「表紙」2015年1月15日[No.1552]号
夢は東京五輪選手の育成!
重さが7㌔以上もある22口径のライフル銃をぴたりと静止させ、50㍍先の的に正中させる仲本渚さん(36)。21歳からライフル射撃を始め、半年で九州大会優勝、一年で西日本大会を制し、その後も何度か西日本大会で優勝を繰り返した実績を持つ達人だ。
「自分でもすごいなーと思っていたんですが(笑)、そこから全日本大会でなかなか優勝ができず……。でも、それがバネになって競技を続けられたのかなと、今では思います」
2006年には当時の日本記録で念願の全日本社会人大会で優勝を果たした仲本さん。その後も競技を続けながら、「子どもたちが上手になっていくのが今は楽しい」と、現在はコーチ業に重きを置く。
そして今、仲本さんは「東京五輪の日本代表を育てるのが目標」と夢を語る。
小中学生に集中指導
実はライフル射撃は、2020年の東京オリンピックに向けて、「今からでも五輪を目指せる」種目として注目を集めている競技の一つでもある。昨年秋に日経ビジネス誌が報じた記事で、競技人口が少なく普及段階の五輪競技リストに、近代五種、女子七人制ラグビー、セーリング、アーチェリー、テコンドーとともにリストアップされてから、徐々に競技人口が増えつつあるというのだ。
強化に向けて、国も後押し
国もライフル競技の強化に取り組んでいる。昨年11月には、競技用空気銃の使用を特例で認める年齢の下限を14歳から10歳に引き下げる改正銃刀法が衆院本会議で可決、成立した。対象種目はエアライフルとエアピストルで、これにより、2020年東京五輪に向けて低年齢からの強化が可能になった。
仲本さんが事務・普及強化担当を務める沖縄県ライフル射撃協会でも、昨年から毎週土曜日に小中学生を対象とした無料の射撃教室を開催している(射撃場使用料220円は実費)。実弾を使わないエアー銃を使用する教室で、現在約20人の小中学生が、未来のオリンピック、パラリンピックを目指して練習に励んでいる。
選手として輝かしい成績を残している仲本さんは指導者としての評価も高く、数々の優秀選手を育てた実績が認められてこれまでに3度、沖縄県優秀指導者賞を受賞している。
「小学生の全国大会では、昨年は5人がエントリーしてそのうちの3人が5位以内に入賞しました。県民性というのか、最初からライフル射撃がうまい人が多いような気がします。まだまだ素質が眠っていると思うので、競技人口がもっと増えてくれたらうれしいですね。また、夫(正樹氏)が興南高校エアライフル射撃部を指導していて、そこにも全国大会でかなりの成績を残す選手がいるんですよ」
正樹さんは、東京オリンピックの強化コーチに抜てきされるほどの指導者。夫婦の二人三脚で、沖縄からオリンピック選手の輩出を目指しているのだ。
無心の心地よさ
選手として指導者として、仲本さんがここまで打ち込んでいるライフル射撃の魅力をひと言で表すと、「無心の心地よさ」だという。
「この競技は確実にメンタルスポーツ。体を固定し指しか動かさない。神経を集中し、研ぎすまされた自分の内面に向き合う競技なんです。プレッシャーで撃ちたくても指が動かない弱い自分を見ることもある。逆にゾーン(極限の集中状態)に入ると、撃っていることさえ気づかないほど無心になる。ゾーンに入っていることさえ気づかなくて、そこから抜けて始めて、集中しきっていた自分に、爽快感や達成感を覚えるのです。子どもたちに、武道に通じるその境地を感じてもらえればうれしいですね」
今、ライフル射撃の練習に取り組んでいる高校生、小中学生が、このまま才能を伸ばしていけば、2020年の東京五輪、さらにその次のオリンピック選手を沖縄から出すことは決して夢ではない、と仲本さんは期待している。
写真・村山望
ライフル種目は光線式で誰でも扱うことができるビームライフル、18歳以上から所持できる高圧の空気で鉛弾を発射するエアライフル、原則20歳以上から保持できるスモールボアライフルの3つの種目ある。(東京オリンピックに向け法改正され、現在はエアライフルの年齢は引き下げられた)
立射、膝射、伏射の3種類の体勢から制限時間内に的を狙い点数を競う。ライフル射撃競技の主な競技は次の通り。
○50メートルライフル(成人)
○10メートルエアライフル(成人・高校生)
○10メートルエアピストル(成人)
○ビームライフル(高校生)
○デジタルピストル(高校生)
小中学生はビームライフルとデジタルピストルの大会が開催されている
●沖縄県ライフル射撃協会
連絡先098-867-1110
●沖縄県ライフル射撃場
連絡先098-945-9911