「表紙」2011年10月13日[No.1385]号
30年以上も剣道を教えている大道チエ子先生は、沖縄県内の女子で初の剣道錬士の六段を取得した。自らが主催する道場などで指導に努める日々は剣道一筋。主婦業をこなしながらも自らの道を突き進む姿は多くの女性の憧れの存在。沖縄警察署スポーツ少年団の生徒を何度も優勝に導くなど、最も信頼できる指導者だ。
腰の剣いつまでも
大道さんが剣道を始めたのは高校卒業後18歳の時。決して早いとはいえないスタートだが、その後居合道五段、杖道三段と次々と資格を取得し、数々の優勝を含め優秀選手賞などの輝かしい成績を残した。現在は沖縄県警を退職し、「毎日が剣道であふれている状態で、充実している」とうれしそうに話す。
生徒の数は幼稚園児から高校生まで計40人以上。外からも聞こえる大きな掛け声は凄い迫力だ。小さい子も「えぇーい」「やぁー」と汗を飛び散らせながら必死で剣をふるっている。道場内の雰囲気は活気であふれ、体中に響きわたるような勢いが伝わってくる。
指導方法方針は、「剣道は男女、年齢に関係なく一本を取って、勝たなくてはならない。だから強さが必要なんです」と力強い答えが返ってきた。
大道さんがこれまで30年以上も指導者としてやってこられたのは他でもない、家族、父母、みんなの協力のおかげ。道場には夫や、息子、娘もOBOGとして参加する。3人の子を持ち、長男と次男は日本体育大学、長女は国士舘大学を卒業。今も剣道を続け指導を手伝ってくれ、大道さんにとっては心強い存在だ。そしてなにより、同じ元沖縄県警の夫政秀さんのサポートに救われている部分が大きい。練習しやすい環境作りから生徒のケアまでを率先して動いてくれるところに、すごく支えてもらっていると、信頼と感謝の言葉を述べる。
家族は大道さんに対して、「これからも好きな剣道を続けて頑張ってほしい」と話す。家ではよく深夜に踏み込みの音が聞こえたり、剣道のビデオをみて研究している大道さんの姿をみていたという家族には、1人の人間としてとてもいい影響を与える存在であったようだ。子ども達が挫折しそうになったときも、そっと背中を押してくれたという。母親としても、指導者としても尊敬されている。
「片方だけに力を注ぐことでは、本当の意味で強くなれない。私は自分のやるべきことには常に全力で取り組みたい。一度やると決めたからには責任があり、自分との戦いが始まると思っているんです」と、主婦業との両立だけではなく、生きていく上で非常に大切なことを語ってくれた。
保護者からは、「先生は台風がきてもどんな日でも剣道してますね。車の大型免許をもっていたり、ワイルドな面もあって、かっこいい」と人気者。普段から保護者との会話を絶やさず、練習の合間にも笑顔で楽しそうにしている。先生と父母というより、同じ親としてお互い気兼ねなく話していて、いい雰囲気が流れている。
大道さんから、父母が手作りしてくれた横断幕を見せてもらった。
「子ども達を40人以上見るのは、やはり一人ではとても大変で、周りにいる人たちみんなに助けられていると常に感じています。本当にいつも感謝しています」と、強調した。父母のみなさんが一生懸命作った横断幕は、沖縄警察署スポーツ少年団剣道部の心がひとつだというあかしのように感じられる。
指導者でありながら現役の大道さんは、現在剣道錬士の七段取得に向けて、週2日、自身の練習に励んでいる。目標を達成するためには、厳しいことでもどんどん挑戦していきたいと向上心高まる言葉を口にした。
「剣道は何歳からでも、何歳まででも続けられるんですよ。歳をとったらいつか若い者に負けるのではなく、経験した分の強さが生まれます。それが楽しい。もっとうまくなりたいと思えるんです」と強い口調で語った。
汗を拭いながら「まだまだ、腰の剣は離しませんよ」と話す、大道さんのまぶしい笑顔が光った。
普天間光/写真・池原康二
沖縄警察署スポーツ少年団剣道部
稽古日 火、水、金、(18時30分~20時30分) 土(17時00分~19時00分)
大会成績 2007年 全日本少年武道錬成大会 第六パート2位。2011年 全日本少年武道錬成大会 敢闘賞。同年 全国幼少年大会 小学生の部出場。その他、個人戦上位入賞者多数
先生の期待に応えたい