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[No.1378]

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「表紙」2011年08月25日[No.1378]号

うちなー未来創る 1

熱血監督 伸ばそ 4(2011年08月25日掲載)

相撲で育む、思いやりの心
浦添てだこ相撲クラブ 幸地 剛監督 幸地 銀治コーチ

離島も含めると、相撲道場は沖縄県内に8カ所ある。日々切磋琢磨する小さな力士たちの目標は、全国大会が行われる両国国技館。幸地親子が指導する「浦添てだこ相撲クラブ」では、幼稚園児から中学生まで、一つのチームになって稽古に励む。厳しさの中にも、優しさがあふれ、先輩が後輩を教え、後輩が先輩をサポート。勝つことが一番ではなく、人を思いやる“精神”を鍛えている。

苦しさ乗り越え、”強い“男に

 浦添運動公園には、屋根、スタンド付きの立派な土俵がある。日が暮れた18時頃になると、学校の授業や部活などを終えた子ども達が集まり、稽古を始める。小さな力士たちの大きなかけ声、肌がぶつかり合う激しい音は、ランニングや散歩をしている人たちが振り返るほどに、公園内に響き渡る。

 ここで活動するのは、2004年に設立した「浦添てだこ相撲クラブ」。下は幼稚園児から、上は中学3年生まで約20人が、同じ土俵に上がり、厳しい稽古に励んでいる。毎年、全国大会出場者を多数輩出するほどクラブのレベルは高く、稽古にも熱が入る。

 指導するのは、沖縄県相撲連盟の理事を務める幸地剛さん。クラブを設立するために、役所を何度も訪問するなど尽力した方で、現在もクラブの指導に当たっている。充実した施設を眺めながら、「昔を考えると夢のような環境ですね。始めは息子と二人で、奥武山公園や中部農林高校など、土俵がある場所に出向いて練習していました」と、当時を振り返った。  

 剛さんは、伊江島で相撲クラブを開く伯父の影響を受けて、指導を始めた。第一期生でもある長男の銀治さんは、日本大学時代に世界大会ベスト8に入るなど、好成績を収めた。

 現在は、教員を目指しながら、時間が許せば、自らまわしを締めて土俵に上がり、父の精神を受け継ぎ子供たちの指導を行っている。子供たちと年齢が近く、兄貴的な存在でもある銀治さんの指導は厳しくもあり、温かい。

 「あいさつや努力することの大切さなど、自分が父から学んだこと、経験してきたことを伝えていきたい。子供としてではなく、一人の男として付き合っていきたいですね」と話す銀治さん。

 練習風景を見て気づかされるのは、子どもたちの礼儀正しさと、先輩、後輩に対しての思いやりの深さ。例えば、中学生が小学生のぶつかり稽古の相手をしたり、小学生の低学年の子が、その下の子の手助けをしたりと、お互いを助け合う姿が目に映った。それも指導者からの指示ではなく、子供たち自身が自発的に行動に移していた。

 「試合に勝つことが最終目標ではなく、人間力を養うことが一番。人に何かを教えることは大変難しいことです。先輩が後輩を教えることで学ぶことも多いと思います。相撲から学んだことをいかして、社会の役に立つ人間になって欲しいですね」と、チビっ子力士たちを見つめる剛さん。

 練習は試合形式よりも、基礎体力を付ける地道な稽古がメーン。年齢や体格も様々だが、どの子供にも共通して言えるのが、大人に「やらされている」のではなく、自らが率先して稽古に取り組んでいる点だ。それは彼らの相撲に取り組む純粋な目を見れば、一目瞭然。練習でうまくいかず、悔しくて涙を流す子供の姿もあった。

 土俵周りをトラックに見立てて、リレー方式で競争したりと、練習メニューも個性的。中でもユニークなのが、練習最後に行う声出し。性格も様々で、自分の気持ちを表に出せないおとなしい子供もいるそうだが、この練習をすることによって、度胸が付き、試合でも効果を発揮するそうだ。

 「あいさつも出来なかったおとなしい子が、相手の目を見て話せるようになりました。沖縄は球技が盛んですが、苦手な子もいる。相撲に取り組むことで、彼らに目標を与えたい」と語る剛さんにとって、子供たちは大切な「宝物」。

 「苦しい思いを経験した人は、人よりも優しくなれる。強くなるだけはなく、相手を思いやる気持ちを持ってほしい。彼らが大人になって一緒にお酒を飲むことが、今の楽しみですね」と話す、優しさに満ちた言葉が心に残った。

草野裕樹/写真・島袋常貴


相撲で育む、思いやりの心
相撲一家の幸地さん親子。中央奥が監督の剛さん。前列左から佑大さん、銀治さん、吾大さん=浦添市運動公園
相撲で育む、思いやりの心
後輩を教えることで自分も成長
相撲で育む、思いやりの心
チーム紹介 浦添てだこ相撲クラブ
 2004年創立。監督幸地剛、現在部員20人、練習日土、日(※平日もあり)、わんぱく相撲全国大会出場、2011年沖縄県中学校選手権大会団体優勝(神森中として)
 連絡先:090-1942-5767(幸地)
相撲で育む、思いやりの心
わたしの一言 幸地 吾大
「兄が勝った大会で優勝したい」
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