「島ネタCHOSA班」2020年09月10日[No.1844]号
起業家を支援する沖縄市スタートアップ施設によく通っていました。比較的若い世代の中、二回りくらい上の先輩が熱心に起業準備をしていました。あいさつできずに会えなくなってしまったので、何をしていたのか知りたいです。
(中城村・30代女性 中村さん)
71歳でシャワー便利グッズを開発!?
沖縄市のスタートアップ施設に問い合わせした調査員。起業準備をしていたのは71歳の天野栄さんで、「シャワ・シャワー」という商品を開発していたと判明しました。これは、使う人の身長に合わせてシャワー位置を調整できるという優れもの。シャワーフックに取り付ければ、10㌢単位で位置を簡単に調節することができ、大人から子どもまで快適に使えると言います。
身近な課題から発想
調査員は、天野さんにお話を聞いてみることにしました。まず、開発のきっかけは?
「『子どもの身長に合わない』『赤ちゃんをお風呂に入れる時に大変』という声を聞いたことからでした。工事要らずで、既設のフックにシャワ・シャワーを掛けるだけなので、子どもでも扱いやすいと思います」
実際に使った方からはどのような反応がありますか?
「4人の子どもがいるお母さんから、お風呂の時に両手が使えて早く終えられると好評の声をもらっていますね」
もともとは金融関係のお仕事をされていたそうですね。悠々自適な日々を送っても良さそうですが…?
「このまま年金生活で何もせずに過ごすのも違うなぁと思いましてね。せっかくだったら課題解決させる事をしようと考えたんです。近い将来、自宅介護も増えてくるだろうし、シャワーの位置が子どもに合わないという声もありましたし、お風呂環境を充実させる商品が役に立つのではないかと思いました」
奮闘重ね実用化
開発にはどのような うよ 紆余曲折があったのでしょうか?
「アイデアはありましたが、素人だったので何からやればいいか分からない。直接行った方が早いと思って、関西のメーカーに出向きまして。しかし金型って高いんですね(笑)。予算やデザインイメージが合わずに頓挫してしまいました」
でも、次の手をすぐに打つのが天野さんです。
「その後にうるま市商工会に相談に行ったら、一般社団法人ものづくりネットワーク沖縄を紹介されまして。そこが設計〜加工までワンストップでやってくれるんですよね。おかげで3日で試作品が完成しました」
やっとの思いでできたシャワ・シャワー初号機。量産体制も構築し、あとはどう流通させるかという段階に…。
「この試作品を持って、コザ信用金庫主催の創業塾を受講して販売方法を学び、沖縄市のスタートアップラボラグーンでITの知識を深めました。沖縄市の産業まつりにプレゼン出展し、需要はあると実用化への手応えをつかんでいきました」
スタートアップラボラグーンの屋部辰朗さんは、天野さんの奮闘ぶりをこう振り返ります。
「天野さんは熱量が高くて、クラウドファンディングのぺージ作成や動画だけでなく、マーケティング分野の相談も積極的にされていました。営業リストを作成していて『これからここに行くんだ』と楽しそうに話をしている姿が印象的でした」。〝奮闘〟とは言えど、苦しみよりは楽しみの方が上回っていたのですね。
「ラグーンは、新しい事業を始めたいけど、どこから始めていいか分からないという人が相談できる場所です。一緒にスタートアップを目指しましょう」
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「人が困っているところにビジネスチャンスがあると思います。座右の銘は『次の一手』。常に先を見ておきたいですね」と語る天野さん。今は人生の第3章と話します。若者も追いつき追い越せ!!