「島ネタCHOSA班」2023年10月05日[No.2004]号
名護市出身で北海道札幌市で暮らした版画家・眞栄田義次さん(1952~2017年) の遺作展が名護博物館ギャラリーで開かれます。作品の魅力と出身地での展示に尽 力した、関係者たちの取り組みを紹介します。
故郷の名護で開催。眞栄田義次さん遺作展
名護市田井等(旧・羽地 村)生まれの眞栄田義次(ま えだ・よしつぐ)さん。高校 卒業後に上京、鷹美術研究 所でデッサンを学んだ後、 1974年にテレビ番組「秘 密戦隊ゴレンジャー」の美術 スタッフとして勤務しまし た。 81 年、長野県美麻村で版 画家・吉田遠志さんと出会 い、伝統的板目木版画の技法 を学びます。 84 年、札幌に移 住し本格的に版画家として 制作活動を始めました。
作風を紹介
眞栄田さんの作品は抽象 的で繊細な表現が特徴です。 どんな内容を表現している のか、気になったので、眞栄 田さんの制作を手伝ってい た経験がある友人・宮田喜 代志さん(熊本県在住)に連 絡を取ってみました。宮田さ んが遺作展に合わせて作っ た資料から、少しだけ作風を ひも解きます。
多くの作品に共通するの は、観察に基づいた自然の表 現と、環境破壊を止めない現 代社会への憤りや懸念、未来 への希望などが組み合わ されていること。複数の 視点や感情が一枚の作品 に収まっています。特に 分かりやすいのは、宮田 さんが「原発シリーズ」 と呼ぶ作品群。いずれも 「薄っぺらな紙で造った ような構造物」が絵の中 心になっています。さま ざまな要素を込めつつ も、構図はシンプル。洗 練されたアイデアを感じ ます。
カラーで刷った作品か らは、沖縄の海へのこだ わりも見て取れます。青 〜緑に変化する色合いで 海を表現した作品があり ますが、寒冷で乾燥する 札幌でムラなく刷り上げ るのは簡単ではありませ ん。また、波の形状はスケッ チと考察を何度も重ねて描 いたそうです。
友人たちがサポート
遺作展は札幌と名護、2カ 所で行われます。眞栄田さん の没後、遺品整理をしていた 妻の由利子さんが、作品を発 見。「これを埋もれさせては いけない」と一念発起し、関 係者たちに協力を仰いだこ とがきっかけでした。
展示はまず札幌市北区の 「ギャラリー・エッセ」を会 場に先月 24 日まで開催。その 後、作品を移送し、名護博物 館ギャラリーでの展示が10 日(火)から始まります。
名護での展示に協力して いるのは、名護高等学校時代 の友人たちと、所属した美術 クラブの部員からなる「おび 会」の皆さん。打ち合わせに 同席すると、「学園祭で大き な穴を掘って、それを作品と した」「便器に花を生けた」な ど、若き日の眞栄田さんにつ いてインパクトのある話が 飛び出しました。皆さん昨日 のことのように楽しそう。眞 栄田さんの人柄にひきつけ られ、卒業後も 40 年以上続く 友情が、展示を支えているよ うです。
県外で活躍したアーティ ストの作品が故郷にそろう 貴重な機会です。ぜひ足を運 んでみてください。
眞栄田義次 木版画遺作展
会場:名護博物館ギャラリー(名護市大中4‐20‐50)
期間:10日(火)〜15日(日)
時間:10時〜18時(最終日は16時まで)
〈取材協力〉 名護博物館