「島ネタCHOSA班」2020年10月15日[No.1849]号
先日、ある方と名刺交換をしたところ、名刺に点字が印刷されていました。話を聞いてみると、沖縄県視覚障害者福祉協会が有料で名刺に点字を打ってくれるそうなのですが…。興味があるので調べてもらえませんか?
(那覇市 コスモ星丸)
自前の名刺に点字を印字!?
点字を印刷した名刺ですか。視覚に障害のある方にとっては、たいへんありがたい名刺ですよね。
調査員も自分の名刺に点字を打ってもらうことにしました。
1枚10円で印字
電話で聞いてみたところ、手持ちの名刺を那覇市松尾の沖縄県視覚障害者福祉協会に持ち込めば、2〜3営業日で点字を打ってくれるそう。発注は100枚単位、料金は1枚につき10円です。
というわけで、調査員は自分の名刺を100枚持って、同協会へ。手続きは2階の沖縄点字図書館で行います。
窓口で自前の名刺100枚を担当者に渡し、点字で印字してもらいたい情報を伝えます。スペースの関係上、掲載できるのは3行分。今回は所属、名前、電話番号を印字してもらうことにしました。
待つこと2営業日、完成した名刺を再び同協会で受け取りました。すると…。
名刺の紙の上に、点字の文字が凸状に押し出されていました!
点字印刷機
調査員は、沖縄県視覚障害者福祉協会の会長・知花光英さんに点字名刺について詳しく教えてもらうことにしました。
同協会は、昭和32年に認可された社会福祉法人。沖縄県に住む視覚障害者の皆さんが日常生活を送る上で生じるさまざまな困難を改善し、社会参加を支援するための活動や、会誌などによる情報提供を行っています。
外出時に同行するヘルパーの派遣、白杖歩行訓練、国家資格を有する視覚障害者スタッフによるはり・灸(きゅう)・マッサージ施術など、さまざまな活動を行っており、沖縄点字図書館もその一つ。
点字図書館ではボランティアの協力により利用者に貸出する図書の音訳・点訳も行っており、館内に点字印刷機も設置しています。
「点字印刷機を持っているので、名刺への印刷ができます。この機械がないと点字の印刷はできません」
なるほど、機械があることのメリットを生かしているわけですね。
「点字名刺は30年ほど前から行っており、離島も含め県内から月5〜6千枚ほどの注文があります。視覚障害者と接する機会の多い官公庁や介護・福祉事業者の利用が多いのですが、マスコミや一般の企業からの注文もあります。点字名刺をもらった人から口伝えで広まっているようですね」
知花会長は「視覚障害者が点字名刺をもらうと、非常にありがたい」と強調。点字が打たれていなければ、誰かに読んでもらったり、点字を打ってもらわなければならないため、手間がかかると言います。
ところで、点字はどうやって印刷しているのでしょうか。点字印刷にはいくつかの種類があるそうですが、同センターで採用している「エンボス印刷」の工程を職員の中本理子さんに説明してもらいました。
まず点字製版機で印刷の原版を作成。6個のキーを使い、点字を入力して原版に凸凹をつけます。できあがった原版に名刺を重ね、点字印刷機のローラーの間を通してプレスすると、原版の凸凹が紙に押し出されるという仕組み。
点字の名刺はインパクトがあるため、渡すと話のきっかけになったり、覚えてもらいやすくなったり…といったこともあるそう。点字名刺がもっと世の中に広まってほしいと思う調査員でした。