「表紙」2014年12月11日[No.1548]号
美しく、そしてりりしく
毎週土曜日の午前7時、琉球大学のグラウンドに女子ラクロス部のメンバーが続々と集まる。肩にかけたバッグから取り出すのは、「クロス」と呼ばれる先端に網のついたスティック。ラクロスは、このスティックをたくみに操ってボールを奪い合い、敵陣にゴールする球技だ。北米で人気が高く、日本でも大学生の間で盛んだが、県の競技人口はわずか50人程度。同ラクロス部は、県内で唯一の学生チームとして練習に励む。
「始める前は、髪を結んだスカート姿のかわいい女の子たちがやる競技と思っていました。でも実際には、かなり荒々しいスポーツですよ(笑)」と農学部2年の加藤絵美さん(20)。躍動感に満ちたプレーに生傷も絶えないと苦労を語るが、その表情は、りりしく明るい。
ボール追い全力で疾走
日本でも、大学生のスポーツとして徐々に広がりを見せるラクロス。だが、県の競技人口は50人程度と少ない。その中で唯一の学生チームとして活動するのが、琉球大学女子ラクロス部だ。
取材の日は、福岡で開催される1年生の新人戦に向けた練習試合が行われていた。ラクロスは、男子と女子で試合人数やルールが異なり、女子は通常1チーム12人で試合に臨む。しかし、同部の選手は1年生11人、2年生7人、3年生1人の計19人。頭数が足りないため、OGや米軍基地内のサークルにも応援を頼み、1チーム8人編成で何とか練習試合にこぎつけた。「人が少ないので大変。社会人に来てもらわないと練習試合もできない」とメンバーたちは苦笑する。
女子ラクロスというと、巻きスカートにポロシャツというイメージもあるが、同ラクロス部では動きやすいサッカーのユニホームを着用。「地上最速の球技」といわれるほど猛烈なスピードで飛んでくるボールから身を守るため、マウスピースの装着も義務づけられ、ファッショナブルという一面だけでは語りきれない。むしろ、ダイナミックな躍動感や、スティックを駆使してボールを取り合う選手たちの勇ましいプレーがラクロスの神髄だ。
練習試合の様子もハード。選手たちは、20分ハーフの間、全力で疾走する。ボールはシュートしても転がしてもよく、地面に落ちた球を奪い合うさいには、グラウンドに激しい土ぼこりが舞う。新人ゴーリー(ゴールキーパー)の嘉手苅真海(かでかり・まみ)さん(18)=教育学部1年=は、「飛んでくるボールが体に当たり、打撲することもしょっちゅう」と苦笑いする。「でも、ボールを止められた時は楽しい」
友情の絆 深まる
「ラクロスは、思った以上に激しいスポーツ。でも、仲間がこう動いたらこうしようとか、みんなで頭を使ってプレーするのは面白い」と語るのは、新人の福本みなみさん(19)=法学部1年。10月からキャプテンを務める森下久美さん(20)=教育学部3年=も、「誰かが点を決めたら自分のことのようにうれしい。大学になってから、みんなでこれだけ一つのことに集中できるのは幸せ」とチームプレーの大切さ、楽しさを強調する。
チームの結束は固く、土曜日をはじめ週4回の練習のほか、3カ月おきにメンバーの誕生日を祝う。明るくフレンドリーな部の雰囲気にひかれて入部を決めたと話す1年生も多い。
マイナーな競技ゆえに、県外に赴かないと試合ができないという苦労もあるが、プレーを通して各地のチームと交流し、友達になれるのも魅力だという。
20歳前後のメンバーたちは、普段はあどけない表情も見せる。だが、ラクロスの象徴ともいえるクロス(網つきスティック)を手にとると、表情が戦士のようにぐっと引き締まる。りりしく美しいその姿が印象に残った。
日平勝也/写真・村山望