沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。週刊レキオ



[No.1468]

　毎月第１水曜の夜。石原裕次郎のグッズが並ぶ那覇市寄宮の「カラオケラウンジ裕次郎の部屋」に裕次郎の歌が響く。自慢の喉を披露しているのは、４０〜７０代までの「沖縄・裕次郎歌う会」のメンバー。裕次郎の曲だけを歌うのが決まりだ。「５６年間、ずっと裕次郎に恋をしているんです」と少女のような瞳で話すのは、同会副会長の野原佳代子さん（７１）。１５歳の頃、映画館で「嵐を呼ぶ男」を見て以来の大ファンだ。メンバーそれぞれが永遠の大スターへの思いを込めてマイクを握る。

歌で社会貢献も

　映画俳優、歌手、石原プロモーション社長などさまざまな顔を持つ昭和の大スター・石原裕次郎。１９８７年に５２歳で亡くなった後もその人気は衰えない。

　「裕次郎は決してハンサムとは思わないけれど、カッコイイ。男が男にほれるかっこよさがあります」と話すのは、「沖縄・裕次郎歌う会」事務局長の「裕ちゃん」こと糸数泰裕さん（６２）。「裕次郎のファンではなかったけれど、『声が裕次郎に似てる』って言われて、カラオケで裕次郎ばかり歌っていたら、友達の輪が広がりました」と約３５年前から裕次郎を歌う。那覇市東町にあったファンが集う店「ハーバーライト」にも通い、気が付くと自身も大ファンに。

　裕次郎の没後、「石原裕次郎を偲（しの）ぶ会」に参加。離島を含め会員は県内で３００人を超えるが、イベントが少ない。そこで、「定期的にみんなで歌いたい」と１０年前、カラオケ仲間で「沖縄・裕次郎歌う会」を結成した。現在は３５人が参加している。

裕次郎の曲だけ歌う

　糸数さんは、「仕事を退職したら裕次郎の店をしたい」と、約３５年前からポスターや写真集、本、ビデオ、酒など裕次郎グッズを収集。定年退職を機に、２０１１年６月、「カラオケラウンジ裕次郎の部屋」をオープンした。第１水曜の夜は、店内に裕次郎の曲だけが響く。

　糸数さんによると、オリジナル曲だけで３６０曲余、カバーも含めると６００曲を超える。

　会長の比嘉進さん（６１）は、糸数さんと県立豊見城高校の同級生。約１７年前、糸数さんに誘われ、一緒に歌い始めた。野球少年だった比嘉さんが大好きな曲が「男の友情背番号３」。長嶋茂雄の活躍を歌った曲だ。最初は「男の友情—」しか歌えなかったが、「糸数から『覚えなさい』って１００曲入りのＣＤを渡され、おかげで１００曲歌えるようになりました」

　１０代から大ファンの副会長・野原佳代子さんは、「かっこいいし、人間性も良く、本当に素晴らしい人。裏表のないスターだと思います」とその魅力を語る。さまざまな場所で裕次郎の曲を歌っていたら、糸数さんらと出会い、同会に参加。「まだまだ知らない曲がいっぱいあるので、ＣＤを聴いて覚えます」と笑顔で話す。毎晩、ＣＤを聴きながら眠りにつくという。

命日前に歌謡ショー

　同会では２年前、北海道旅行も実施。小樽市の石原裕次郎記念館はもちろん、通っていた小学校や同級生が営むスナックなど、ゆかりの地を巡った。２０１０年からチャリティー歌謡ショーも開催。同記念館公認のファンサークルという。

　７月１４日には「石原裕次郎２７回忌　沖縄・裕次郎を歌う会１０周年記念　第３回チャリティー歌謡ショー　裕次郎を歌う！」を那覇市のパレット市民劇場で開催する。命日の７月１７日に近い日曜日を選んだ。

　今回は１５人が代表で歌う。売り上げ金は県肢体不自由児者父母の会連合会に寄付する。「大好きな裕次郎を歌って社会貢献できてうれしい」と比嘉さん。メンバーは最高の舞台を披露するため、練習に励む。

　いつまでもファンを虜（とりこ）にしている石原裕次郎。その魅力は色あせることなく、ファンの心の中で永遠に輝き続ける。

豊浜由紀子／撮影・桜井哲也