「島ネタCHOSA班」2021年12月23日[No.1911]号
最近、定年退職して昔のレコードを聞いています。レコードの愛好家や詳しい人の話を聞いてみたいです。探してくれませんか?
(那覇市 円盤好きさん)
県内のレコード愛好家を訪ねて
レコードですかぁ。いいですねー! 音楽好きな調査員にはたまりません。
世代超えて楽しむ
最初に向かったのは、北中城村にあるレコード喫茶&バー「ニュー・キタナカ」。こちらのお店にレコードを提供しているというレコード愛好家・坂晴紀さんが迎えてくれました。
「レコードはとってもいいですよ〜。約2〜3千枚ほどレコード持っていますが、特にEPレコードが好きなんです」と坂さん。
「最初に買ったレコードは、朝夕刊の新聞配達のアルバイトでためたお金で買ったレコード。長渕剛、ユーミン、ふきのとう辺りだったかな。レコードは、持っているだけでうれしい」と目を細めます。
8人きょうだいの7番目で生まれ、上のきょうだい達が聞いていた音楽を聞かされて育った坂さん。家では歌謡曲、流行歌などが流れ、今でもその頃の影響で60年代〜70年代の音楽が好きだそう。「あの頃の曲はわかりやすくて、ストレートに伝わってきますよね。グッとくるというか。情景も思い浮かぶ。聞いていて心地よいんです」
レコードを聞くのは圧倒的に夜派。ウイスキーと一緒に楽しむと、もう最高。「昔を思い出すし、ノスタルジックに浸れる。良きストレス解消。レコードは世代を超えて楽しめる。全国のレコード喫茶めぐりを楽しんでみたい」と目をキラキラさせます。
レコードは潤滑油
もっと話を聞いてみたい! と次に向かった先は蓄音機80台、レコード3万枚を持つ山城政幸さん。この40年、「医学写真研究所」代表の本業の傍ら、学校や老人ホーム、コンサートホールなどで何百回もボランティアで公演やコンサートを実施。世界で1枚しかないレコードや蓄音機も所有。
「私は国頭村出身なのですが、母親が『昔は隣近所に蓄音機あったよね〜』といい出したのが、はじまりです。近くの電器屋さんには蓄音機が売っていなかったから、仕事で本土に行ったときに古物店で蓄音機を購入しまして。そしたら蓄音機から流れるレコードの音に母親が涙を流して喜んで。それが私の原動力となった」とニッコリ。
山城さん自身もレコードの音に魅了され、口コミを主な頼りにヨーロッパやアメリカ、中国、台湾に出かけて1枚1機ずつコツコツ購入。全レコードのうち9割5分はLP登場以前のSP盤。「これね、ぜんぶ自分のおこづかい。月々の給料はすべて妻に渡しているから、それ以外のアルバイトで稼いだお金で買っているんです」とニヤリ。
「アメリカのビクターの工場にも訪問したし、国内のレコード会社が私の蓄音機を借りにきたこともあった。博物館の職員が訪ねてくることもある。レコードも蓄音機も生き物だから、1つ1つ個性が違う。私もあんないい音(声)が出したいと、合唱団に入ったこともあった(笑)。レコードがなかったら、私はもっと堅物の人間で終わっていたと思う。レコードがコミュニケーションの潤滑油になってくれた。私の所有するものを丸ごと誰かに譲りたい。誰か買わないかなぁ。博物館ができますよ」と山城さん。
1つの趣味がこんなにも人の人生を大きくつなげていくんだなぁ、と感動した調査員でした。
山城政幸さん