「島ネタCHOSA班」2020年02月06日[No.1813]号
私は吹奏楽部でトロンボーンを吹いています。音楽の先生が「沖縄のトロンボーンはすごいんだよ」と教えてくれました。何がすごいか詳しく調べてくれませんか?
(ボントロYuiさん)
沖縄のトロンボーンはすごい!?
今回のネタはトロンボーン。楽しい取材になりそう!
「神の楽器」大合奏
調査員が目を付けたのは「沖縄トロンボーンアンサンブル」。沖縄のアマチュアトロンボーン奏者が年齢やジャンルを超えて集う団体です。
代表の與儀幸英さんは沖縄でトロンボーンの普及に全力で尽力しているとのこと。電話をすると「演奏会前日練習と演奏会を見に来たら?」との誘い。さっそく1月10日の夜、前日練習を見学しました。
演奏していたのは、調査員の足音や吐息も聞こえそうなほど静かな楽章。時おり響く壮大なff(フォルテッシモ)に魅せられます。幅広い年齢層のメンバーが奏でる美しいトロンボーンの音色の中心で與儀さんが指揮を振っていました。
翌11日、てだこホール小ホールで「沖縄トロンボーンアンサンブル第19回演奏会」が開催。会場では「トロンボーンは大人の男の人の声と音の高さが同じ。ハーモニーの美しさなどから『神の楽器』と呼ばれていた」と紹介。続いて「トロンボーンアンサンブルは4本で演奏される4重奏『カルテット』が基本。今回演奏する大人数での演奏が見られるのは全国でもまれです」との説明がありました。おっ、今回の謎を解く鍵が出現か? 調査員は、さらに真相を探るべく1977年のアンサンブル結成当時の話を與儀さんにじっくり聞くことにしました。
與儀さんは琉球大学音楽科の卒業生。教員試験に合格後、前原高校に勤務していたそうです。在米の姉から「アメリカに勉強に来ない?」と誘われたのをきっかけに、教員を辞め、74年にイサカ大学院の音楽科に入学。
トロンボーンでアメリカ留学したのは県内初。今でこそ留学は珍しくない話ですが、当時は「変人」扱い。與儀さんは、恩師や周囲の人、関係機関から「『アンポンタン』などとあきれられた」と苦笑いします。
留学先ではマイナス30度という極寒の気候の中、全て英語で行われる講義を帰宅後に復習し、睡眠時間1日平均2時間という学生生活を送ります。
「勉強をしすぎて腰が痛くて痒くて。かいたら体の皮がはげてボロボロ落ちた(笑)。医者に見せたら『前例がない』と大騒ぎされてね。学校は病休でもレポートを免除してくれなくて、本当に辛かった」と振り返ります。
米国から楽譜直輸入
「当時、国内にトロンボーンアンサンブルの楽譜がほとんどなかった。だから、大学院で音楽教育修士をとって帰国時に、『ロバートミュージックカンパニー』に電話をして専売特許権を交渉した」
何も後ろ盾がない一人の若者に、先方はあきれながら交渉を却下。しかし最終的に「船で3週間はかかるけど、送料は無料でいい」と承諾にこぎつけました。それ以後20年間、與儀さんは毎月のように楽譜を注文したといいます。
「日本の大学より與儀さんの楽譜の方が多いかも」と話すのは、元東京シティフィルハーモニックオーケストラ・バストロンボーン奏者の﨑原圭太さん。「今はそうではないはずよ」と與儀さんは照れますが、與儀さんが単身アメリカに渡り、帰国後、楽譜を購入し続けたことが沖縄のトロンボーンアンサンブルの発展につながったのですね。與儀さんの苦労に感謝しつつ、コンサートの余韻にひたった調査員でした。
問い合わせ
☎090ー8762ー7194(平日18時以降・土日祝日のみ連絡可)
※今年のワークショップは7/31(金)〜8/2(日)糸満青少年の家にて。次の演奏会は10/11(日)てだこホール小ホール