「島ネタCHOSA班」2020年06月25日[No.1833]号
ラジオ沖縄開局60周年が間近ですね。ラジオ沖縄本社には、懐かしいオープンリールのデッキが今も大切に残されているという話を聞きました。この機会に詳しく調べてもらえませんか?
(那覇市 ラジオの子)
ラジオ沖縄に昔ながらのデッキが?!
読者からの調査依頼のメールに、オープンリールのデッキとは、これまた懐かしい…と思い出に浸っていた昭和生まれの調査員。しかし、平成生まれの調査員仲間から衝撃の一言。「あのー、オープンリールって何ですか…?」
ガーン……これは、若い世代に過去の歴史と伝統(?)を伝えるためにも、ぜひとも調査しなければなりせんね!!
オープンリール
さて、調査の前に、年若い読者の皆様のために解説を。
今の時代は、音声データはパソコンやスマホのメモリーに記録するのが当たり前ですが、その前はCDやMD(ミニディスク)といった光学ディスク、さらにその前は磁気テープが使われていました。
カセットテープには、四角いカートリッジの中に、くるくる巻かれた磁気テープが収納されていますよね。カセットテープが登場するよりさらに前の時代には、テープを収めるカートリッジがなく、テープを巻きつけた軸(=リール)をむき出し(=オープン)の状態で録音・再生デッキにセットして使っていました。これを「オープンリール」と呼びます。
扱いが難しいこと、高価だったこともあり、オープンリールのテープやデッキは一般家庭には普及していませんでしたが、かつてのラジオ局では欠かすことのできない機材だったのです。
手間はかかったけど…
「他県のキー局などではもう目にできなくなっていて、ラジオ沖縄に研修に来ると『博物館で見ました!』と歓声を上げるみたいですよ(笑)」と話すのは、制作報道局長の小磯誠さん。
1987年入社で、アナウンサーとして活躍してきた小磯さんは、オープンリールの機材を現役で使っていた世代。スタジオに置かれているデッキに、慣れた手付きでリールをセットしてくれました。
リールから直接テープを引き出し、ヘッド(テープの内容を読みとる部分)に通すのは慣れないと難しそうです。「今の若い人たちは習ってないのでできませんね(笑)」と小磯さん。
磁気テープには、粉末状の磁性体が塗られていますが、ヘッドに磁性体がこびりついてしまうため、使用前にアルコールで拭くなどメンテナンスも大変だった、と振り返ります。
「音声の編集時には、2台のデッキを使って1本のテープの音声を別のテープにダビングしていました。操作は手動で、インタビューの呼吸音を消すのがものすごく大変でした」。デッキには機材によって個性があり、微妙なタイミングの操作にはまさに職人技が要求されたそう。
一方、オープンリールの編集は「細かい音や微妙な間合いに注意するので、息遣いが感じられました」「今はパソコンの画面上で音声が楽に編集できますが、ちょっと冷たい感じもするかな」との意見もあるようです。
「当時は、取材にもソニーの『デンスケ』というオープンリールデッキを肩にかついで出かけていました。一日中持ち歩いていると肩が痛くなりましたよ」と小磯さんは苦笑します。調査員も持たせてもらいましたが、確かにずっしりとした重さです。ですが、この重みに、アナウンサーという仕事への緊張感と自負が感じられたに違いありません。
やがてカセットやMDなどに取って代わられ、オープンリールはラジオ業界から姿を消していったそうですが、ラジオ沖縄では、6〜7年頃前までは番組の制作に使ってたとのこと。
「パソコンに保存されたデジタルデータは一瞬で消えてしまうことがあるので、実はテープのほうが信頼性は高いんです。今も過去の貴重な音源のバックアップ用に活用することもあるんですよ」。なるほど、テープにはそんなメリットもあるんですね。
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オープンリールデッキやテープのほか、膨大な枚数を誇るレコードライブラリなど、古いものを大切に残す一方で、ラジオ沖縄では、災害時に強いFM波を使って放送する「ワイドFM」やインターネット経由で放送を聞ける「ラジコ」を導入するなど、新しい取り組みも行われています。開局から60年。昔ながらのものを引き継ぎながら、未来に向けて歩みを進めていくラジオ沖縄のこれからに期待しましょう。