「表紙」2013年08月01日[No.1478]号
魅力感じ 技追求
「頭から声を出しましょう」と発声練習でメンバーに語りかける代表の比嘉啓子さん(62)。演技では、人形と息の合ったコンビネーションで会話を展開する。「ゴーリング〜(ボウリング)」と手をバタバタさせながら話す人形は、本物の子どものようでかわいらしい。時には大人のような発言をしたり、質問にとぼけたりして笑いを誘う。那覇市安里にある「那覇市牧志駅前ほしぞら公民館」で活動する「腹話術サークル」のメンバーは40代〜70代までの女性10人。練習中も笑顔で楽しむことを忘れない。
教え合い 楽しさ共有
腹話術サークルには指導者がいない。腹話術歴18年の比嘉啓子さんが中心となり、技術向上に奮闘している。比嘉さんは約20年前に腹話術の講座に参加し、1年間基礎からじっくり学んだ。当時保育士をしていたため、子どもが喜ぶものを覚えたいという気持ちがあった。「子どもと一緒に楽しめるものを増やしたいと思い始めました。学んでいくうちに、自分でもビックリするほどはまっていきましたね」と比嘉さんは振り返る。
腹話術をさらに多くの人に広めたいと考えた比嘉さんは、親しい友人などに声をかけ、1995年4月にサークルを結成。当時、那覇市久茂地にあった久茂地公民館でスタートした。現在は那覇市安里にある「那覇市牧志駅前ほしぞら公民館」で毎月第1、3週の金曜日に集う。
腹話術歴2年目の宮城和代さん(59)は、「指導者がいないので、見よう見まねでやっています。でも自分のオリジナルなやり方ができていいかも」と笑顔で話した。
発声練習では、胸音(普段出している声)と頭音(人形の声)をいかに使い分けるかをトレーニングする。初めはできなくても、練習していくうちにうまくなっていくそうだ。サークルでは頭音はA打音、B打音、C打音の3つに分けて練習する。A打音とは「はい」や「そう」など口を開く回数が1回のもの。B打音は「なあに?」と2回。C打音は「うれしいね」など3回。A打音から順にしっかりと発声練習をしてマスターしていく。
しゃべりもそうだが、人形との動きをマッチさせて完成形。鏡を見ながら自分と人形の状態をチェックする。人形がしゃべっている時に自分の口が動いていないか、または人形のまばたきなどのしぐさが自然に見えているかなど、本番を意識しながら取り組んでいる。
人形の動きを自然に
メンバーは人形をわが子のようにかわいがっている。髪の毛にゴミがつかないように、普段は頭を布や袋で包んで保管。パートナーを大切にすることは、一心同体の状態で演技をするために必要なことだ。
人形の中に手を入れて、2本の指を使って動かす。子どもの格好をした人形なので、本物の子どものように見せなければならない。手をバタバタさせて落ち着きがないように演出し、まばたきも自然に行う。しゃべりながらではかなり難しい。初心者は人形の目と口を一緒に動かしたり、こんがらがうこともしばしば。ベテランの人も、本番時に緊張してしまい、自身と人形の声がごちゃまぜになることもあるという。腹話術歴15年の仲村かよ子さん(63)は「演技を披露して、お客さんの笑顔が見られるとうれしい。子どもには、終わってから『けんちゃんはどこに行ったの〜?』と聞かれたりします。こんな風に喜ばれると、もうやめられませんね」と熱く話してくれた。
サークル全体の活動は、毎年3月に行われている「牧志駅前ほしぞら公民館まつり」への参加。腹話術は基本的に一人で披露するため、毎年代表者一人を交互に選出しているという。「本当はみんなで出たいから、今後複数でできる演技を考え中です」と比嘉さん。
その他にもメンバーそれぞれが個人で活動している。保育園や老人ホームなどから依頼を受けて練習の成果を披露している。本番前にシミュレーションとしてメンバーに演技を見てもらうこともあるそうだ。「お客さんに見てもらうよりも、メンバーに見てもらう方が緊張するかも」と苦笑いの宮城さん。初心者からベテランまで幅広く参加する腹話術サークル。全員で教え合って楽しさを共有している。人を笑顔にするために、また自分も笑顔でいられるようにこれからも尽力する。
普天間光/写真・桜井哲也
メンバーは40代〜70代までの女性10人。毎月第1、3週の金曜日の19時〜21時に練習している。毎年行われる「牧志駅前ほしぞら公民館まつり」に参加し演技を披露する他、児童館や保育園、老人ホームなどで活動をしている人も多い。基礎から学べ、メンバーは随時募集中。
☎090-5380-1225(比嘉)まで