沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1491]

  • (金)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2013年10月31日[No.1491]号

情熱アチコーコー 31

情熱アチコーコー 31(2013年10月31日掲載)

おきなわ石の会

古代に続くロマン

 足下の石や巨岩、地層などにロマンを感じ、定期的な観察会や情報交換会を開く「おきなわ石の会」。この日は、読谷村宇座の残波岬で崖下から台風時に吹き上げられた巨大な台風岩と、「ヒージャーぬクス」(ヤギのふん)と呼ばれる小さなマンガンノジュールを中心に観察。塊を見付けては立ち止まり、石談議に花が咲く。「石はいろいろなことを教えてくれるし、さまざまなものとつながっている。そこが面白いんです」と副会長の大湾宏さん(59)。石を通して地球に思いをはせる。

石と会話するように

 キラキラした石ころや変わった形の塊を、子どものころ集めた経験がある人は多いのではないだろうか。大事にしまいこみ、時々取り出して眺めた宝物。「おきなわ石の会」のメンバーと残波岬に同行し、そのころの気持ちがよみがえった。

 同会は、もともと教職員の研究会が母体だ。その中心だった会長の大城逸朗さん(70)の退職をきっかけに、石やそれらに関連する事象に対する探求を継続しようと2004年に結成された。

 県内各地の特色ある岩石や地層、化石などを調査し、ブログや会報で発信する。現在登録している会員は子どもからベテランまで約150人。年齢・職業はさまざまで、学術的な「研究」の要素はもちろんあるが、好奇心のまま野山に遊ぶ「探検」といった趣だ。

感じ方それぞれ

 「例えば観察会で、みんなで一つの石を見ているとするでしょう。人それぞれ見方や感じ方が違うんです」と話す大城さん。ある人は石周辺の植生と関連づけて観察していたり、ある人はその組成を調べたり。年代、地層との関係、生物や人間の生活との関わりなど、石が語る物語は無限にあるという。

 「だから、観察の後に一人一人感想を言ってもらうことを一番大切にしています。研究者じゃなくてもいい。子どもでも感じるものがあるでしょう。それをみんなの前で発表するんです」

 2カ月に一度の観察会や年に何度か開かれる「サイエンスミーティング」と題した情報交換会で、それぞれの視点で語られる言葉。それによって、さらなる気付きや探求心が生まれ、それが一番の楽しみと語る会員も多い。

 事務局を務める城間吉主さん(31)は、「僕らの会は来る者拒まず。みんなでワイワイ語り合っていると時間も忘れてしまいますね」と話す。残波岬でも、3歩進んでは立ち止まり、小さな粒を拾っては意見を交わすメンバー。岩の割れ目に手を入れてみたり、食い込んでいる植物をじっと眺めたり。時間があっという間に過ぎた。

 「生活の中にある石材も観察の対象なんですよ」とメンバーの池宮隆さん(65)。郵便局員をしていたころ、「墓石を探そう」と大城さんに誘われたのが入会のきっかけだ。「沖縄には、全国の慰霊碑があるでしょう。戦没者を慰めるためにふるさとの一等級の石が使われていることが多いんです。それらを観察するだけでも、お国柄が分かって面白いんですよ」と話す。副会長の大湾宏さんも、「石は私たちの周りにいくらでもあって、隕石、化石、鍾乳石、碁石。胆石なんてのもあるね」と少年の表情になる。植物にも詳しい友利恵良さん(59)は「何度も訪れた場所でも、毎回新たな発見があるんですよ」と楽しそうだ。

自然の二面性学ぶ

 「今は観察と意見交換を柱にしていますが、まだ目標があるんです」と大城さん。沖縄の歴史を語る地層や化石などを保存、保護していきたいと話す。「その上でね、石を含めた自然は楽しいだけではないことを学んでほしいんです」

 地震や津波など、過去の記憶を刻む石や地層。その地に埋もれた化石。それらは自然の厳しさ、恐ろしさをもまた、私たちに示してくれる。

 「まずは、身近にある石を手のひらに取ってみてください。あなたにはどんな声が聞こえますか?」と優しい笑顔になる大城さん。想像力は時間を超えて広がっていく。

島知子/写真・呉屋慎吾

このエントリーをはてなブックマークに追加



おきなわ石の会
決巨大な台風岩の前に立つ、おきなわ石の会の(写真左から)大湾宏さん、城間吉主さん、城間佳代子さん、池宮隆さん、友利洋子さん、友利恵良さん=読谷村宇座の残波岬
おきなわ石の会
ウチナーグチで「ヒージャーぬクス」(やぎのふん)と呼ばれるマンガンノジュール
おきなわ石の会
会長の大城逸朗さんは県内のさまざまな場所を訪ね、調査してブログにアップする
おきなわ石の会
残波岬で見付けた石について語り合うメンバー
おきなわ石の会
おきなわ石の会
 沖縄の岩石や化石、地質などの観察会を2カ月に一度行っている。現在、登録会員は約150人。年会費千円で、石に興味がある人は誰でも参加・会員登録可能。11月9日(土)10時〜12時、読谷村宇座の残波岬で「マンガンノジュールの誕生と台風打ち上げ石の観察」と題した観察会を行う(残波岬側駐車場集合)。参加無料。「沖縄の地質・岩石・化石のやさしい解説と情報」と題したブログも随時アップしている。
問い合わせ☎090(7162)7024〔大城〕
>> [No.1491]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>