「表紙」2014年04月10日[No.1513]号
笑いの花 咲かせたい
赤く咲き誇るハイビスカスに囲まれたちょっと怪しげな(?)男性。彼の名前をご存じだろうか? この人物こそ、沖縄のお笑い・演芸集団FECの最年長メンバー、「アカバナー青年会」さん(以下、アカバナーさん)だ。青年会と名乗っているが、実態は一人で活動するお笑い芸人。しかも、その姿はどう見ても青年には見えない—。そんなミステリアスなお笑い芸人、アカバナーさんとともに、250種類以上のハイビスカスを育てる金武町の屋嘉ファームを訪れ、その実像と魅力に迫った。
今からでも はじけるぞ
「本当に自分でいいんですか!?」。取材の申し込みをした時のアカバナーさんの第一声だ。演芸集団、FECに所属するアカバナーさんは、「FECお笑い劇場」をはじめ、月3回開催されるライブなどで不定期に舞台に立つほか、FMいしがきサンサンラジオで週1回のレギュラー番組(「おもろスタイル」毎週水曜日 午前10時〜11時)を持つ。ドラマや映画にも出演し、「ハルサーエイカー2」では鍛冶屋の「カンジャーエイカー」役を演じた。しかし、芸能活動だけで生計を立てている「一軍」のお笑い芸人に比べると、その名前は必ずしも広く知られているわけではない。
アカバナーさんのお笑い芸人としてのデビューは遅かった。転機はスーパーの主任を務めていた38歳の時。「FECのオーディションの募集を見て、はじけたくなった」という。お笑い芸人として舞台へ立つのはほぼ未経験ながらも、オーディションに見事合格し、FECの13期生として芸能活動を開始した。しばらくはスーパーの仕事も続けていたが、両立が難しくなり2年後に退職。「収入は約3分の1に減り、周囲からも罵詈(ばり)雑言を浴びせられました。でも、芸能の仕事で成功したい、もう少し年をとったら需要が出てくるという思いがある」と目を輝かせる。
アカバナーで笑いとる
今回、表紙撮影の場に選んだのは、250種以上のハイビスカスを育てる金武町の屋嘉ファーム。もちろん、アカバナーさんの名にちなんでのことだ。
出迎えてくれたのは、ファーム代表の具志堅隆さん(69)。「アカバナー青年会さん? 変わった名前だねー」と笑いながら、ユニークな語り口で園内を案内してくれた。アカバナーさんとも意気投合し、「アカバナーの花で笑いをとる方法を教えようね。花の雌しべの根元に、黄色く丸い種になる部分があるでしょ。これを顔にイボみたいにつけたらいいよ」とアドバイス。「沖縄では昔からある遊びだよ」と快活に笑い、アカバナーさんも「笑いのネタはやっぱり身近なところにありますね」と応じる。
おじさんの逆襲
取材で接したアカバナーさんには、にじみ出るような独特の魅力があった。派手さこそないが、じんわりした味わいだ。それはどこから来るのだろうか?
「自分はどこにでもいる普通のおじさん」と自らを表現するアカバナーさん。舞台でも「若者に対して牙をむくおじさん」というキャラクターで笑いをとる。「ネタを新しく作るというより、ふだん思っていることを吐き出す」のだという。
「普通のおじさん」にだって捨てきれない夢があり、周囲に牙をむくロックな精神がひそんでいる—。アカバナーさんの不思議な魅力は、そんな「わりきれない」大人の姿を体現しているところにあるのだろう。
最近、アカバナーさんは、舞台を見た映画やドラマの監督から直接指名され、役をもらうことがあるという。アカバナーさんの人柄がなせる業だろう。その中の一つが、沖縄市を舞台にしたゾンビ映画「ハイサイゾンビ」。ちょっとトボケた愛らしいおじさん、ゲンさん役を好演した。
まだまだお笑い芸人としては「二軍」だと自ら語るアカバナーさん。だが、一花咲かせるには、決して遅くはない。
日平勝也/写真・桜井哲也(Sakuracolor)
◇週刊レキオのフェイスブックページで、アカバナー青年会さんと屋嘉ファームについてもっと詳しく紹介しています。 https://www.facebook.com/lequio1985
撮影協力 屋嘉ファーム
金武町屋嘉上原2018番地 ☎098(966)1977
営業時間:10〜18時
入場料:300円
定休日:なし