「表紙」2013年11月07日[No.1492]号
心鍛え 勇気育む
「メーン」「突きー」。20時ごろ、那覇市繁多川にある石田中学校の武道場で勢いのある声が響き渡る。8〜63歳までの幅広い年代のメンバーが共に汗を流すスポーツチャンバラ。ルールは相手の体に剣を打ち込んで1本を取ると勝ち。使用する剣は「エアーソフト剣」といって竹刀に比べてやわらかいが、思い切り打たれると「バァン!」と大きな音がして思わず後ずさりしそうになる。打ち合いでは、女子メンバーも男子と混ざって真剣勝負。集中力と共に精神力も鍛えられるスポーツだ。
若い世代に魅力伝えたい
チャンバラとは、子どもたちが折れた木などの棒切れを剣のように使い、公園や野山をかけ回る遊びのことだ。スポーツとして取り入れられたのは1973年。神奈川県で全日本護身道連盟(後の国際スポーツチャンバラ協会)が設立されたことをきっかけに、海外にも広がっていった。
毎年行われる「世界選手権大会」も第39回を数え、日本を発祥としたスポーツチャンバラは、世界的にも広く知られる競技となっている。
県内にスポーツチャンバラが取り入れられたのは約15年前。県チャンバラ協会の会長であり、同サークルの指導者の與座正夫さん(61)は、初段認定資格とインストラクターの資格を取り、「那覇市スポーツチャンバラ協会」を設立した。「子どものころはチャンバラばっかりして遊んでいました。若い世代にもチャンバラの面白さを知ってほしくて、サークルを作りました」と與座さんは話す。
「空手同好会」でも指導をしている與座さんは、知人など周囲の人に声をかけてメンバーを増やしていった。
フェアプレー精神大切に
2013年2月に「うまんちゅスポーツチャンバラサークル」を設立。毎週火曜日の19時半から石田中学校の武道場で練習している。メンバーは14人。小学生から社会人まで幅広く参加している。
許田勇斗さん(15)は空手同好会のメンバーで、チャンバラ歴2年。サークルを開設する前から與座さんと練習をしていた。「最初はルールが分からなかったけどすぐに慣れました」と笑顔で話してくれた。
県内で行われる「県スポーツチャンバラ選手権大会」は、10月27日に第3回を行ったばかり。参加者は約25人。認定資格があれば県外の試合に参加することもできる。
チャンバラの試合にはユニホームなど規定の服はない。顔を守る面を着けて、選手はそれぞれが動きやすい格好で臨む。
競技内容は「基本動作」「小太刀」「長剣フリー」「二刀」「楯小太刀」「短刀」など7種類に分かれている。「基本動作」は空手の「型」と似ている。チームから一人ずつ選抜して、審判の合図に合わせて「面」や「突き」などの動作を行う。
エアーソフト剣は長さが4種類あり、短くなるごとに難しさが増す。打ち合いでは接近戦を余儀なくされ、相手の体に打ち込むのが困難になるからだ。
打ち合いの試合は1ポイント制。相手の体に剣を打ち込み1本取った方が勝ちだ。決勝になると3ポイント制になる。
審判が判断する前でも、体に剣を打たれたら挙手をして自己申告する。フェアプレー精神を大切にしている。
夢中で練習 上達に喜ぶ
武道場内で一番声を出して元気に動き回っていた横山聖朗(きよあき)くん(9)は、昨年7月にチャンバラを始めた。両親から体験を勧められて何気なく参加。打ち合い練習を繰り返すうちに、どんどんその面白さに目覚めていったという。
「扇打ち」という半円を描くようにして攻撃する技がある。横山くんはその扇打ちをずっと苦手としていたが、地道に練習を重ねてできるようになった。「試合でメダルを取ったら、與座先生が焼肉屋さんに連れて行ってくれるって約束したんだ」とうれしそうに話す横山くん。指導者とメンバーの仲の良さが伺えた。
「まだ始まったばかりのサークルですから、これからです」と情熱的に話す與座さん。今後さらにチャンバラを多くの人に知ってもらい、魅力を感じてほしいと願っている。
普天間光/写真・呉屋慎吾
2013年2月に開設。
メンバーは14人。毎週火曜日19時半から那覇市繁多川にある石田中学校の武道場で練習。サークルのことや今後のチャンバラ大会の情報は、インターネットの「県スポーツチャンバラ協会blog」で随時更新。年齢、性別問わず募集中。初心者も大歓迎。
☎090(5083)3530(與座)