「表紙」2015年3月5日[No.1559]号
追求し挑戦し続ける楽しさ
沖縄県は「ウエイトリフティング王国」と称されることもあるほど、国内大会や世界大会、そしてオリンピックでも入賞者を出した実績がある。だが、女子選手は男子選手と比べると、かなり人数が少ないのが実情だ。
「女の子がやるのは抵抗があるスポーツかもしれませんが、ウエイトリフティングは身体に近いところでバーベルを挙げるので、実はそれほど力がいらないんです。持ち上げる瞬発力のための足腰の筋力や、バランスを取るためのいろいろな筋力が必要ですが、パワーだけではない。奥が深くて面白いスポーツです」と語るのは、全日本選手権で優勝経験を持つ金城尚乃(ひさの)さん(27)。金城さんは社会人選手として、今年6月の全日本選手権に向けてトレーニングを重ねている。
夢はオリンピック
ずっしりと重いバーベルが床に当たる激しい音が繰り返し響き、大きな掛け声が響き合う、緊張感のある練習場。金城さんはストレッチや柔軟体操、体幹トレーニング、ランニング、腹筋運動、そして、バーベルを持ち上げる動作やスクワットなどのメニューを、じっくりと筋肉や関節の調子を確認しながら行っている。
「今は足に故障があるので、重量メーンではなくフォーム重視の練習をしています。個人個人の骨格の違いなどによって、その人に合うフォームが決まってくるんです。体重やコンディションによっても変わるので、どういうフォームが今の自分に合っているのか、探りながらトレーニングをしています」と金城さん。
金城さんがウエイトリフティングと出合ったのは中学3年生の時。
「友だちの親戚にウエイトをやっている方がいて、『誰か力が強い子いないか?』って誘われたんです。力には自信がなかったけど『どういうものなんだろう?』っていう興味がわいて、友だちといっしょに練習に参加するようになりました」
やがて素質が開花し、豊見城高校に入学してからはウエイト一色の生活になった。
「高校に入って、元オリンピック選手でもある平良真理先生に指導してもらえたことも大きかったと思います。ほんとうに強くなりたい、と思ったのは高校2年生になってからでした。全国レベルの合宿に参加するようになって、同世代で階級が近いライバルたちがどんどん力をつけていくのを肌で感じて、自分も日本代表になりたい、という気持ちが強くなりましたね」
金城さんの同世代にはロンドンオリンピック銀メダリストの三宅宏美さんもいる。
「三宅さんは私の2歳上ですが、中学と高校の合宿などでも親しくしてもらって、とても尊敬している先輩です。三宅さんが今も現役でいるのは、自分にとって励みのひとつですし、目標にしています」
高校を卒業してから、„オリンピック選手養成学校“とも呼ばれる自衛隊体育学校に入学し、常に上を目指し続けてきた金城さん。昨年、地元沖縄に戻り、現在は県内のスポーツ施設に勤務しながら、恩師の平良先生がコーチを務めている沖縄工業高校や県内の施設で、週6回トレーニングを続けている。
「私の大きな目標はやっぱりオリンピック出場。沖縄に帰ってきた頃は、けがの影響もあって現役を続けていけるか、悩んだこともあったのですが、恩師や支えてくれる周りの方々もいてくれて、続けることを決心しました。今は、今年6月の全日本選手権を目指して調整しています。ウエイトリフティングは自分が真剣にトレーニングしたぶん、結果がはっきり返ってくる。自分と向き合って、記録に挑戦する楽しさがあるスポーツです。トレーニング方法やメンタルの強化、食事メニューなど追求できることはまだまだたくさんあって、それが面白い。応援してくれるみなさんへ恩返しになるように、結果を残したいです」
大きな夢に向かって、金城さんは今日も着実にトレーニングを積み重ねている。
長嶺陽子/写真・矢嶋健吾
ウエイトリフティング(重量挙げ)はバーベルを両手で頭上に持ち上げ、その重さを競う競技。選手は男子 56㌔級 / 62㌔級 / 69㌔級 / 77㌔級 / 85㌔級 / 94㌔級 / 105㌔級 / +105㌔級、女子は48㌔級 / 53㌔級 / 58㌔級 / 63㌔級 / 69㌔級 / 75㌔級 / +75㌔級に分かれ、階級内で記録を競い合う。挙げ方には、バーベルを一気に頭上に引き上げる「スナッチ(単一動作)」と、肩まで引き上げてから頭上に挙げる「クリーン&ジャーク(二段階動作)」があり、各3回ずつ試技を行い成功した最高重量の合計で順位が決まる。
●日本ウエイトリフティング協会
ホームページ
http://www.j-w-a.or.jp/
●沖縄県ウエイトリフティング協会