の古代小麦でパンを作りたいという思いがあり、南風原町内のシンプルパン農園で試作しているとのこと。
「古代小麦は厚い被殻を持つため害虫に強く、一部の品種では穂先に毛が生えているため、鳥害も免れます。農薬や化学肥料を使用せずに栽培が可能です」
水やりやかんがいも必要なく、雨水だけで栽培が可能。3種類の古代小麦を作付したうち、スペルト小麦は成長が普通小麦よりも2カ月ほど遅いため、梅雨の影響で全滅してしまいましたが、エチオピアンブルー、カムット小麦は収穫に成功したそうです。
収穫後、製粉までの工程に必要な器具類の不足、流通ルートの確立など課題も残りますが、誠さんは「古代よりエチオピアで受け継がれたエチオピアンブルーは、シンプルパン農園ではパン作り、糸満市の農水苑・虹ではみそ作りの取り組みが行われ、その他国頭村などで栽培されています。規模はまだまだ小さいのですが、可能性を信じ、世界に通用する沖縄ブランドと6次産業を目指しゆるやかにネットワークを広げています」と熱意を燃やしています。
近い将来、県産古代小麦のパンが食べられるようになる日が来るかもしれませんね!
シンプルパン
豊見城市上田552番地5宜保ビルB号室
10時〜18時(売り切れ次第終了)
水曜・日曜・祝日定休
☎080(6494)5525