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[No.1420]

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「表紙」2012年06月14日[No.1420]号

輝くママ HAPPYライフ 11

輝くママ HAPPYライフ 11(2012年06月14日掲載)

「いい加減」に手抜き
医療事務 大西清美さん



 古いボンボン時計に二桁だけの電話番号が記された温度計。レトロな雰囲気が漂う名護市城のおおにし医院は47年間、子どもからお年寄りまで地域住民の健康を支え続けている。

  「体調どうですか? まだ風邪ですか?」。来院したお年寄りに明るく声を掛けるのが医療事務長の大西清美さん(40)だ。

 きゃしゃな体からは一男四女を育てるママには見えない。「私は手抜きばかりですよ。仕事をしているので家事や育児は『手抜きしてもいい』って思います」。肩肘張らずに仕事と5人の子育てを両立している。

 5人の子育て気負わずに

 初対面でも気さくに話をする親しみやすい雰囲気の大西さん。福岡県で生まれ育ち、高校卒業後、地元の病院で医療事務として勤務。医師として働く名護市出身の弘之さん(50)に出会った。26歳の頃、弘之さんが実家の医院を継ぐことになり、結婚を機に沖縄へ。

 新しい土地での結婚生活は正直、不安もあった。「トートーメーって何?とか、同じ名字が多いので屋号で呼ぶとか、カルチャーショックばかりでした」。しかし、持ち前の明るさで乗り切ってきた。「今は住めば都です」と笑顔で話す。

 27歳で長男・竜斗君(13)=中学2年=を出産。翌年、長女の由有菜(ゆうな)さん(12)=中学1年=が産まれた。「年子で本当に大変だった」と振り返る。しかし、次女の萌乃ちゃん(9つ)=小学4年=からは産気付くと一人で準備をして入院。三女の杏奈ちゃん(7つ)=小学2年、四女の咲希ちゃん(5つ)と気がつけば5人の母親に。「僕も5人きょうだいなので、子どもは多い方がいいかなと思ったんです」と弘之さん。

 不慣れな地での子育てだったが、妊婦のための母親学級などでの出会いを大切にし、少しずつ友達が増えていった。「最初は県外から来て友達もいなかった。子どもがいたからママ友ができた。子どもが多ければ多いほど友達の輪が広がっていく」。今では5人分の交流がある。

 また「子どもがいると、いろいろな経験ができるのがいい」と、子どもと一緒に漢字検定も受験している。

 同医院で医療事務長を務める大西さん。医療事務は受付やカルテの整理、診療費の計算、会計など病院にとって欠かせない大切な仕事だ。大西さんは3人のスタッフをとりまとめながらさまざまな雑務から一日の収支計算、駐車場の草木の枝切り、給与計算まで、縁の下で医院を支えている。

 特に心掛けているのが「患者さんの話し相手」。先代の弘道さん(84)の頃から通院している人が多く、体調のことや家族の話など患者さんとの会話を大切にしている。患者さんが入ってくると、「久しぶりだね」と優しく声を掛ける。帰る時は「お大事に」と明るい声が院内に響く。5人の子どもたちを知る人は「お子さんたちは元気ね?」と逆に気に掛けてくれるという。

 3年前、弘道さんが引退。現在は院長の弘之さんと看護師一人。事務スタッフは大西さんを含め4人だが、うち2人が子ども4人のママ。学校行事や子どもの体調など互いに調整しながら勤務している。大西さんは弘之さんの実家の協力も得ながら仕事をしている。

 5人の子どもの母として一番苦労しているのが、食事の準備だ。長女の由有菜さんが那覇で寮生活をしているので、家族6人分の食事を作る。「子どもが多いので、できることは協力しています」と保育園の送迎は弘之さんが担当。「夫が迎えている間に夕飯を作ります。主婦の特権は自分が食べたいものを作れること。そう思って準備したら楽しいでしょ」

 料理は後片付けが楽なように大皿に盛りつける。昨年、念願だった乾燥機付の洗濯機を購入。大量の洗濯物を干さなくても良くなった。家事は無理なく「手抜き」をしている。また、子どもたちの寝かしつけを弘之さんに任せて好きな本を読むなど、一人の時間も大切にしている。

 子どもたちの年齢を尋ねたら、かばんから保険証を取り出した。「いつも保険証を持ち歩いています。子どもたちの生年月日の確認のために」と笑う。「私、本当にテーゲーなんですが、周りから責められることがありません。すごく救われています」

 気負わないおおらかな生き方が子育てと家事を「いい加減」に手抜きして働く秘けつなのかもしれない。

豊浜由紀子/写真・國吉和夫


輝くママ HAPPYライフ 11 医療事務 大西清美さん
カルテを整理する大西清美さん。電子カルテを使用する病院が増える中、昔ながらの手書きのカルテを使用している=名護市城のおおにし医院
輝くママ HAPPYライフ 11 医療事務 大西清美さん
プロフィール
 おおにし・きよみ 1971年福岡県生まれ。福岡の高校を卒業後、医療事務として地元の病院に勤務し、名護市出身の医師・弘之さんと出会った。26歳で結婚を機に名護市へ。長男の竜斗君、長女の由有菜さん、次女の萌乃ちゃん(右から2人)、三女の杏奈ちゃん(中央)、四女の咲希ちゃんの1男4女の子育てと医療事務の仕事に奮闘している。弘之さんは清美さんについて、「明るい」と一言。医院も家庭も明るく元気にするパワーあふれる女性だ。
輝くママ HAPPYライフ 11 医療事務 大西清美さん
 医療事務は受付から診療費の計算、会計、カルテの整理など病院を支える事務を担う。国家資格はないが、さまざまな民間の医療事務資格が設定されている。大西さんは高校を卒業後、働きながら資格を取得した。全国各地に病院があるので引っ越しをしても働きやすく、女性に人気の職種という。
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