「表紙」2011年09月15日[No.1381]号
心・技・体すべてが大切
「おはようございます」「よろしくお願いします」「申し訳ありません」「ありがとうございます」。
授業は、「沖工訓練」と呼ばれるあいさつから始まった。整列して両手両足をピシッと揃え、45度に頭を下げ、姿勢を戻して相手の目を見つめる。その後、二人一組で指差し安全点検、校歌斉唱と続く。同校オリジナルの取り組みだ。
「就職するにしろ、進学するにしろ、日々の授業の中で大人としての自覚を持ってもらいたいんです。沖縄工業高校の出身だと、胸を張って社会に出てほしい」担当教諭は話す。授業中、男子生徒同士、「シャツが(ズボンから)出てるよ」と声を掛け合っているのには、正直驚いた。普段から、技術・知識の前にある身なり、言葉遣いなどの大切さを自覚しているからだろう。
「体力向上委員会参加者、前へ!」実習着などを忘れた生徒=参加者は、校舎を五周、全力疾走。
「先生、きついよー」「基本忘れるな」と言い合いながらも、教師と生徒の距離感が近い。日ごろから本音でぶつかり合う”体育会系“のすがすがしさを感じる。
前出の「ロボット相撲」のほか、「マイコンカーラリー」「ロボットアメリカンフットボール」などの課題ごとに分かれ、2時間45分連続の課題研究授業が始まった。最初のうちこそ、お互いの近況報告など私語を交わすものの、愛車を取り出し、15分もすると、ピンとした緊張感が教室を包む。同じグループでも進行状況は異なり、メカの心臓部分を組み立てている生徒もいれば、ボディの改良に余念がない生徒も。さらに、エクセレントと呼ばれる、より高度な技術でマシンを開発するメンバーもいる。
「中学までは、趣味とかでも機械をいじった経験はあまりない。沖工に入ってからのめり込んでいます」と語るエクセレントの生徒。備品で足りない工具は、ホームセンターで自ら買うほど探究心は衰えない。
競技にも生きる、資格取得にも積極的で、内容と数で与えられる「ジュニアマイスター」の人数は、昨年、全国の工業高校の中で5位に輝いた。
◇
授業が終わる30分前、ようやく土俵上でのけいこが始まった。「難しいけど楽しいです」いっそう生徒の目が輝く。「角度を変えてみよう」「バックと前進のバランス考えて」など、互いにアドバイスし合うのは、良きライバルでもある仲間同士だから。
競技会に出るからには勝ちたいでしょう、と顔をのぞき込むと、「それだけじゃないです。時間のある限り良いものを作りたい」と愛車をながめながら言う。放課後も休日も返上して、パーツを整え、バッテリーを変え、タイヤを削り直し、コントロール技術を鍛錬する。
「今年の県大会は三つどもえって言われています。他校を意識するんじゃなくて、落ち着いて自分らしさを出せればいいな」と、大人びた表情から一転、自信に裏打ちされた笑顔になった。賞状やメダルより、手元に残る銀色の作品が、高校生活三年間を駆け抜けた証となる。
写真・島 知子
明治35年首里区立工業徒弟学校として開校以降、沖縄の歴史の変遷によって6度校名が変わり現在に至る。全日制課程生徒数899人(男子794人・女子105人)。情報電子科、電子機械科、建築科、土木科、工業化学科、生活情報科、工業技術科(定時制課程)。中学生向け沖工検定や親子ものづくり教室など独自に取り組む伝統校。