「表紙」2014年04月17日[No.1514]号
「行け〜、今年は優勝だ〜!」。沖縄市で春季キャンプを行う広島東洋カープ。赤のチームカラーから「赤ヘル軍団」と呼ばれる同球団のファンの皆さんに、赤に身を包んで集まってもらった。場所は、野球好きが集う沖縄市上地の「居酒屋 島ごはん」。カープのユニホームやポスターなどが飾られた店内では、テレビの野球観戦に熱が入る。今年は開幕戦から絶好調だ。「カープが勝った日は酒がうまい!」と、今年こそ優勝を目指し、沖縄から大声援を送る。
勝利の美酒に酔う日まで
広島東洋カープはもちろん、さまざまな球団のユニホームやポスターなどが飾られた島ごはん。約6年前にオープンしたが、「野球が大好きなんですよ」と話すオーナー・西崎大地さん(33)の趣味で、2年ほど前から野球一色の店になった。沖縄市が春季キャンプ地ということから、カープをメーンに応援。土日やイベントなどの際は、カープのユニホームで接客する。店内に設置された2台のテレビではシーズン中、有料放送の野球中継も観戦できる。カープファンだけでなく、野球好きが多く集う店だ。
負けても応援
豊里友情さん(57)は、もともと巨人ファンだったが、カープが沖縄市でキャンプを行うようになってから「気がついたらカープファンになっていた」と笑う。1991年に6回目のセ・リーグ優勝を果たした時から応援している。
キャンプ期間中はほぼ毎日、球場へ足を運ぶ。オープン戦は、ボランティアで運営に携わる。「去年はクライマックスまでいったが、なかなか優勝できないチームを応援するのもいいよ。応援のしがいがある」と話す。
今年は開幕戦から好成績が続く。「球団スタッフもみんな知っているから友達感覚で、勝っても負けても応援しなければいけない。今年は頑張ってほしい」と期待を込める。
「今日集まった中で俺が一番古いカープファン」と自信たっぷりに話す髙島義彦さん(63)。中学2年生の時、広島市在住の下崎末満さん(66)との文通を通してカープのファンになった。60代になった今も文通は続く。
衣笠祥雄さんの大ファンで、1982年に衣笠祥雄選手ファンクラブ「沖笠会」を立ち上げ、事務局長を務める。激励ツアーで広島まで応援に行った。衣笠さんと交流もあり、一緒に撮った写真や結婚式に届いた電報などが宝物だ。「衣笠選手は人間性が良く、人を怒れないとても優しい人」と印象を語る。「カープは91年の優勝が最後。去年やっとAクラスまでいったから、今年は期待できるよ」とカープの話になると止まらない。新聞の切り抜きなど貴重な資料もスクラップブックにつづって大切にしている。かばんやデジタルカメラ、ライターなども赤にこだわる徹底ぶりだ。
願いは一つ「優勝」
両親が生前、大のカープファンだったという比嘉享子さん(53)。中の町でスナック「心酔」を営んでいた父・伊禮信一さん(享年74歳)は、店内にカープの写真を貼り、応援していたという。「キャンプ中は2軍の選手にごちそうしていましたよ。カープを見たら両親を思い出します」と話す。信一さんは2013年に他界。8年前、64歳で亡くなった母・和子さんもカープファンで、一緒に広島市民球場まで応援に行った。「市民球場は子連れのお母さんからお年寄りまで幅広い年齢の人が応援に来ていて、とてもアットホーム。みんなでカープを『応援している』『育てている』という雰囲気がものすごかったです」と懐かしそうに話す。
両親の思い出がつまったカープからしばらく距離を置いていたが、「そのうちいい思い出になるから…」と仲間と一緒に応援していた。
ファンの熱い思いはそれぞれだが、願いはただ一つ。1991年以来、遠ざかっている「優勝」だ。頑張れ、カープ! 今年こそ祝杯をあげてほしい。
豊浜由紀子/写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)
沖縄市上地1-1-1
コザミュージックタウン2階
☎098(982)2111