「表紙」2011年07月21日[No.1373]号
「こんにちはー」。県立美来工科高校の校門をくぐると、男子生徒が人懐っこく会釈してきた。校庭でおしゃべりを楽しむ女子生徒は、親切に案内してくれる。体育館からは、練習に打ち込む運動部の掛け声が響く。前身の中部工業高校から数えて創立48年、中部地区で最も歴史がある学校で、将来のエンジニアを夢見る生徒たちは、どんな日常を送っているのだろう。活気あふれる校内を、わくわくしながら取材に向かった。
スペシャリスト目指し挑戦
広々とした半戸外の作業室には、大小さまざまな機械が並ぶ。ゴーグルをした生徒たちが、拡大鏡をのぞき込みながら器用に操作している。別室では、整然と壁面に掛けられた工具が圧巻だ。
2クラスある3年生が取り組む課題は広い。プランター台やハンマーなどの身近な物から、毎年開かれる大会用の競技ロボット、本格的なエンジンを積んだゴーカートまでを、設計図を基に形にする。そのためには、溶接や研磨など、さまざまな技術が必要となる。3年間、コツコツと実習を繰り返してきた努力のたまものだ。
「3年生と1年生では、習熟レベルが段違い。実習が待ち遠しいようで、みんな熱心に取り組んでいますよ」と、担当教諭は紹介する。
原付バイクを解体し、エンジンの不具合を調整しているグループに話し掛けると、和気あいあいと楽しそうだ。「俺、家にバイク2台持ってる。とっても大事にしてる。整備も自分でするよ」と、自慢げに話す。学校でも家でも、機械と触れることが彼らの日常のようだ。
毎年秋に開かれる競技用のエコデンカー作りに取り組むグループは、パーツを手に真剣な議論を交わしている。サイズなど、規定された中での創意工夫が勝敗を分けるそうだ。
「材料を集めてくることから始めます。実習で余った素材はもちろん、工務店などを回って、交渉して材料を分けてもらうこともある。地域の皆さんとのつながりもできるし、いろいろ話も聞けて勉強になります」
教科書に載っていることだけではない、オリジナリティーも基礎あってのことだ。
☆
日々の実習で気を付けていることを生徒たちに尋ねると、まず挙げるのが「正確さ」だ。
「ミリ単位より細かい作業も多いから、慎重に進めないと失敗するし」。慎重過ぎて居残りしたこともあるけど、と笑うが、細部にこだわる姿勢が見える。そして、最も大切なことが「安全」だという。
「ちょっとでも気がゆるんだら、けがをしたり大事故になる。そのことはいつも考えて、服装にも気をつけます」。エンジニアとして芽生え始めたプロ意識も、3年間の授業で得たものだろう。
3年生は、全て男子生徒。クラスの雰囲気を聞くと、「バカなこと言ったりギャグやったり。男ばっかりだから気が楽」と話す一方、「機械科も女子が増えてきたのは良いこと」と後輩を気遣う。
全県に知られるスポーツの強豪校だけに、3年間部活に打ち込む生徒も多い。その忙しい時間をやりくりして、さまざまな資格取得に取り組む生徒が多いのも同校の特徴だ。放課後、試験に向けて操作を繰り返す、真剣なまなざしがあちこちの教室に見られた。
「機械を扱う仕事に就きたい」。シンプルな言葉に、秘めた情熱が伝わってきた。
編集・島知子/写真・照屋俊
沖縄市。昭和38年に創立された前身の県立中部工業高校から平成17年に現在の学校名に変更。生徒数922人(男子793人・女子129人)。機械システム科のほか、電子システム科、ITシステム科、自動車工学科、都市環境科、コンピュータデザイン科。就職率の高さと各種スポーツ競技の強豪校として知られる。