「表紙」2015年06月4日[No.1572]号
揺るぎない情熱で夢つかむ
世界最高峰の演劇や舞台、ミュージカルを繰り広げているブロードウェー。その華やかな世界で活躍する数少ない日本人女性がいる。県出身の高良結香さんだ。ミュージカル「マンマ・ミーア」の大舞台でデビューした後、「フラワー・ドラム・ソング」で主役を務めた。以降、「太平洋序曲」(演出・宮本亜門)、「コーラスライン」、「レント」など数々のミュージカルに出演してきた。
そんな大舞台で活躍する結香さんを支えてきた母・美佐子さん。昨年、第一子が誕生し母親となった結香さんに「お母さんらしくなってきた」とエールを送る。
世界のステージで輝く娘に
アメリカに活動の拠点を置く結香さんは、18歳まで沖縄クリスチャンスクールインターナショナルに通い、高い英語力を培った。
当時は、日本国籍の子どもは公立校に入るのが当たり前だった時代。美佐子さんは、子どもが生まれたらバイリンガルで、自立した子に育ってほしいという強い思いから、同校の入学を志願し交渉を続けた。その長年の願いがかない、特別に入学が許可された。
結香さんは、幼少期からバイオリンやピアノ教室に通い、バレエを始めたのは5歳のころ。バレエは、美佐子さんにとって情操教育の一環にすぎなかったが、結香さんがダンスに目覚めるきっかけとなった。
明けても暮れてもバレエから離れずにいた結香さん。美佐子さんは予想外の展開に戸惑い、バレエを辞めさせようとした。しかし、「バレエをどうしてもやりたい」と訴える娘の情熱に負けてしまった。その間、結香さんは日本バレエコンクールの沖縄代表として出場するなどダンサーとしての実績を積んでいった。
自分の信じた道突き進む
ダンスを極めていくうちに「バレエ以外のダンスも学びたい」という欲求が膨らんでいった結香さん。高校を卒業後、アメリカ・バージニア大学に留学し、ダンスを専攻した。大学のシンガーグループのオーディションに合格し、所属したことを機に歌と踊りで表現する楽しみを知った。
一方、大学のカリキュラムでは、物足りなさを積もらせていた。そんなとき、先生と見に行ったミュージカル「レント」に衝撃を受け、ショービジネスに興味を持つようになった。結香さんに一本の道筋ができた瞬間だった。
母の反対が原動力に
プロと共演するブロードウェーの舞台に立つことを目標に、あっさりと大学を中退した結香さん。しかし、夢をつかむのに近道はないことを教えてくれるのもブロードウェーだ。数え切れないほどのオーディションを受けたが、外国人は「よそ者」扱いで技術はあっても認められなかった。
「娘が挫折して沖縄に帰ってきたときは、『あなたの夢は何だったの』と親子で泣きながらけんかをした。大学を中退し、ニューヨークに行きたいというなら今後は、一切サポートしないと断言した」と美佐子さんは話す。一見、厳しいように思えるが、それが逆に負けず嫌いの結香さんを奮い立たせた。
「母はずっと私がエンターテイナーになることに反対だった。そのときはワジワジーしたけれど、だからこそ、自分はそれでもやりたいんだと再確認できた。いつか見返してやると思っていました」と笑う。
ニューヨークでダンスの技術を高めていった結香さん。「外国では人の3倍努力しないとスタートラインに立てなかった」と話す。努力のかいがあって、先生たちからもダンスが認められるようになった。それから2001年、大舞台「マンマ・ミーア」でブロードウェーデビューを果たした。
それを機に「フラワー・ドラム・ソング」の主役に抜てきされ、「コーラスライン」や「レント」などの作品に出演。日本では音楽活動も行い、女優、歌手、ダンサーなど表現の場を広げている。
そして、昨年5月に第一子を出産した。来る6月は、東京公演で演出にも挑戦する。子どもができてから自分の体をわが子のように大切にするようになり、演出にも挑戦する勇気をもらえたという。
「私の可能性を広げてくれた母という存在は、私にとって『Perfect!』」と話す。
妻から母になって、成長していく娘を母・美佐子さんが誇らしく見守っていく。
当山絵理加/写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)
プロフィール
たから・みさこ10月4日名護市生まれ。大学卒業後、商社に勤務。結婚、出産を経て、1979年に「公文式那覇新町教室」(当時)を開設し、現在はカデナ基地の「KABシーリング教室」で指導
たから・ゆか
8月6日那覇市生まれ。エンターテイナー。沖縄クリスチャンスクールインターナショナルに幼稚園から高校まで通う傍ら5歳からバレエを始める。高校卒業後、アメリカ・バージニア大学でダンスを専攻。大学を中退後、ミュージカル「マンマ・ミーア」でブロードウェーデビューする
高良結香ライブ2015
・6月5日(金)桜坂劇場ホールB
/開演:19時
☎ 098-860-9555
・6月6日(土)宜野座村文化センター
がらまんホール/開演:19時
☎ 098-983-2613