「表紙」2015年2月19日[No.1557]号
回転のスリルに夢中!!
「ラート」とは、宇宙遊泳の気分が味わえるニュースポーツ。ラートと呼ばれる鉄の輪の間に体を固定し、輪をさまざまに動かして技を競う。発祥はドイツで日本ではまだ珍しいが、琉球大学では1994年に全国で初めて授業に導入。体操部でも積極的にラートを指導し、全国大会はもちろん、2000年代には何人もの選手を世界大会に送り、優勝へと導いた実績を持つ。
「輪は体の筋肉を少し動かすだけで転がります。回っている時は、おなかがフワフワしてジェットコースターのような感覚も味わえます。それが面白くて、やめられなくなりました」と話すのは、部長の日高春奈さん(19)=法文学部2年。大学に入るまで運動経験がなかったにもかかわらず、週4回の練習に加え自主練にも熱心に取り組み、昨年の全日本学生選手権大会では見事10位に入賞した努力家だ。
技を磨いて世界を目指す
「演技を一目見て、ビビッときました」︱。法文学部2年の新川依央莉(いおり)さん(21)は、ラートに初めて出合った時の驚きをこう話す。「学部よりも先に、琉大に入学したら体操部に入ると決めていましたね」
ラートは、平行につなげた2本の鉄の輪につかまって、体をまるごと360度ぐるりと回転させる競技。サーカスにも取り入れられているというダイナミックな演技は、確かに絶大なインパクトがある。
さぞ高度な身体能力が求められるのかと思いきや、意外にも初心者にもやさしいスポーツだという。ベルトで足をしっかり固定し、グリップを握っていれば、輪から落ちることはほとんどなく、子どもからお年寄りまで楽しめるそうだ。
「大学に入るまではインドア派でした」と話す部長の日高さんも、入学時のサークルオリエンテーションが初体験。教えられた通りにやってみると、簡単に輪が転がった。「自分でも回せたのが楽しくて入部を決めました」と笑う。
誰でも簡単に始められる一方、競技としての奥は深い。両手足を固定して車輪のように輪を動かすのが基本動作だが、練習が進むと、手を離したり、ラートを斜めに傾けて回転させたりする高度な技にも取り組む。
先輩たちが見せる華麗な技にあこがれ、入部後、練習を重ねていった日高さん。
高度な技は、先輩の指導のもと、少しずつ段階を踏まなければ習得できない。基礎的な筋力も必要だし、特定の筋肉や骨の動きを意識しなければできない技もある。
「最初はどう動くか全く分からないのですが、先輩に言われた通りにやっていると、コツがつかめる時がくるんです」。その瞬間は部員の間で「神経が通った」と呼ばれ、大きな達成感が味わえるという。
天真らんまんでチャーミングな日高さんだが、練習姿勢はとにかくストイック。週4回の部活に加え、毎朝の自主練、夜の筋力トレーニングにも積極的に取り組む。努力のかいあって、昨年の全日本学生選手権大会では、入部2年目にして10位入賞を達成。熱心な姿が周囲にも認められ、昨年の12月からは体操部の部長を務めている。
現在の部員は14人。少し変わった個性的なメンバーが集まるが、部員同士の結束は固い。技の習得には先輩の指導が欠かせず、OBも定期的に練習に足を運ぶ。
ここ数年は、大学の授業でラートが行われなくなった影響もあり、部員の数が伸び悩み、残念ながら世界大会への出場を見送っている。1台20万円という器具の老朽化も進み、買い替えも課題だ。
だが日高さんは前向きに「琉大がもう一度、世界大会でトロフィーを持ち帰れるよう状況を整えていきたい」と抱負を語る。その思いが現実のものとなる日が楽しみだ。
日平勝也/写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)
平行につないだ2本の鉄の輪(=ラート)を用いてさまざまな動きを行うスポーツ。競技は男女に分かれ、新体操のように個人で演技の完成度を競い合う。全日本選手権大会での採点方式は、10.00満点からの減点方式。種目には、2本の輪を前後に回転させて行う直転、どちらか1本の輪だけを床につけて行う斜転、転がる輪の上を跳び箱のように飛び跳ねる跳躍の3種類がある。
琉球大学体操部
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