「表紙」2011年07月14日[No.1372]号
●「感謝の気持ち忘れないで」
女子バレーボールが盛んな那覇市内の小学校。年ごとに優勝校が変わる県内有数の激戦地区だ。識名小学校の児童で構成する「ドルフィンズ」。チーム結成11年目を迎える。2002年から朝子さん、光男さんが指導者としてかかわり、ここ数年力をつけ、各種大会で上位進出を果たす。03年に念願の地区大会初優勝を飾った。
チーム発足当初、創部者の教諭が転勤で監督不在となり一時存続が危ぶまれた。そこに中学高校時代のバレーボール経験者で「現役のママさん」プレーヤーとして活躍している朝子さんに白羽の矢が立った。
何度も固辞した。それでも世話になった教諭や父母から説得され「大好きなバレーボールを子どもたちと一緒に」と心を動かされ監督を引き受けた。
また、朝子さんには強い味方がいた。中学高校時代の競技経験者でシニアリーグの主力選手である光男さんの存在である。平日の練習は朝子さん。土日や祝日、試合・大会には光男さんがコーチとしてベンチワークを手伝う。
個性伸ばす指導
光男さんは「妻が技術的指導をすると、私は精神面の指摘。場面や状況に応じてはその逆もある」と話し、「いちばん大切なことは子どもの個性を伸ばすこと」と加えた。
朝子さんは7年前から5、6年生の部員を中心に交換日記を始めた。練習への取り組みから反省、試合内容や感想、その日の出来事、悩みなどをつづった。
「子どもたちの考えを理解し、練習や生活面に生かしたかった」とそれから互いが心を開き、信頼関係がより強固となり子どもたちに積極性が出てくるようになった。
朝子さんが監督を始めてから吉本家の活動状況が一変した。スケジュールは「子どもたちの部活動中心」。土日や休日は対外試合、各種大会で家を空けることがほとんど。家族への負担も重かった。
「家族には『申し訳ない』と思っている」と話し、「でも夫婦ともバレーが好き。夫の協力や理解があるからここまで続けられている」と光男さんへの感謝を口にし、「子どもたちのバレーに対するひたむきな態度や父母の協力が支えになっている」と表情が和らいだ。
小学生とはいえ、練習は厳しい。めまぐるしく攻守が入れ替わるバレーボール。一瞬の気の緩みが勝敗を左右することも。緩慢なプレーには監督、コーチをはじめ、練習を見守る父母からも大きな声で檄が飛ぶ。
「もう一回。もっと集中しろ」「腰が高い。足を動かせ」。同じ失敗を繰り返すとプレーを中断する。その瞬間、コート内の12人や周囲で練習を見守る下級生にも緊張感が伝わる。
一方で、生活面でも父母や教諭、先輩などへのあいさつを徹底。部室には「レッツスマイルプレー」の約束として「感謝の気持ちを忘れない」「自分で考えて行動する」「あいさつ、声を出す」など決まりごとが書かれたプレートが掲げられている。
朝子さんは「生活の基本であるあいさつやマナーを大事にしたい」と話し、「声を出すことによりチームプレーが確認でき、感謝や思いやりの心が生まれる」と強調する。
2時間余りの練習を終え、コートを離れると普段の優しい二人に戻る。子どもたちや父母と触れ合い、会話を交わす。「ドルフィンズの子どもたちはバレーが大好き。この子たちから元気をもらい、父母、OGに助けられている」と朝子さんと光男さんの表情に笑みがこぼれた。
二人は「目標は県大会優勝」と意気込みを示し「まだそのレベルではない。子どもたち、父母が心を一つにして戦っていきたい」子どもたちを見つめた。
編集・池原雅史/写真・島袋常貴
監督の教え試合に出したい
識名ドルフィンズ
2001年6月結成。部員3年生~6年生女子25人。練習日は火水金 午後4時30分から7時(冬は6時30分)、土日は練習試合、各種大会2011年5月の那覇地区大会で3度目の優勝。県大会ベスト8多数