「表紙」2014年12月18日[No.1549]号
フラッグを奪い、陣取りに走る
敵のゴール陣地を目指し、楕円形のボールを投げて、捕って、走って突き進む。
自分の陣地を前進させるため、ボールを持たない選手も個々の役割で挑む緻密な戦略的スポーツである。
全米で人気ナンバーワンのスポーツ「アメリカンフットボール」のルールを基に考案された競技だが、その特徴は体をぶつけて倒すタックルではなく、腰に着けたフラッグを奪い取り、相手の攻撃を止めるところにある。接触プレーがなく安全なので、身体の大きさや年齢、性別に関わらず同じフィールドで試合を楽しむことができる。
「エースが引っ張るといった競技ではなく、全員で一丸となって作戦を実行するチームスポーツ」と神森誠司(じんもりせいじ)さん=石嶺中教諭・県フラッグフットボール協会事務局=はその魅力を話す。
全員で考える戦略的スポーツ
ルールを一言で表すと「ボールを用いた陣取りゲーム」
ボールを持ち、腰のフラッグを奪われるまで走って陣地を進める「ランプレー」と、前方の味方にボールを投げキャッチして陣地を進める「パスプレー」があり、ボールを持った選手が相手のエンドゾーン(ゴール陣地)にたどり着くと「タッチダウン(得点)」となる。確実に前進させたいのならランプレー、長い距離を進みたい時にはパスプレーが有効だが、ボールをキャッチできなければ進むことができず、またインターセプト(敵にボールを奪われる)されるリスクもあるので、「ラン」と「パス」のプレー選択が勝負のポイントだ。
「ボールを進めるためチーム全員が役割を担う。投げる、捕る、すぐさまあらかじめ決めたコースを走る選手や、ボールを持ったふりをして敵の守備選手を引きつけるおとり役など、フィールド全体に戦略が見て取れる。ボールの扱いが苦手でも、敵のフラッグを取るのが得意な選手が活躍するなど、チームの総合力で戦います」と、競技の普及を図る神森教諭。
親富祖日向子(ひなこ)さん=石嶺中3年=は「みんなの力が合わさらなければプレーが成り立たないところが楽しい」と面白さを話し、キャプテンの伊波盛晃(もりあき)さん=石嶺中3年=は「主将としてのプレッシャーはあるが、ロングパスが決まって試合の流れを変えることができる瞬間が気持ち良い」と爽快感を伝える。
簡単に始められる競技
県内では全国大会や西日本大会への出場予選として夏と秋に大会が行われ、中学部門では6チームがエントリーする。国内では関東や関西が盛んで、これは同地のアメリカンフットボールの競技人口と比例しているようだ。
中学の時にフラッグフットボールに触れ、現在は大学でアメリカンフットボールに取り組む佐久田樹(いつき)さん(20)は、中高生の県予選大会の運営をたびたび手伝う。「軽装でできるのでお金が掛からない。まだ競技人口が少ない分、競技者同士の密なつながりも生まれる」と気軽に始められる良さを話す。
県フラッグフットボール協会の泉川宏会長も競技の魅力について「1つのプレーに何百通りの作戦があります。他のスポーツでは監督が選手へ作戦を伝えるが、このスポーツは選手同士が作戦を考え実行します。チームごとにオリジナルの作戦があり、試合中もワンプレーごとに集まり作戦を確認。最前線以外でも、作戦に沿って各自の判断で動いている。取り残される者がいないのが良いところでしょうか」と語る。
その特性から体育の授業に取り入れている小学校もあり、教育現場からも注目されるスポーツである。ケガの心配も少なく、個々の運動能力よりもチーム戦術により成功を分かち合えるフラッグフットボール。
仲間同士で戦略イメージを共有し、成功できたときの快感こそ、チームスポーツのだいご味だ。
ナガハマヒロキ/写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)
自分の陣地一番奥から攻撃を開始。前方に走り込んだ味方にパスを出し(パスはワンプレーに付き1回のみ)、ボールを持つ選手が走り込んで陣地を前進させる。パスを落とすかボールを持った選手が相手にフラッグを取られるとワンプレーが終了。4回のプレーでコート中央のハーフラインを突破できればさらに4回の攻撃権が与えられ、相手のエンドゾーンへボールを持ち込めばタッチダウンとなる。4回の攻撃でハーフラインやエンドゾーンまで進むことができなかった場合は攻守交代。守備側が相手のパスを奪うインターセプトは、即時攻守が入れ替わりそのままタッチダウンを狙うこともできる。試合の流れを変える守備側の最大のファインプレーである。
【協会情報】
県フラッグフットボール協会
那覇市首里石嶺町2-109(市立石嶺中学校内)
電話:098-917-3417(石嶺中学校)