沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.2032]

  • (日)

<< 前の記事  次の記事 >>

「島ネタCHOSA班」2024年04月18日[No.2032]号



 あちこちで見かけるヤールー(ヤモリ)。家の中にいる種類と外にいる種 類は違うのだ、と最近聞きました。ヤールーにも種類があるんですね。もう 少し詳しく知りたいです。 

( 沖縄市 たこぱん)

人の歴史と共にあり? ヤールーについて

 ヤールー、夜になるとうち の網戸にもやってきますよ。 そういえば今まで意識して見 たことはありません。知らな かったこと、いろいろありそう ですね。

 ヤモリの種類や特徴につい て聞こうと、調査員は元県立 博物館・美術館副館長の千 木良芳範さんを訪ねることに しました。人の暮らしとヤモ リの関係、という視点からも お話を伺います。

鳴くのは1種だけ

 現在沖縄島では5種類のヤ モリが確認されている、と千 木良さん。まず大事なポイン トとして、屋内にいるか、屋 外にいるか、という見方では、 種類の判別はできないと教え てくれました。種類ごとの生 息場所は隣り合い、重なってい るようです。

 前置きをした上で、家の中 や建物の周囲にいて、明かり に集まりエサを捕るのはホオ グロヤモリだと話します。「チ ッチッチ」という声で鳴くのは この種類だけなんですつて。

 「本土の人が沖縄に引っ越 してくると、ヤモリが鳴くとい うことに驚く。”沖縄あるあ る“として言う人がいますよ ね」

 楽しそうに話す千木良さん に、えっ、県外のヤモリは鳴か ないんですか? と反応してし まう調査員なのでした(本州 などに分布するニホンヤモリ は鳴かないそうです)。

 ホオグロヤモリに次いで、身 近にいるのはオンナダケヤモ リ。体に斑点があり、尻尾は 扁平。屋内にもいるのですが、 こちらの種類は光には集ま らず暗い場所を好みます。押 し入れなどを開けた時にさっ と逃げ出すヤモリがいたら本 種の可能性が高いそう。

 基本的に屋内に入ってこな いのはミナミヤモリ。家の庭 木など人の手が加わった樹 木、林にすんでいるので、身 近な種類といえるようです。 背中や尻尾に縞模様が入る 個体が多いです。

 以上3種に加え、主に北 部の山地林にすむオキナワヤ モリ、確認例は少ないのです がオガサワラヤモリもいます。

人の近くで7千年

 「人間が先かヤモリが先か、 と言われたら、沖縄にすみ始 めたのはヤモリが先ですよ」

 そう話す千木良さん。ヤモ リは琉球諸島に人が渡ってく る以前からいた生き物です。 前述した身近な3種も、も ともとは森などにすんでいた と推測します。人との距離が 近づいたと考えられるのは、 約7000年前から始まる 貝塚時代。人間が家を造り、 定住を始めた時代です。人の ライフスタイルの変化にヤモ リも適応した可能性がある そうです。

 最近ではヤモリのふんや、 電化製品内部への侵入が問 題視されていますが、家の周 囲の害虫を食べてるという ”功績“は見逃せません。都 市部でも、自然とのつながり を感じさせてくれる生き物で もあります。「あまり問題点 ばかり見ず、おおらかな気持 ちで接して」。千木良さんは、 自然との共生のヒントも与え てくれました。



このエントリーをはてなブックマークに追加


“人の歴史と共にあり?
「チッチッチ」という鳴き声が特徴のホオグ ロヤモリ。都市部でも見かけることのできる 種類です。東南アジアなど国外にも分布し ています
“人の歴史と共にあり?
千木良芳範さん
“人の歴史と共にあり?
オンナダケヤモリ。最初に発見された 場所にちなんで「恩納岳」の名がつい ています。ホオグロヤモリに比べると 見つけるのは難しいです
“人の歴史と共にあり?
ミナミヤモリは上記2種と比べると、 住宅など人工物に入り込まず、自然 の残っている地域で見られます
写真提供:村山望
>> [No.2032]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>